不動産投資で節税できる仕組みとは?対象者・物件選び・注意点を解説

公開日:2026.07.29

「不動産投資で節税できると聞いたけれど、本当に効果があるのか」「自分の年収で意味があるのか」と疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。

不動産投資には、減価償却や損益通算を使って所得税・住民税を圧縮できる仕組みがあります。ただし、物件選びや売却の判断を誤ると、期待した効果が得られない事態になりかねません。

本記事では、節税の仕組みから効果が出やすい人の特徴、物件の選び方、見落としやすいリスクまでを解説します。

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不動産投資が節税になる仕組み

不動産投資が節税につながる主な仕組みは、「減価償却」「損益通算」「経費計上」「相続税評価の圧縮」の4つです。それぞれを正しく理解した上で活用することが重要です。

減価償却で建物の取得費を経費にする

減価償却とは、建物など時間の経過とともに価値が下がる資産の購入費用を、税法で定められた耐用年数に沿って毎年少しずつ経費として計上する仕組みです。

特徴は、「お金の支出を伴わない経費」であることです。管理費や修繕費は実際に支出した分だけ現金が減りますが、減価償却費は違います。購入時に支払い済みの建物価格を毎年帳簿上で費用化するため、実際の現金の流出はありません。

つまり、キャッシュフロー(手元に残る現金の流れ)を確保しつつ、会計上の不動産所得を赤字(または圧縮)にできる場合があります。

例えば、木造アパートの法定耐用年数は22年です。建物部分の取得費が2,200万円であれば、定額法(毎年同額を計上する方法)で年間約100万円を経費に計上できます。

なお、減価償却の対象は「建物・建物附属設備」のみです。土地は経年劣化しないため対象外になります。都市部の物件は土地代が高く建物比率が低くなりやすいため、想定より減価償却費が少なくなるケースも少なくありません。

損益通算で給与所得を圧縮する

損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得などほかの所得と合算して相殺できる制度です。

例えば、給与所得が800万円の会社員が不動産投資で年間100万円の赤字を出した場合、損益通算後の課税所得は700万円になります。所得税は「超過累進課税」(課税所得が多いほど税率が上がる制度)のため、高所得者ほど節税効果が大きくなります。

減価償却費は実際の出費を伴わない費用のため、「帳簿上は赤字、キャッシュは黒字」という状態を作れる可能性がある点が強みです。収益を確保しながら所得税・住民税の負担を軽減できます。

経費計上で課税所得を下げる

不動産投資では、運営に関わるさまざまな費用を必要経費として計上し、課税所得を圧縮できます。主な経費項目は下表のとおりです。

経費の種類具体例
ローン利息借入金の利息部分(元本返済は対象外)
管理委託費管理会社への委託手数料
修繕費原状回復費・設備修理代など
保険料火災保険・地震保険の保険料
税金固定資産税・都市計画税
専門家報酬税理士・司法書士への報酬
交通費・通信費物件管理に関する実費

注意点として、修繕費と「資本的支出」は税務上の扱いが異なります。設備の原状回復など現状維持にとどまる支出は修繕費として全額その年の経費になりますが、建物の価値や耐久性を高める支出は「資本的支出」として扱われます。

この場合、金額や工事内容によっては、複数年にわたり減価償却する必要があります。

評価額の圧縮で相続税を抑える

不動産を保有すると、現金をそのまま相続する場合と比べて相続税評価額を大きく下げられます。

現金1億円を相続した場合、評価額はそのまま1億円です。一方、同額で不動産を購入すると、土地は「路線価」(時価のおおむね80%程度)、建物は「固定資産税評価額」(建築費用のおおむね60~70%程度)で評価されます。また、入居者がいる賃貸物件であれば「貸家建付地」として土地の評価額がさらに下がり、節税効果は一層高まります。

相続税対策として不動産を活用するなら、早めに計画を立てることが大切です。

節税効果が高い人の特徴

不動産投資の節税効果は、全員が同じように享受できるわけではありません。所得水準や保有目的、運用規模によって効果の大きさは変わります。

課税所得900万円超の会社員・事業主

損益通算による節税は、所得税の税率が高い人ほど効果が大きくなるのが特徴です。

課税所得が900万円~1,800万円未満の場合、所得税率は33%になります。不動産所得の赤字が100万円あれば、単純計算で33万円以上の還付が見込めます(住民税は課税所得に対して一律10%が別途かかります)。

一方、課税所得が低い層は税率も低いため、同じ赤字でも節税効果は限定的です。課税所得300万円の方の所得税率は10%のため、100万円の赤字でも還付は10万円程度にとどまります。

なお、課税所得は給与収入から給与所得控除や社会保険料控除などを差し引いた後の金額です。同じ年収でも、控除の状況によって課税所得は変わります。

相続・贈与対策を考えている人

現金を不動産に換えると、相続税評価額を大きく圧縮できます。土地は「路線価」(時価のおおむね80%程度)、建物は「固定資産税評価額」(建築費用のおおむね60~70%程度)で評価されます。さらに賃貸に出せば「貸家建付地評価」が加わり、評価額はより下がります。

例えば現金5,000万円をそのまま相続すると、評価額は5,000万円のままです。同額で賃貸用不動産を購入した場合、条件次第で評価額を3,000万円台まで圧縮できることもあります。資産の大半が現金・預貯金という方にとって、特に有効な手法です。

事業的規模で青色申告を使えるオーナー

一定規模以上で不動産賃貸業を営む場合、「青色申告」を活用することで追加の節税効果が得られます。

国税庁が定める「事業的規模」の目安は、アパート・マンションなど独立した室数が10室以上、または独立家屋が5棟以上(いわゆる「5棟10室基準」)です。この基準を満たし、複式簿記での記帳とe-Tax(電子申告)を組み合わせることなどで、最大65万円の青色申告特別控除を所得から差し引けます。

また、事業的規模であれば、同一生計の家族への給与(青色事業専従者給与)を経費として計上できる点も大きなメリットです。節税の幅がさらに広がります。

5棟10室の基準を満たさない小規模な投資家でも、青色申告を選択すれば10万円の特別控除を受けられます。

節税に有利な物件の特徴

節税効果の大きさは、物件の「構造」「築年数」「土地と建物の比率」の3つによって決まります。この3点を意識した上で、物件を選ぶことが重要です。

木造は1年あたりの償却額が大きい

減価償却費は、建物の法定耐用年数によって決まります。耐用年数が短いほど、1年あたりの償却額が大きくなります。

主な構造別の法定耐用年数は下表のとおりです。

住宅構造法定耐用年数
木造・合成樹脂造22年
金属造(※骨格材の厚さ4mm超の場合)34年
RC造(鉄筋コンクリート造)47年

例えば建物部分が5,000万円の物件を新築で購入した場合、定額法での年間減価償却費は木造アパートで約230万円(5,000万円×償却率4.6%)、RC造マンションで約110万円(5,000万円×償却率2.2%)になります。同じ投資額でも、構造の違いだけで2倍以上の差が生まれます。

節税効果を重視するなら、まず木造を検討することが基本です。

築古は償却完了までの期間が短い

中古物件は、税法上の「簡便法」(残存耐用年数を見積もる計算方式)を使って耐用年数を短縮できます。

築年数が法定耐用年数を超えた物件の耐用年数は「法定耐用年数×20%」で算出します。築22年以上の木造物件であれば、22年×0.2=4年です。建物部分を最短4年間で全額償却できるわけです。

建物取得費が3,000万円であれば、毎年750万円(3,000万円÷4年)を経費計上できる計算です。新築木造(22年で割る)と比べると、1年あたりの償却額は約5倍になります。

ただし、償却が完了した後は減価償却費がゼロになるため、その後の税負担が一気に増える点に注意が必要です。出口戦略(売却のタイミングなど)を、事前に考えておきましょう。

建物比率が高い物件は経費枠が広い

減価償却できるのは建物部分のみで、土地は対象外です。そのため、同じ価格の物件でも建物比率が高いほど、経費として計上できる金額が多くなります。

例えば2億円の物件で、建物比率40%(8,000万円)の物件と建物比率60%(1億2,000万円)の物件を比較した場合、木造(耐用年数22年)での年間償却額は以下のとおりです。

・建物比率40%の場合:8,000万円÷22年 ≒ 368万円/年
・8,000万円×償却率0.046=368万円
・建物比率60%の場合:1億2,000万円÷22年 ≒ 552万円/年
・1億2,000万円×償却率0.046=552万円

差額は年間約184万円にのぼります。

都市部の物件や区分マンション(1室のみを購入する形態)は、土地代が高いため、建物比率が低くなりがちです。一方、郊外の一棟アパートは土地代が低く建物比率が高くなりやすいため、償却費の経費枠を広く確保しやすい傾向にあります。

節税目的の不動産投資で見落としやすいリスク

節税効果は永続しません。初年度の効果を過信したまま運用を続けると、想定外の税負担やキャッシュフローの悪化に直面するケースがあります。

2年目以降は経費が減り効果が薄れる

購入初年度は、登記費用・印紙税・不動産取得税などの初期費用を一括で経費計上できます。そのため不動産所得が赤字になりやすく、損益通算による節税効果も大きくなります。

しかし、これらの初期費用は翌年から計上できません。2年目以降は経費が一気に減り、節税幅が縮小するのが実態です。

また、ローンの利息は年々減少します。利息は経費に算入できますが、返済が進むにつれて利息部分が少なくなるため、使える経費の総額は徐々に下がっていく点にも注意が必要です。

さらに耐用年数が終われば、減価償却費もゼロになります。この時点でローン返済が残っていると「デッドクロス」(ローンの元金返済額が減価償却費を上回り、帳簿上は黒字なのに現金が不足する状態)に陥るリスクが高まります。

売却時に譲渡所得税が膨らむ

減価償却費を毎年計上すると、建物の会計上の価値である「簿価」が年々下がっていきます。売却時の譲渡所得は「売却価格 − 簿価 − 譲渡費用」で計算されるため、減価償却を多く計上するほど売却時の税負担が大きくなります。

例えば、建物取得費3,000万円の物件を4年で全額償却した場合、4年後の建物簿価はほぼゼロです。この物件が3,000万円で売却できた場合、取得費が大きく減少しているため、譲渡所得が大きくなります。その結果、売却時の税負担が重くなる可能性があります。

譲渡所得税率は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超なら「長期譲渡」として20.315%、5年以下なら「短期譲渡」として39.63%です。節税目的で築古物件を取得した場合、短期売却すると税率が2倍近くになるため、所有期間5年超を目安に出口戦略を立てることが大切です。

節税偏重で収支が悪化する

節税額ばかりを優先して物件を選ぶと、収益性を見誤るリスクがあります。

例えば、減価償却効果が大きい築古物件は空室リスクが高く、修繕費もかさみやすい傾向があります。節税で得られた還付額を、修繕費や空室損失が上回るケースも少なくありません。

不動産投資の本質は、「節税」ではなく「収益を得ること」です。そのため、収益性や将来性などの確認は欠かせません。

節税は手段の一つにすぎず、キャッシュフローが赤字の状態が続くと、ローン返済資金の確保も難しくなります。また、不動産所得が赤字では金融機関からの次の融資審査でも不利に働く点に注意が必要です。

キャッシュフローが悪化して毎月の手出しが続く状況では、物件の長期保有が難しくなります。結果として、不利なタイミングでの売却を迫られるリスクも生まれます。

不動産投資と節税に関するよくある質問

ここでは、節税を目的とした不動産投資において多く寄せられる疑問に回答します。

Q. 新築区分マンションでも節税できる?

A. 節税効果は限定的で、節税目的の購入はおすすめできません。

新築区分マンション(1室のみを購入する投資形態)が節税に不向きな理由は、主に2点あります。

1点目は、耐用年数が長い点です。新築マンションの多くはRC造(鉄筋コンクリート造)で、法定耐用年数は47年です。1年あたりの減価償却費が少なくなるため、節税効果は限定的になります。

2点目は、建物比率が低い点です。都市部の区分マンションは土地代が高く、物件価格に占める建物の割合が低くなりやすい傾向があります。減価償却の対象は建物のみのため、建物比率が低いほど経費に計上できる金額が少なくなります。

Q. 確定申告は必要?

A. 不動産所得が生じた年は原則として確定申告が必要です。

給与所得者(会社員など)の場合、不動産投資で得た所得を含む「給与以外の所得」の合計が年間20万円を超えると確定申告が必要です。また、損益通算で税金の還付を受ける場合にも確定申告は欠かせません。

Q. 法人化はいつ検討すべき?

A. 課税所得が900万円を大きく超えたあたりが一つの目安です。

個人で不動産投資をすると、不動産所得には所得税・住民税が課されます。課税所得が900万円を超えると所得税率は33%以上です。

一方、法人の実効税率(法人税・法人住民税・法人事業税を合わせた税率)はおおむね30%程度です。個人と法人で税率が逆転するこのタイミングが、法人化を検討する目安とされています。

不動産投資は効果的な節税手段の一つ

不動産投資には、減価償却・損益通算・経費計上・相続税評価の圧縮など、複数の節税効果があります。ただし、その効果は所得水準・物件選び・保有期間によって大きく異なります。

なお、不動産投資は節税を主目的にするのではなく、税引後のキャッシュフローと収益性を踏まえて判断することが重要です。節税効果と長期的な運用収支のバランスを意識した物件選びと運用計画が、不動産投資を成功させる上で欠かせません。

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< この記事の監修者 >
大塚 正幸

大塚正幸税理士事務所 代表/税理士
東京税理士会京橋支部所属

東京国税局に約30年間勤務し、相続税・贈与税・譲渡所得税などの資産税事務を専門に従事。 千葉西税務署、江東西税務署、品川税務署、東京上野税務署をはじめ合計17ヵ所の税務署で統括国税調査官として相続税調査の最前線に立ち、申告書精査から調査事案選定まで幅広い実務を経験。 令和2年7月に退職後、同年9月に税理士事務所を開業。現在は相続税専門税理士として申告業務を中心に活動するかたわら、大手税理士法人のセカンドオピニオン業務も手がける。 令和4年4月より千葉県税理士会税務研究所研究員として、税理士向けの財産評価・相続税申告相談も担当。

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