法定耐用年数とは? 建物の構造別で定められている概要、減価償却の計算方法を解説
2024.11.26

不動産経営で押さえておきたい言葉のひとつに「耐用年数」があります。土地とは異なり、経年にともなって劣化する建物や設備は、その時点での資産価値を算出するために耐用年数を用います。
今回は、税金とも密接な関連のある「法定耐用年数」を中心に解説します。

法定耐用年数とは

「法定」という名前のとおり、法律で定められた「固定資産が使用できる期間」を「法定耐用年数」といいます。固定資産とは1年以上の長期にわたって保有する資産のことで、不動産や設備なども固定資産であるため、法定耐用年数が定められているのです。

法定耐用年数が定められている理由

法定耐用期間は「資産が実際に使える期間」ではなく、「法的に定められた耐用期間」で、同じ種類・同じ用途の資産であれば共通の年数が適用されます。なぜ法定耐用期間が定められているかというと、減価償却の手続きが関係しています。

減価償却とは、耐用年数に応じて固定資産の価値を減らして計上していく会計処理です。
もし法定耐用期間が定められていないと、経営者は各々の判断で減価償却費を調整することができてしまいます。こうしたケースによって課税金額に不公平が出ることを防ぐために、一つひとつの資産項目に対して法定耐用年数を定めているのです。

法定耐用年数の概要

法定耐用年数は、対象資産が減価償却によって法的な資産価値がゼロになるまでの期間を指しています。法定耐用年数が10年であれば、10年かけて少しずつその資産価値が失われていくことになります。

あくまで「法的な資産価値」であるため、法定耐用年数が過ぎた中古資産の価格が0円になる、あるいは資産が経年劣化して使えなくなるというわけではありません。

耐用年数≠耐久年数。何が違う?

「耐用年数」と似た言葉に「耐久年数」がありますが、この2つは異なるものです。
耐用年数が資産としての価値を保ち続けられる期間であるのに対し、耐久年数は物理的に使用できるとみなされる期間。メーカーが耐久試験などをもとに定めた、「この期間内であれば問題なく使用できる」と公表している年数が耐久期間です。

もちろん、あくまで目安なので、環境や使用状況によっては耐久年数内で壊れて使えなくなったり、反対に耐久年数を超えても使用できるケースも出てきます。

固定資産税と耐用年数の関係

固定資産税は土地や建物の場合、「課税標準額×標準税率1.4%」で計算されます。課税標準額は固定資産税評価額をもとに算出され、3年に1度のタイミングで評価替えが行われています。そのため、土地の場合は地価が上がると固定資産税も上がります。

建物は年数の経過とともに資産価値が下がっていくため、「再建築価格」に「経年減点補正率」を掛けて評価額を求めます。
「再建築価格」とは、建材費の高騰や下落などを加味した「同じ建物を現時点で建て直した場合の建築費用」です。

「経年減点補正率」は、建築から経過した年数に応じた減価割合のことです。例えば木造建物の場合、築1年では補正率80%、法定耐用年数である27年目で最小の20%となり、それ以降は変わりません。

注意したいのは、法定耐用年数を過ぎても再建築価格の20%の評価額は変わらない点です。「法定耐用年数の概要」の項で「法的な資産価値がゼロになる」としましたが、建物に対する固定資産税がかからなくなるわけではありません。

法定耐用年数の間も、景気によって再建築価格が上がり、評価額が前年を上回る可能性があります。前年のまま据え置かれるという措置があるため、上がりはしないものの、毎年下がっていくとは限らないのです。

さらに、さまざまな減免措置の期間が終了することで納税金額そのものが高くなることもあるため、それも加味して資金計画を行う必要があります。

参考:経年減価補正率表|法務局

建物に関して定められている法定耐用年数

法定耐用年数は、種類・構造・用途別に定められています。ここでは、住宅用の法定耐用年数を建物の構造別に見てみましょう。

建物構造別の耐用年数

●鉄骨鉄筋コンクリート造・
 鉄筋コンクリート造  :47年

●鉄骨造
 骨格材の厚さが
  - 4㎜超      :34年
  - 3㎜超4㎜以下  :27年
  - 3㎜以下     :19年

●木造・合成樹脂造   :22年

●れんが造・石造・
 ブロック造      :38年

●木骨モルタル造    :20年

●金属造
 骨格材の厚さが
  - 4㎜超      :34年
  - 3㎜超4㎜以下  :27年
  - 3㎜以下     :19年

建物附属設備の耐用年数

建物本体とは別に、給排水やガス設備、冷暖房機器などの住宅設備にも法定耐用年数が設定されています。主な建物附属設備の耐用年数は以下のとおりです。

給排水・衛生設備、ガス設備  :15年
冷房用・暖房用機器      :6年
エレベーター         :17年
消火設備・災害報知設備    :8年
格納式避難設備        :8年
自動ドア           :12年
蓄電池電源設備        :6年
蓄電池電源設備以外の電気設備 :15年
アーケード・日よけ設備(金属製)  :15年
アーケード・日よけ設備(金属製以外):8年

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

参考:機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表|東京都主税局

法定耐用年数を使った減価償却費の計算法

固定資産のうち、建物や機械設備・車両など、経年で価値が減少していく資産を「減価償却資産」といいます。
10万円以上の減価償却資産については、購入した年に全額を経費計上するわけではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ計上していくことになります。

償却方法の種類

減価償却の方法には、「定額法」と「定率法」という2種類があります。どちらも最終的な償却額は同じですが、償却率と各年の償却額が異なります。

定額法

毎年一定額の減価償却費を計上する方法で、計算式は次のとおりとなります。

各年の償却費の額 = 取得価額 × 定額法の償却率

例えば取得価額100万円、耐用年数10年の減価償却資産については償却率が10%となり、100万円×10%で1年あたりの償却費は毎年10万円です。

定率法

未償却残高に定率法の償却率を掛けて計算する方法で、償却費は初めの年ほど多く、年とともに減少していきます。ただし、償却額が「償却保証額」より少なくなった年以後は、毎年同額となります。「償却保証額」は、取得価額に省令で定められた保証率を掛けて求めます。

1年目の償却費の額 = 取得価額 × 定率法の償却率

2年目以降の各年の償却費の額 = (取得価額 - 前年末までの償却費の合計額)× 定率法の償却率

償却額が償却補償額を下回った年以降の償却額 = 期首未償却残高 × 改定償却率

「期首未償却残高」とは、取得価額から前年末までの償却費の合計額を差し引いた金額のことです。

具体的な計算例

では定額法と定率法で、取得価額100万円、耐用年数10年の減価償却資産についての償却費の計算をしてみましょう。

■定額法
償却費は毎年同額で、以下のような計算で求められます。

100万円 × 償却率10% = 10万円

10年間10万円ずつ償却費を計上し、10年かけて償却していきます。10年目のみ、固定資産がまだ存在していることを示すために帳簿に1円を残し、9万9,999円となります。

■定率法
まず、減価償却資産の償却率等表で償却率を参照します。ここでは2012(平成24)年4月1日以後に取得したとして、現行の定率法を適用して計算してみましょう。
耐用年数10年の場合、償却率は20%です。合わせて償却保証率も確認します。100万円×保証率6.552%で、6万5,520円以降は改定償却率25%が適用されます。

参考:減価償却資産の償却率等表|国税庁

-1年目
100万円 × 償却率20% = 20万円

-2年目
(100万円-20万円)× 償却率20% = 16万円

-3年目
(100万円-20万円-16万円)× 償却率20% = 12万8,000円

-4年目
(100万円-20万円-16万円-12万8,000円)× 償却率20% = 10万2,400円

以後、6年目まで同様に計算しますが、7年目で償却額が5万2,429円となり償却保証額6万5,520円を下回ります。そのため、7年目以降は改定取得価額(100万円から前年までの償却費の合計額を引いたもの)に改定償却率を掛けて償却費を計算します。

-7〜10年目
改定取得価額26万2,144円 × 改定償却率25% = 6万5,536円

10年目のみ定額法と同様、帳簿に1円を残した6万5,535円となります。

参考:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

中古資産の耐用年数を算出する方法

中古資産を取得した場合は、法定耐用年数ではなく、その資産が使用可能な期間を合理的に見積もって耐用年数を決めるとされています。しかし、実際は見積もりが困難な場合も多く、その際は「簡便法」によって算出します。

簡便法では、中古資産が法定耐用年数を超えている場合は耐用年数の20%を、一部を経過している場合は残りの年数に経過年数の20%を足した年数を耐用年数とします。

例えば、法定耐用年数が30年で経過年数が30年を超えている場合、30年×20%で6年が耐用年数となります。経過年数が10年であれば、耐用年数は(30年-10年)+(10年×20%)=22年です。

参考:No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

算出した年数が2年に満たない場合は2年(例:1.6年→2年)、2年以上で端数が出た場合は切り捨て(例:2.6年→2年)となります。

ただし、中古資産を事業として用いるための資本的支出の金額が、その中古資産の再取得価額(同じ新品のものを取得する場合の価額)の50%を超える場合には、上記の方法は使えません。
資本的支出とは「資産の価値や耐用年数を上げる」修繕を指し、単なる原状回復のための修繕とは異なり原価償却の対象となります。

法定耐用年数と経済的耐用年数の違い

耐用年数には、法定耐用年数の他に「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」というものがあります。
物理的耐用年数は、資産が実際に壊れたりして使えなくなるまでの年数です。老朽化して住めなくなった建物など、資産の物理的な寿命を指しています。

経済的耐用年数とは

経済的耐用年数とは、市場でどれくらいの期間にわたって資産に経済的価値があるかという評価です。不動産の場合、不動産会社などの査定によって「経済的残存耐用年数」というかたちで建物の経済的寿命が計算されます。

法定耐用年数との比較

法定耐用年数が税金やローンの返済期間を決めるときに使われるのに対し、経済的耐用年数は売却時に用いられます。不動産であれば経済的耐用年数から物件の時価を査定し、それをもとに売却価格が決定されます。

法定耐用年数は年数が一律に定められていますが、経済的耐用年数は機能面などの物理的要因のほか、周辺との競争力や景気によっても左右される傾向にあります。

法定耐用年数の短縮

法定耐用年数は原則として、補修を加えながら通常の条件下で利用した場合の使用可能期間をもとに定められています。しかし、特殊な理由によって実際に使用できる期間が法定耐用期間よりも著しく短い場合は、法定耐用年数で減価償却を行うと実態に合わなくなってしまいます。

そのため、実際に利用できる期間を耐用年数として減価償却を行うことも認められており、これを「耐用年数の短縮制度」といいます。

特殊なケースでの適用

耐用年数の短縮制度を受けるためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

○当該資産が、法令で定められた短縮事由のいずれかの事由に該当すること
○当該資産の使用可能期間が法定耐用年数よりおおむね10%以上短くなること
○耐用年数の短縮の承認申請書を納税地の所轄税務署長を経由して所轄国税局長に提出し、所轄国税局長より承認を受けること

申請の対象となる短縮事由には、例えば以下のようなものが定められています。
・種類及び構造を同じくする他の減価償却資産の通常の材質又は製作方法と著しく異なること
・その資産がその使用される場所の状況に基因して著しく腐食したこと
・その資産の存する地盤が隆起又は沈下したこと

つまり、通常よりも劣る材質で造られていたことが判明したり、悪条件下で使用されることになったりしたケースにおいては、国税局長の承認を得て、耐用年数の短縮が可能になるということです。

申請手続きの方法

法定耐用年数の短縮を申請するにはまず、対象となる減価償却資産が短縮事由に該当するかを確認します。使用可能期間が法定耐用年数よりおおむね10%以上短い場合に申請ができます。

申請書類は「耐用年数の短縮の承認申請書」と「承認を受けようとする使用可能期間及び未経過使用可能期間の算定の明細書」です。e-Taxで作成し、以下の書類を添付して電子申請します。

■添付書類・部数
1 「承認を受けようとする使用可能期間及び未経過使用可能期間の算定の明細書」
2 申請資産の取得価額が確認できる資料(例:請求書等)
3 個々の資産の内容及び使用可能期間が確認できる資料(例:見積書、仕様書等)
4 申請資産の状況が明らかとなる資料(例:写真、カタログ、設計図等)
5 申請資産がリース物件の場合、貸与を受けている者の用途等が確認できる書類(例:リース契約書の写し、納品書の写し)

申請書を書面で作成し、所轄税務署への持参または送付による提出もできますが、その場合は添付書類が各2部必要です。

参考:耐用年数の短縮制度について|国税庁

まとめ

耐用年数にはいくつかの種類があり、なかでも法定耐用年数は税金やローンに大きな影響があることを解説しました。賃貸経営においては、建物本体と、それよりも法定耐用年数が短い付属設備を分けて計上した方が、経費計上できる金額が多くなるため節税効果は高くなります。

新築からスタートした賃貸経営も、建物の法定耐用年数が過ぎると減価償却ができなくなり、節税効果も下がってしまいます。しかし、法定耐用年数は建物の実際の寿命とは異なるため、法定耐用年数が過ぎても収益を上げ続けられる物件であれば、長期的に保有することで安定した経営が可能になります。

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