サブリース契約とは? 仕組みやメリット・デメリット、契約時の注意点を解説
2024.07.29

賃貸経営・不動産投資における選択肢のひとつである「サブリース契約」。正しく使えば便利な一方で、「危ない」「トラブルが多い」という声もあります。サブリース契約とは何なのか、そのメリットとデメリットや、なぜ警戒されるのか、実際にサブリース契約を結ぶときの注意点などをまとめました。

サブリース契約とは

不動産オーナーが所有している賃貸物件の管理を不動産会社に委託し、定額の家賃保証を受ける契約のことを「マスターリース契約(原賃貸借契約)」といいます。マンションやアパートなどを一棟丸ごと契約する場合、「一括借上げ」と呼ぶことがあります。

サブリース(転貸借契約)は、正確にはオーナーとマスターリース契約を結んだ不動産会社が賃貸物件を賃借人(借主)に転貸借、つまり又貸しすることを指します。しかし、一括借上げやマスターリース・サブリースをまとめた一連の契約を「サブリース」と呼ぶのが一般的です。

サブリース以外の選択肢

賃貸経営には、サブリース以外の方法もあります。それぞれ業務のどの部分を担うのかによって、不動産会社との契約方式などが異なります。

管理委託

賃貸オーナーが不動産会社に賃貸物件の管理を委託する方法です。入居者募集や家賃の集金などを含む「賃貸管理」と、物件のメンテナンスや清掃といった「建物管理」を不動産会社に任せることができます。

オーナーは月々の管理手数料を不動産会社(管理会社)に支払いますが、契約によって任せられる業務や手数料の金額が変わります。相場は家賃の5%程度といわれています。

サブリース契約との大きな違いは、オーナーが入居者と直接賃貸借契約を結ぶという点です。

自己管理

上記のような賃貸管理や建物管理のすべてを賃貸オーナー自らが行う方法です。手間や時間がとられ、専門的な知識が必要なことも多いですが、不動産会社に払う管理手数料を節約できる、物件の変化に気づきやすいというメリットがあります。

サブリース契約の仕組みと種類

「サブリース契約とは」の項で触れたとおり、サブリースとは、不動産会社が賃貸オーナーから借り上げた賃貸物件を転貸借(又貸し)することを指します。賃貸オーナーは不動産会社とマスターリース契約を結び、手数料を毎月支払います。サブリース契約にかかる手数料の相場は家賃の10~20%で、契約方式には次のような種類があります。

賃料固定型(家賃保証型)

賃貸オーナーに支払われる賃料が変わらず保証されている契約方式です。実際の貸出し賃料が変わった場合や空室がある(=入居者がいない)場合も、オーナーに支払われる金額は変わりません。そのため、オーナーにとっては収入が安定するというメリットがあります。

パススルー型(賃料変動型)

空室状況に応じてサブリース会社から振り込まれる賃料が変動する契約方式で、管理委託とサブリースの中間のような形態です。

不動産会社はオーナーと一括借上げのマスターリース契約を結びますが、転貸した入居者から得られる家賃収入に応じてオーナーに支払う賃料が変わります。賃貸オーナーにとっては空室リスクがともないますが、賃料固定型より手数料が安く設定されているケースが多いようです。

サブリース契約のメリットとデメリット

サブリース契約はなぜ危ないといわれる?

検索エンジンなどで「サブリース」と検索すると、「危ない」「トラブル」などが候補として挙がることがあります。多くの人が「サブリース 危ない」などと検索していることによるものですが、このようなマイナスイメージがついてしまったのはなぜなのでしょうか。

これは、過去にサブリース契約に関するトラブルが多く発生しているためです。不動産投資や賃貸経営に詳しくない人に対して、不動産会社がメリットばかりを強調し、実際に発生するコストやリスクを詳細に説明せずマスターリース契約を結んでしまうことが過去には少なからずあったのです。

決定的だったのが、2018年に起こった「かぼちゃの馬車事件」。シェアハウスのサブリース会社が破綻したことで、何百人ものオーナーへの賃料が不払いになりました。賃料での返済をあてに高額のローンを組んでいた不動産投資家のなかには、自己破産にまで追い込まれた人も。当時はニュースにも取り上げられ、社会問題になりました。

これらを受けて2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定、2021年に施行されました。それまで任意であった賃貸住宅管理業の登録制度を義務化したほか、サブリース業者とオーナーの間の賃貸借契約に関する法的規制が導入されたため、“サブリース新法”とも呼ばれます。

“サブリース新法”では、サブリース業者による誇大広告・不当な勧誘行為の禁止や重要事項説明の義務化が定められています。

出典:賃貸住宅管理業法ポータルサイト

また、あわせて「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が策定されました。

出典:国土交通省 サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン

サブリース契約のメリット

トラブルが起きるケースはあったものの、賢く利用すれば賃貸経営の強い味方となってくれるサブリース契約。例えば、サブリース契約には以下のようなメリットがあります。

空室リスクを回避でき、収入が安定

賃料固定型の契約であれば、家賃滞納や空室の有無に関係なく一定の賃料を得ることができます。つまり、賃貸経営の最大のリスクともいえる空室に脅かされずに済むということです。収入の増減がないため賃貸経営が安定し、経営計画が立てやすくなります。

管理業務の負担がなくなる

入居者との契約は不動産会社(サブリース会社)が行うため、募集やトラブル対応など、賃貸管理業務の手間がかかりません。物件の保守点検や清掃などの建物管理もお任せできます。

また、確定申告においてもサブリース会社への手数料が主な経費となるため、記入項目がシンプルになり、申告の手間が軽くなります。

広告料や原状回復費などの負担減

入居者募集や入退去の際の原状復帰工事などもサブリース会社にお任せできます。広告や工事は専門業者への依頼が必要ですが、それらもすべてサブリース会社が行ってくれるため、業者探しをしたり、見積もりが妥当かどうか検討したりする必要がありません。

相続税対策になる

相続税額は、保有する財産に応じて変わります。現金に比べて不動産は評価額が下がり、税率が低くなります。なかでも賃貸物件が建っている土地は貸家建付地(かしやたてつけち)といい、さらに評価額が減少します。

通常、空室部分については賃貸されていないものと見なされ、貸家建付地としての評価減は行われませんが、サブリースの場合は空室があったとしても、原則的に一棟全体に貸家建付地の評価が行われます。

もともと賃貸経営は相続税対策になりますが、サブリースの場合はよりその効果が高いといえるでしょう。

サブリース契約のデメリット

収益性が下がる(保証家賃は相場の80~90%)

サブリース会社に支払う手数料の相場は家賃の10~20%。通常であれば入るはずの家賃収入が減ってしまうため、満室経営の場合の収益は、サブリース契約をしない場合と比べて少なくなることが一般的です。

さらに、敷金や礼金、更新料はサブリース会社の収益に。また入退去時のハウスクリーニングや原状回復工事、大規模修繕などはオーナーが負担することが多いため、手元に現金が残りにくいというリスクが生じます。

家賃を減額されるおそれ

リスクのひとつに、サブリース会社から家賃減額の請求を受ける可能性があります。多くのサブリース契約では最低保証賃料の見直しを2年ごとに行うのですが、その際に、景気の悪化や物件が周辺の賃貸ニーズに合わなくなった、競合物件が増えたなどの理由で減額を請求される場合が出てきます。

入居者の審査ができない

サブリース契約では、入居審査はサブリース会社が行うため、賃貸オーナーは入居者を選ぶことができません。不動産のプロが審査してくれているとはいえ、賃料さえ払ってくれれば問題ないという観点で選ばれると、入居ルールを守らず他の入居者が続けて退去してしまうおそれもあります。

物件の資産価値は、ルールを守って長く住んでくれる入居者がいてこそ保たれるものです。そこまでの意識を持って審査してくれるサブリース会社を選ぶ必要があるでしょう。

サブリース会社倒産のリスク

サブリース会社の主な利益は、入居者から得た家賃とオーナーに支払う家賃の差額です。しかし、空室が埋まらなかったり、不景気が原因で計画通りの収益が上がらず、サブリース会社が倒産してしまうケースもあります。

サブリース会社が倒産すると、オーナーに毎月支払われていた家賃が途絶えてしまう可能性も。入居者は家賃をサブリース会社に支払うため、オーナーはその分をサブリース会社に請求することができます。しかし、倒産によって回収に時間がかかったり、全額回収できなかったりすることも考えられます。

さらに、空室率が高い状態であれば、収入が一気に減ることになってしまいます。サブリース会社の倒産は、オーナーにとって大きなリスクです。

売却時に買い手がつきにくくなる可能性

サブリース契約中の賃貸物件でも売却することはできます。しかし、サブリース契約は買主に引き継がれるため、上記のような理由で敬遠される場合があります。

サブリース契約の実務プロセスと注意点

デメリットやリスクはあるものの、賃貸経営に時間や手間をかけられない、安定収入を望むオーナーにとっては魅力的なサブリース契約。ここでは、サブリース契約によって賃貸経営をするための実際の流れや注意点について解説します。

サブリース契約において信頼できる会社の選び方

まず大事になるのがサブリース会社選びです。サブリース会社には、建築会社やハウスメーカー系列の会社、大手不動産チェーン系列、地域の不動産会社、サブリース事業がメインの独立系不動産会社などがあります。

問い合わせをしたサブリース会社からは、現地調査をもとにした事業計画や提案書が提出されます。物件の立地や周辺のニーズ、競合状況などを調査したうえで、設定家賃や入居者の募集方法や管理内容などの提案を受けます。

ここで注意したいのが、賃貸オーナー自身も情報収集を行い、提案内容が妥当かどうかを判断する必要があること。あまりに楽観的な事業計画の場合は注意しましょう。賃貸業務のほぼすべてを任せるサブリース会社だからこそ、オーナーと同じ目線で、長期的に並走してくれる会社を選びたいものです。

提案内容以外では、会社そのものの経営状況の安定性、入居者募集・賃貸管理などの実績、修繕の実施状況などを必ず確認するようにします。契約書に記載された内容が明確で、透明性があるか、質問に納得いくまで答えてくれるかどうかの判断も重要です。

サブリース契約の準備と流れ

提案書のすり合わせができたら、サブリース会社から契約書の提出を受けます。契約書の内容については、次のような点に注意しましょう。

サブリース契約をする際の注意点

●免責期間
サブリース契約には、1〜3カ月の免責期間が設定されていることがほとんどです。免責期間中はたとえ家賃収入があってもサブリース会社の収益となり、オーナーへの家賃支払いはありません。免責期間は建築後の初期募集期間や、退去者が出るたびに設けられることもあります。

契約書では、免責期間の有無と発生条件、期間を必ず確認するようにしましょう。

●サブリースの契約期間
一般的なサブリース契約では、契約期間は2〜3年で自動更新するタイプと、10年以上の長期契約で一括借上げ保証をするタイプがあります。契約期間中であっても、借地借家法で保護される立場にあるサブリース会社からの解約は可能ですが、オーナー側の希望で解約するのは難しいことに注意しましょう。

●サブリース契約を解除する場合の違約金
サブリース会社側からはできても、オーナー側からは契約解除が難しいサブリース契約。契約途中で解約したり、契約更新のタイミングで更新せずに契約を終了したりすると、違約金の支払いが必要なケースもあります。

違約金の支払いの有無や発生条件、金額については契約書に記載されています。契約書でチェックするべき主な項目については以下となります。

<契約書の主なチェックポイント>
□ 契約期間はどのように設定されている?
□ 免責期間はどんな設定になっている?
□ 賃料改定についての可否や条件は?
□ 解約条件や契約解除した場合の違約金はどのくらい?
□ 修繕などオーナーの負担が必要な費用の内容は?
□ 賃料は?内訳や賃料査定の根拠は?
□ 入居者情報の開示可否や条件は?

よくあるサブリース契約のトラブル事例とその解決策

サブリース契約のトラブル事例

サブリース契約はオーナーにとってメリットがある一方で、さまざまなトラブルも起きています。金融庁、消費者庁、国土交通省が出している通知文から、トラブル事例を抜粋してご紹介します。

・投資目的でシェアハウス1棟を購入し、事業者とサブリース契約をした。1年過ぎた頃から5年間の家賃保証が守られず困惑。

・10年前に建設業者に勧誘されてアパートを建てたことに始まり、一括借上げ、特約システムなど次々に契約や費用負担を強いられる。

・自宅の一部を賃貸するサブリース契約を締結したが、十分な説明がないまま家賃保証額を下げられ不満だ。サブリース契約をやめたい。

・サブリース会社が、15年前に両親が建てた賃貸アパートの賃料を下げると言っている。ローンの返済も困難になり納得がいかない。

・14年前に賃貸アパートのサブリース契約をした。2年ごとに契約を更新するが、条件が悪くなる一方だ。

・アパート1棟をシェアハウスとして購入し家賃は管理会社から入金される約束だったが、入金されない。住宅ローンが支払えない。

出典:金融庁、消費者庁、国土交通省 アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!

サブリース契約でのトラブルを回避するポイント

“サブリース新法”では、マスターリース契約の締結前に、家賃減額リスクを含む賃貸条件、物件の管理方法やその費用分担、借地借家法に基づく途中解約リスクなどを含む重要事項の説明をする義務が課されました。

しかし、法律によってすべてのケースを網羅するのは難しく、サブリース会社の説明不足やオーナー側の理解不足によるトラブルは今後も起こり得ます。

トラブルを回避するためには賃貸オーナーもしっかり知識を得つつ、必要に応じて専門家のサポートを受けながら慎重に進める必要があります。

大きなポイントとなるのはやはり会社選び。「サブリース契約において信頼できる会社の選び方」の項でも触れましたが、オーナーと同じ目線で物件の資産価値を守り、長く賃貸経営に寄り添ってくれる会社、賃貸経営のノウハウが豊富な会社を選ぶことが肝心だといえるでしょう。

サブリース契約は正しく使えば便利

サブリース契約を結ぶ不動産会社にはさまざまな形態があることは前述のとおりですが、実績とスケールメリットを備えつつ、エリアのニーズを熟知し、賃貸管理と建物管理、入居者募集のすべてにノウハウを有する会社は限られています。

“アパート専門メーカー”として東京圏での建築累計2,700棟以上、管理戸数12,000戸以上の実績を持つセレ コーポレーションでは、オーナーさまのニーズに合わせたオペレーションシステムをご用意しています。

「20年一括借上システム」では、セレ コーポレーションがオーナーさまからアパートを借り上げ、入居者の募集業務から集金業務、物件の管理業務などをすべて担い、20年の長期にわたり安定した経営をサポートします。
また、フラッグシップブランドである「My Style vintage」限定の30年一括借上プランも用意されています。※

※一括借上システムの留意事項
月額借上家賃は一定期間経過時及びそれ以降も契約に定める期間が経過するごとに見直しを行う場合があります。更新時期には入居実績や経営状況に合わせて見直しのご提案を実施いたします。
借地借家法32条による家賃減額の可能性があります。また、契約期間中であっても解約となる場合があり、借地借家法28条によりオーナーさまからの更新拒絶及び解約には正当事由が必要となります。

セレ コーポレーションは、人口集中が進む東京圏(1都3県)にエリアを特化し、従来型の住空間に満足していない若者をターゲットに設定。“LDK発想”や“立体構造”を採り入れた独創的な空間設計と、大容量収納などの利便性にこだわった設備が住まいにこだわる若者のニーズに応えており、入居率は98.5%(2024年2月時点)を達成しています。

もちろん、メーカーとしてのものづくりにも妥協はなく、100年先を見据えて建築、その先のアパート経営を長期的にサポートする体制があります。表面上の収入安定ではなく、持続可能な安定経営を目指す会社だからこそ、一括借上(サブリース)契約の強みを最大限に生かせるはず。将来にわたって、賃貸オーナーの心強い並走者となってくれるでしょう。

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