CREとは?企業不動産を経営資源として活かすCRE戦略の基本と進め方

公開日:2026.08.03

CREとは、企業が保有・利用する不動産を単なる施設ではなく、経営資源として捉える考え方です。

不動産を経営戦略に沿って見直すことで、コスト削減や財務体質の改善だけでなく、事業競争力やブランド価値の向上にもつながります。

この記事では、CREの基本的な意味からCRE戦略が求められる理由、得られる効果、主な施策までを整理して解説します。

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CREとは企業が保有・利用する不動産のこと

CREとは「Corporate Real Estate(コーポレート・リアル・エステート)」の略で、企業が保有・利用する不動産全般を指します。重要なのは、これらを単なる施設管理の対象としてではなく、企業価値の向上に生かす経営資源として捉える点です。

CREは「Corporate Real Estate」の略

CREは「Corporate(企業)」と「Real Estate(不動産)」を組み合わせた英語で、日本語では「企業不動産」と訳されます。日本では2008年に国土交通省が「CRE戦略実践のためのガイドライン」を公表したことで広く知られるようになりました。

国土交通省のガイドラインでは、CRE戦略は企業不動産を企業価値向上の観点から見直し、経営戦略と連動させながら活用の最適化を図る考え方とされています。単なる維持管理や管財の発想にとどまらず、経営判断の対象として不動産を捉える点が特徴です。

オフィス・工場・倉庫・遊休地などが対象

CREの対象は、事業に直接使う施設だけにとどまりません。企業が保有・利用するあらゆる不動産が対象です。

種別主な具体例
事業用施設オフィス、店舗、工場、物流倉庫、研究所
福利厚生施設社宅・寮、保養所、研修施設
未活用不動産遊休地、閉鎖した事業所跡地
その他駐車場、収益不動産

国土交通省の推計では、日本のCREの資産規模は約490兆円にのぼります。同業種の欧米企業と比べると、日本企業の不動産保有量は約2~3倍とされています。この数字が、日本企業における不動産活用の非効率さを示す一因です。

重要なのは不動産を経営資源として捉える視点

CREの核心は、不動産を単なるコストや固定資産ではなく、経営資源として再評価することにあります。

従来は管財部門が中心となって維持管理を担うケースが多く、不動産と経営戦略が十分に結びついていない企業も少なくありませんでした。CRE戦略では、不動産をヒト・モノ・カネ・情報と並ぶ経営資源の一つと位置づけ、全社的な視点で最適化を図ります。

例えば、活用できていない遊休地を保有し続けると、固定資産税や維持管理費が毎年かかり続けます。こうした観点から、CREは「保有しているだけの資産」を「価値を生み出す資産」へ転換する、経営姿勢の見直しを促す考え方なのです。

CRE戦略が必要な理由

CRE戦略が注目を集める背景には、不動産が企業のコスト・財務・競争力に与える影響が想像以上に大きいという現実があります。放置すれば経営を圧迫しかねない不動産を、戦略的に見直す必要性が高まっています。

不動産コストが経営に与える影響が大きい

不動産コストは、多くの企業にとって軽視できない規模の固定費です。

業種によって差はありますが、製造業では不動産が総資産の数十%を占め、その維持管理コストは売上全体の3~5%にのぼるとされています。鉄道・電気・ガスなどのインフラ産業ではさらに大きく、総資産の50%近くを不動産が占め、維持管理コストが売上の20~30%に達する場合も少なくありません。

これらのコストには、固定資産税・賃料・光熱費・修繕費・保険料などが含まれます。一つひとつは小さく見えても、積み重なると経営上の重荷になりやすいのです。

こうした固定費を適切にコントロールできるかどうかは、利益率や生産性に直結します。不動産を漫然と保有し続けると、その分だけ本来使えるはずの経営資源が非効率に固定されてしまう点を理解しましょう。

遊休資産や低稼働資産が収益性を下げやすい

収益を生まない土地や建物でも、固定資産税や維持管理費、修繕費などのコストが継続的に発生します。

事業縮小や拠点統廃合によって使われなくなった工場や事務所を保有し続けると、不動産は利益を生まないまま費用だけを発生させる資産になりかねません。

稼働率の低いオフィスや倉庫も同様です。空間と費用が無駄になる上、本来事業に投資できるはずの資金が不動産に縛られてしまいます。

遊休資産を見直して売却・活用するだけでも、固定費の削減と資金の再投資という2つの効果を同時に得られます。「何もしない」という選択は、静かにコストを積み上げる選択といえるでしょう。

財務指標への影響を無視できない

不動産は財務指標にも直接影響を与えます。

特に注目したいのが、ROA(総資産利益率)などの資本効率指標です。不要な不動産を多く抱えると総資産が膨らみ、同じ利益水準でもROAは低下しやすくなります。

不動産の圧縮によってバランスシートをスリム化できれば、資本効率の改善にもつながります。

さらに、2005年から適用された減損会計(資産の時価が帳簿価格を著しく下回った場合に損失を計上する会計基準)も無視できない要素です。活用されていない不動産は、財務上の損失計上リスクを内包しています。

経営戦略と不動産戦略の連動が求められる

不動産の問題を管財部門や総務部門だけに任せていると、全社的な経営視点でのCRE戦略は機能しません。

事業の縮小・拡大や組織再編が行われても、それに伴う不動産の見直しが追いつかないケースがあります。例えば、成長分野の拠点が不足している一方で、縮小した事業の建物をそのまま保有し続けるという「ミスマッチ」が起きやすいのです。

CRE戦略では、経営企画・財務・事業部門と不動産管理部門が連携し、事業の方向性と不動産の配置を一致させることが重要です。

CRE戦略で得られる効果

CRE戦略によって期待できる効果は、コスト削減や財務改善だけではありません。拠点の見直しや不動産活用の最適化は、ブランド価値の向上や事業継続性の強化にもつながります。ここでは主な効果を整理して見ていきます。

効果の分類主な内容
収益性の向上拠点集約による固定費削減、スペース最適化
財務体質の改善遊休資産の売却・活用でROA・ROIC改善
ブランド価値の向上拠点立地・環境整備が採用力や企業イメージに直結
リスク分散・BCP強化生産拠点の分散、代替拠点の確保

不動産コストの見直しで収益性を高められる

CRE戦略でまず実感しやすいのが、不動産関連コストの削減効果です。

点在する拠点を集約・統廃合するだけでも、賃料・光熱費・管理費・修繕費・固定資産税などを削減できます。さらに管理要員の人件費圧縮や業務効率の向上も、拠点集約が生む副次的な効果です。

特に注目したいのが、稼働率の低い施設の見直しです。使われていないスペースが多いほど、面積に比例したコストが無駄に発生してしまいます。稼働状況を定期的に把握し、必要な面積に絞り込む「スペース最適化」は、CRE戦略の中でも即効性の高い施策です。

コスト削減で生み出した余剰資金を本業や成長領域に再投資することで、収益性の改善と事業拡大という好循環が生まれます。

売却や有効活用で財務体質を改善できる

遊休資産の売却は、固定費の削減と資金確保という2つの効果を同時に得られる手法です。

特に注目されるのが「セール&リースバック」です。これは保有不動産を売却して資金を確保しつつ、売却先と賃貸借契約を結ぶことで、その不動産を引き続き利用する仕組みです。拠点機能を維持しながら資金調達できる点が大きな特徴です。

財務指標への影響も大きく、不動産を圧縮することで総資産が減少し、ROA(総資産利益率)やROIC(Return On Invested Capital=投下資本利益率。事業に投じた資本に対してどれだけの利益を生んでいるかを示す指標)が改善します。バランスシートのスリム化は、投資家・金融機関からの信頼向上にも直結するでしょう。

拠点整備の見直しでブランド価値を高められる

不動産の立地・設備・デザインは、企業のブランドイメージに直接影響します。

本社の所在地が自社のブランドコンセプトと合致していれば、顧客・取引先への印象を高める効果があります。例えば、高級ブランドが銀座や青山に拠点を構えるケースは、立地そのものがブランドメッセージとして機能することを見越した、CRE戦略に基づく投資判断の一環といえます。

また、オフィス環境の整備も重要な施策です。快適な執務スペースや集中できる個室ブース、休憩できるカフェエリアなどを整えることで、従業員満足度が上がり採用競争力の強化につながります。

リスク分散と事業継続性の強化につながる

CRE戦略は、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画。災害や緊急事態が発生しても事業を継続するための行動計画)とも密接に関わります。

地震・洪水などの自然災害、感染症の拡大など、突発的なリスクが事業を止める事態は珍しくありません。生産拠点や重要施設が一か所に集中していると、被災時に事業全体が停止するリスクが高まります。

CRE戦略では、主要拠点の耐震補強・自家発電設備の整備・地理的に分散した代替拠点の確保が重要な対策です。例えば、既存施設の配置や用途を見直し、災害時に代替拠点として活用できる体制を整える企業もあります。このように、保有不動産の見直しを通じてBCPを強化することは、追加投資を抑えながら事業継続性を高める有効な方法です。

CRE戦略の進め方

CRE戦略は、場当たり的に施策を打つだけでは十分な成果につながりません。現状把握から方針決定、実行、検証までを一貫した流れで進めることが重要です。ここでは基本となる5つのステップを整理します。

保有不動産の現状を棚卸しする

最初のステップは、自社が保有・利用するすべての不動産を可視化することです。

棚卸しの対象は、オフィスや工場、倉庫、社宅・寮、保養所、遊休地など企業が関わるすべての不動産です。それぞれについて、用途・稼働率・延床面積・築年数・所在地・維持コスト・登記情報などを一覧化します。

この段階では情報の精度が重要です。現地調査だけでなく、図面・登記簿・固定資産台帳・賃貸借契約書なども確認し、定量的・定性的な両面から情報を整備しましょう。

「使っているつもりだが稼働率が低い」「社内の誰も把握していない遊休地がある」というケースは少なくありません。棚卸しによって全体像を正確に把握することが、CRE戦略すべての出発点です。

経営課題と不動産課題を整理する

棚卸しで得た情報を、経営課題と照らし合わせて整理するのが次の段階です。

ここで重要なのは、不動産の問題を単体で捉えないことです。例えば「このオフィスは賃料が高い」という課題があったとしても、それが事業成長のために欠かせない立地であれば、コスト削減よりも維持を優先すべきでしょう。

逆に、縮小した事業の拠点が余っているなら、早期に手放すのが経営全体として合理的な選択です。不動産ごとに「なぜ保有・利用しているか」という根拠を確認し、現在の事業戦略との整合性を見直すプロセスが必要です。

活用方針と優先順位を決める

経営課題と不動産課題の整理を踏まえ、各不動産の方針と優先順位を決定する段階です。

方針は大きく4つに分類できます。

方針内容向くケース
売却不動産を売却して資金化する遊休・低稼働で収益を生まない資産
有効活用資産・開発などで収益化する需要のある立地の未活用地
再編・集約拠点を統廃合・移転する分散した拠点のコスト最適化
保有現状のまま利用を続ける事業上の必要性が高い資産

優先順位を決める際の軸は、コスト削減効果の大きさ・実行の難易度・経営への影響度などです。全施策を同時に実行するのではなく、費用対効果が高く着手しやすいものから段階的に取り組むのが定石です。

実行計画に落とし込んで進める

方針が決まったら、具体的な実行計画に落とし込みます。

中長期の時間軸でスケジュールを組み、売却なら査定・売却先の選定・契約・引渡し、拠点集約なら移転先の選定・工事・組織調整というように、施策ごとのマイルストーン(区切りとなる節目の目標)を明確にすることが重要です。

CRE戦略は不動産部門だけで完結しません。人事・総務・事業部門など、影響を受けるすべての部門と連携しながら進める必要があります。例えば拠点集約では、従業員の通勤負担や業務プロセスへの影響を考慮しないと、現場に混乱を招くリスクがあります。

実行後の効果を検証して見直す

施策を実行した後も、効果の検証と継続的な見直しが欠かせません。

検証の指標としては、コスト削減額・稼働率の変化・ROAやキャッシュフローへの影響などが挙げられます。施策ごとに目標値を事前に設定しておくと、検証が客観的になります。

不動産を取り巻く環境は変化し続けます。地価・賃料水準の変動、人口動態の変化、法改正、事業ポートフォリオの見直しなど、外部要因が不動産価値に影響を与えることは珍しくありません。

そのため、CRE戦略ではPDCAサイクルを継続的に回すことが重要です。定期的に棚卸しと評価を行うことで、不動産の活用方針を経営戦略の変化に合わせて見直しやすくなります。

CRE戦略でよくある施策

CRE戦略の施策は多岐にわたりますが、多くの企業が取り組むものはある程度共通しています。代表的な4つの施策を整理します。

遊休地を賃貸や開発に活用する

活用されていない土地をそのまま保有し続けると、固定資産税や維持管理費だけがかかり続けます。そこで多くの企業が取り組むのが、遊休地の賃貸・開発による収益化です。

需要のあるエリアであれば、駐車場・賃貸住宅・商業施設・物流倉庫など、立地特性に合わせた有効活用が可能です。賃貸住宅の場合、長期安定した家賃収入を見込める上、住宅用地として固定資産税の軽減措置が適用されるケースもあります。

不要不動産を売却して資産を圧縮する

事業上の必要性が薄れた不動産は、売却して資産を圧縮するのが有効な選択肢です。

売却益は特別利益として計上でき、事業への再投資や有利子負債の返済に充てられます。総資産が減少することでROA(総資産利益率)が改善し、財務体質の強化にもつながります。

また、セール&リースバック(売却後賃借)を活用すれば、不動産を手放しながらもその場所を引き続き使用することが可能です。キャッシュを手元に確保しつつ、事業への影響を最小限に抑えられます。

売却のタイミングも重要です。地価・市況の動向を踏まえ、資産価値が十分に反映されるタイミングで実行できるよう、日頃から不動産の市場価値を把握しておきましょう。

拠点を集約・再編して運用効率を高める

複数の拠点に分散している事務所・工場・倉庫を集約・再編することで、コスト削減と業務効率の両立を図る施策です。

賃料・光熱費・管理費といった固定費を削減できる上、部門間のコミュニケーションが活性化し、意思決定のスピードも高まります。物流拠点の再配置では、輸送ルートの最適化によって物流コストを圧縮できるケースもあります。

拠点集約を進める際は、従業員の通勤負担・業務への影響・取引先とのアクセスなどを事前に検討することが欠かせません。コスト削減だけを優先すると、現場の生産性低下や人材流出につながるリスクもあります。

保有と賃借のバランスを見直す

自社で不動産を所有するか、賃借するかの選択も、CRE戦略の重要な論点です。

所有のメリットは資産として積み上げられること、賃料変動リスクがないことです。一方、賃借は初期投資を抑えられ、事業規模の変化に応じて柔軟に移転・縮小しやすいというメリットがあります。

事業の成長段階や財務状況、拠点の重要性によって、所有と賃借の最適なバランスは異なります。中核拠点は所有して安定運用し、需要変動が大きいエリアは賃借で柔軟性を持たせるなど、不動産ごとに判断軸を持つことが重要です。

法人経営者はCRE戦略を意識しよう

CRE戦略により不動産を経営資源として最大化すれば、コスト削減・財務改善・ブランド向上・リスク分散という幅広い効果をもたらします。

実践にあたっては、現状把握→課題整理→方針決定→実行→検証というサイクルを継続的に回すことが重要です。不動産を「保有しているだけ」の状態から脱し、経営戦略と連動した活用へと転換することが、企業価値の向上につながります。

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< この記事の監修者 >

植崎 紳矢

アクセス税理士・不動産鑑定士事務所 代表 / 税理士、公認会計士、不動産鑑定士
東京税理士会 中野支部所属

大学卒業後、ゴールドマンサックス証券会社東京支店に入社。 金融派生商品(デリバティブズ)の開発に従事。その後、親族の不動産会社での収益不動産の売買、日系銀行で富裕層向けの不動産関連の融資業務や、シンガポールでの会計、コンサルティング事務所立ち上げを経て、2019年に日本にて税理士登録。「不動産x相続x税金」をテーマに不動産関連の税務、コンサルティングに従事している。自らも賃貸不動産を保有しており、税務の枠を超えて不動産オーナーに寄り添った提案をすることが強み。また、シンガポール、米国での公認会計士資格も保有し、最近は国際相続業務にも注力している。

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