【第1回】実例で学ぶ相続相談室!今すぐできる相続対策、遺言書のススメ!

誰かが亡くなった時、考えなければならないのは遺産相続や資産承継のこと。遺言書とは被相続人が「自己の財産をこう遺したい」という意思を引き継ぐ法律文書のことをいい、親族間での争いを防ぐためにも重要なメッセージになります。法改正によって作成しやすくなったこともあり、今すぐできる相続対策として注目されています。家族に向けて、自分の意思を正確に伝えるためにも、遺言書について考えてみませんか?

遺言書の種類

遺言書は大きく2つの方式に分かれ、全5つの種類に分かれています。今回の記事では一般的な普通方式のうち3種類をご紹介します。

遺言書の読み方は<ゆいごんしょ><いごんしょ>の2通り。どちらも間違いではないが、法律用語としては<いごんしょ>と読むこと、日常会話では<ゆいごんしょ>と読むのが一般的だ

〔自筆証書遺言〕
本人が紙に自ら遺言全文を手書きします。法改正により2019年1月からは財産目録のみ、パソコン入力が認められるようになったため、手間が軽減。2020年7月より希望すれば法務局で保管してもらえるため、「死後、遺言書が見つからない」といったトラブルを防ぐことができます。費用がかからず、いつでも書けるというメリットがありますが、定められたルールにのっとって書かないと書式不備で無効になる場合があるため、注意が必要です。

〔公正証書遺言〕
公証役場に出向き作成してもらいます。公正証書により作成される遺言書は証人2人の立会いの下で作成され、原本が公証役場で保管されます。破棄・隠匿・改ざんなどの心配はありませんが、費用がかかります。

〔秘密証書遺言〕遺言内容を「秘密」にできる証書です。パソコン入力や代筆も可能で、自筆署名・捺印し、封入・封印します。この封書を公証人と証人2名に提出し、所定の手続きを経て作成します。遺言内容を明かさなくとも、本人の遺言であることを証明できます。その一方で、開封するまで内容の不備に気付かない恐れもあります。

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といった、普通方式遺言それぞれのメリット・デメリットを確認してみましょう。


秘密証書遺言を選択する場合は、資産や相続人に漏れがないかを慎重に確認する必要がある。もしくは「本遺言書に記載なき財産については〇〇へ相続させる」と明記することも必要

CASE1 疎遠だった甥からの突然の相続分の主張は認められる?

ここからは実際に起こった相続問題を、ケーススタディとしてご紹介します。

Q:(相談者:妻)夫との間には子どもはおらず、夫の兄弟も既に他界。甥(夫の弟の子)が一人いるが疎遠だった。財産の大半は自宅とアパートであり、かつ夫名義だったところ、夫が急逝した。遺言書は作成されておらず、葬儀後、疎遠だった甥が突然、相続分を主張してきた。 

疎遠になった親族からの急な主張は心穏やかではない。こんなトラブルを防ぐためにも、躊躇せず、遺言書を作成したい

A:遺言書があれば全部相続可能(甥・姪には遺留分なし)
⇒法定相続分を変更するためには遺言書が必要

Point:遺言書があれば妻に全財産を相続することが可能

遺留分侵害請求:特定のものにだけ有利な内容の遺産配分がなされた場合に、一定の範囲の法定相続人が、自己の最低限の遺産の取り分を確保することができる制度

遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限の遺産を確保するために設けられた制度のこと

CASE2 他界した母と同居していた兄から相続分を増やせとの主張は認められる?

Q:(相談者:長女)10年前、父親が他界し、長女と長男は、特に協議をすることなく、母親に財産の大半を相続させた。長男は母親と同居している。父親の死亡後、母親は認知症の兆候も出ていたが、先日亡くなり、葬儀後、長男が用意してきた遺産の内訳をみると、父親死亡時の相続財産からかなり減少していた。長男は全て母親が使ったと主張し、さらに自身が母親の面倒を見てきたのだから、長男の相続分を増やすべきと主張してきた。

遺言書を残すことで兄弟、姉妹間の争いは避けられたのに…。の、典型的なケース。相続トラブルを回避するためには資産の大小の関わらず、遺言書を作成することをおすすめしたい

A:遺言書を作成しておくことで、相続分を増やせとの主張は原則としてできなくなる。
⇒認知症になった後の財産の管理については、任意後見制度等を活用

長男が主張する寄与分とは?
被相続人の生前に、相続人が被相続人の財産の増加や維持に寄与していた場合、その相続人は、その分多くの財産を相続することができる制度

遺言書によって『寄与分の主張』を排除することができるか?
⇒「特定の遺産を相続させる」と記載する必要があります。
※相続割合の指定だけの場合、寄与分によって修正される可能性があります。

Point:遺言書を作成いただくことで、後の争いを事前に防止できます。

悩んだら専門家に相談を

今回は基本的な遺言書の種類と、遺言書を作成することで防げる相続トラブルをケーススタディでお伝えしました。実例をみてみると想像よりも身近な悩みになりますね。いつかは当事者になるであろう相続。ご所有の資産や、家族構成によって必要な知識はさまざまで、誰に相談していいか分からないかもしれません。そんなときは、「アパート経営の専門店」のセレにご相談ください。資産を後世に安心して承継できるようオーナー様をサポートしています。

監修=家近友直(弁護士|第一法律事務所)

 

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