旗竿地ってどんな土地? 意外なメリットや購入時の注意点などを解説
2024.06.26

都市部によく見られる「旗竿地」。いわゆる不整形地のひとつですが、どのような経緯で生まれ、活用においてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。旗竿地の活用方法を含めて解説します。

旗竿地とは

「旗竿地」とは、四角い土地に竿のような細長い土地がくっついた土地のことです。四角くて平らな「整形地」ではない「不整形地」の一種で、土地の利用価値が高い都市部で多く見られます。

道路に面する部分が狭く、その奥に敷地が広がっているため、上から見ると旗のような形になっています。「敷地延長」や「敷延(しきえん)」と呼ばれることもあります。

旗竿地が生まれる背景

旗竿地は、土地を分割(分筆)して売却する際に生まれます。長方形の土地を2区画に分ける場合、前面道路から単純に二分割してしまうと奥行きのある長方形2つとなり、使い勝手が悪くなってしまうことがあります。

そのため、前面道路側に横長にひとつ、間口を設けて奥にひとつ、という分け方をします。
建築基準法では、建物の敷地は幅員(幅)4m以上の道路に2m以上接していなければならないと定められているため、2m幅の間口から通路をつくって、奥に敷地を広く取るのです。

相続した土地などを分譲地として売りに出す場合によく旗竿地が生まれます。

旗竿地は活用できない?

旗竿地は、制約があるものの特徴を生かしてうまく活用することは可能です。しかし、すべての旗竿地が活用可能というわけではなく、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

良い旗竿地と悪い旗竿地の見分け方

旗竿地といっても、路地状部分の間口が広く取られていることもあり、そのような旗竿地は建築しやすく、良い旗竿地といえます。逆に、路地状部分が幅2mギリギリ、あるいは長すぎたりする場合は土地活用するうえで制約が大きくなります。

価格の面では、旗竿地は整形地よりも安く販売されていることがあります。人気のエリアにあり、周辺相場に比べて割安であればお得な土地といえるでしょう。不便な地域であったり、周辺と変わらない坪単価に設定されていたりする旗竿地は、あまりおすすめできません。

旗竿地のメリット・デメリット

不整形な旗竿地にもメリットはあるのでしょうか。また、デメリットにはどんなものが挙げられるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。

旗竿地のメリット

坪単価が近隣相場より安い

前項でも触れたとおり、同じエリア内では整形地より不整形地のほうが単価は安くなることがしばしばあります。例えば整形地と、同じ広さの奥の土地+路地状部分を含んだ旗竿地が同じ単価で、路地状部分を含めれば旗竿地のほうが坪単価は安くなるケース。路地状部分も活用できれば、お得な買い物といえます。

道路から離れていて静かに暮らせる

旗竿地では道路から奥まった土地に家を建てるため、静かな環境で暮らせるというメリットがあります。道路を通る自動車の音や排気ガス、通行人の視線が家まで届きにくく、平穏な暮らしが楽しめるでしょう。

延床面積を広めに確保できる場合も

家の延床面積は、建ぺい率や容積率の上限が定められています。旗竿地の場合は路地状部分の面積を含めて計算できるため、奥の敷地が狭くても大きめの家を建てられることがあるのです。

また、路地状部分を駐車場として活用できれば、整形地よりも奥の四角い土地をフル活用して家を建てられることもメリットのひとつです。

■整形地と旗竿地の利用例

旗竿地のデメリット

整形地よりも土地活用の際に費用がかかる

旗竿地は、敷地内に大型トラックやクレーン車などの重機が入りづらいことがあります。その場合は建物の建築や解体、廃材の運搬などを人力で行わなければならず、整形地よりも人件費が高く、工期も長くなります。

敷地への電気や水道の引き込みが必要な場合も、路地状部分の分配管が長くなり、費用が高い傾向に。路地状部分があることで、外構費用も整形地より大きく膨らむことがあるため注意が必要です。

隣接している家との騒音問題が起きやすい

一方を道路に接している整形地とは違い、旗竿地はほぼ四方が近隣住宅に囲まれています。そのため、隣家の生活音が気になったり、逆に苦情を言われたりすることも。

メリットの項で「路地状部分も含めた建ぺい率・容積率で建てることができる」としましたが、あまりに敷地ギリギリに建ててしまうと、隣家がさらに近くに迫り、騒音問題が起こりやすくなります。

建築基準法などにより再建築不可の場合も

旗竿地の中には、「再建築不可」の条件がついているものが存在します。これは、分筆当時は法規に合わせられていた土地でも、現行の建築基準法には適合しなくなってしまったケースです。
最も多いのが接道義務を満たしていないパターンで、路地の間口が2m未満の場合は基本的に再建築不可と考えたほうがよいでしょう。

再建築不可の場合は新たに建物を建てることができないため、所有する土地を位置指定道路として申請したり、隣接地を借りるか購入して接道義務を満たすようにしたりするなどの対策が不可欠です。

日当たりや通風が悪いことがある

旗竿地は奥まった場所にあるため、日当たりや風通しがよくない場合があります。もし該当するようであれば、戸建てなら2階以上をリビングにする、天窓を設けるなど間取り上の工夫が必要です。

旗竿地を購入する際のチェックポイント

制約はあるものの、その分お得に購入できる点は旗竿地の大きな魅力です。ただし、うまく活用できるかどうかはその土地にもよりますので、旗竿地の購入を検討するときには次のような点を確認しましょう。

購入時の検討事項

土地の形状と利用計画のマッチング

土地にはさまざまな利用方法が存在し、旗竿地に向いていない利用法もあれば、その逆もあります。
住居以外では、例えば路地状部分に車1台の通れる広さがあれば、トランクルームや駐車場にすることなどが考えられます。住む目的でなければ、旗竿地のデメリットである採光・通風の問題も影響ありません。

車を入れにくい立地や形状でも、駅や商業施設が近ければ駐輪場などの使い方が可能です。

旗竿地に賃貸住宅を建てる場合は、建築基準法に注意する必要があります。特に東京都は条例が厳しいため、変形地の建築実績が豊富で法規に詳しい建築会社に依頼するようにしましょう。

工事車両が入れるかどうか

デメリットの項でも触れたとおり、接道義務を満たしているとしても、工事車両が入りづらい場合は手作業での解体や運搬が必要になります。解体・建築費がかなり高くなってしまうため、路地状部分の幅員は必ず確認しましょう。

日照権や通行権の確認

日照権についてはまず、近隣の日照を妨げないための建築制限が設けられています。例えば「北側斜線制限」では、北側に建つ家との間に一定の空間を確保することや、屋根の高さ制限などがあります。旗竿地に建てたい建物の形に影響するため、確認が必要です。

旗竿地ができるような住宅密集地では、「袋地」と呼ばれる一切接道していない土地が隣接するケースもあります。袋地に家があって誰かが住んでいる場合、その住人は「その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と民法で定められています。これを「囲繞地(いにょうち)通行権」と呼びます。

「囲繞地通行権」は、袋地ができた経緯によって有償・無償が定められていますが、いずれにせよ、他人が通行権を持つことで土地活用が制限される可能性があります。該当していないかを確認しましょう。

将来的な土地売却への影響

再建築不可のリスクや解体・建築のコスト高、日当たりなどの問題によって、旗竿地の評価は整形地より低くなります。また、銀行の担保評価も低い傾向にあり、購入する際はローンが通りにくい可能性も出てきます。

そのため、将来、売却を考えたときになかなか買い手がつかない、売りづらくなってしまうリスクは頭に置いておきましょう。

旗竿地における土地活用戦略

旗竿地での宅地開発と法規制

旗竿地を活用するときに注意したい法規制として、まず「建築基準法」があります。先でも述べたように「建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない」というものですが、その他の細かい制限については自治体が条例で定めています。

「東京都建築安全条例」では、旗竿地の路地状部分の長さによって必要な幅員が定められています。路地状部分の長さが20m以下の場合は幅員2m以上、長さ20mを超えるものは幅員が3m必要です。

宅地開発の課題

デメリットの項と重複しますが、旗竿地における宅地開発の課題としては以下のようなものがあります。

○アクセスの困難さ……工事車両の進入や駐車スペースの確保が難しい
○建築計画における制限……形状によって建築可能な面積や設計に制限ができる(日照権の問題など)
○法的・行政的な規制……地域によって旗竿地の開発に特別な規制が設けられている場合がある

ほかにも、土地によっては採光や通風、ライフラインの引き込みなどに課題があることも。旗竿地の活用には、これらを一つひとつ解決する工夫が必要となります。

旗竿地での生活と設計アイデア

旗竿地の弱点をカバーしつつ、土地のポテンシャルを最大限に引き出すにはどうすればよいのでしょうか。
その方法をいくつかご紹介します。

プライバシーの確保と自然光利用

四方を建物に囲まれているため、プライバシーの確保と採光は最重要課題です。プライバシーの確保については隣家の窓の位置を把握し、視線が届かないようにする工夫が必要です。

窓の位置を計算するのはもちろん、中庭を造る、バルコニーのフェンスを高めに立ち上げる、木格子を設けて目隠しすることなどが考えられます。

採光については、家族の集まるリビングは明るい2階に配したり、高窓や天窓を設けて空からの自然光を室内に採り込んだりする設計が有効です。
特に暗くなりがちな1階玄関や階段ホールには、吹き抜けを設けて上階から採光できるよう工夫します。階段をスケルトン階段にしたり、建具にガラスなど光を通す素材を用いたりすることで暗さと閉塞感が軽減されます。

旗竿地の奥まった位置を逆手にとって、1階に寝室や書斎などを配置すれば、落ち着いて眠ることもできる、静かで集中しやすい環境を手に入れることが可能になります。

路地状部分を装飾して活用

路地状部分を建物までのアプローチと考えれば、暮らしを豊かにするためのさまざまな工夫ができます。例えばお花を植えたり、植栽で木陰をつくったりと、旗竿地の奥まった土地ならではの装飾が考えられます。クリスマスの時期は電飾で飾るのもよいですね。

小道でつながる隠れ家のような雰囲気を演出しやすいため、住宅に併設してカフェなどをつくる場合もおすすめです。道路から見える部分に看板を出せば「何だろう?」と興味を持ってもらいやすくなります。

防犯対策とコミュニティ活動

旗竿地は四方を住宅に囲まれていることが多いため、防犯面では安全といわれています。しかしこれも一長一短で、奥まっていることで死角も多く、犯罪で狙われやすいという面もあります。

空き巣の多くは窓から侵入するため、外から入りやすい場所の窓にはシャッターを設ける、死角になりやすい場所には人感ライトや防犯カメラを設置するなどの対策を行いましょう。

また、住宅密集地に多い旗竿地においては、近隣住民の目も犯罪の抑止力となります。
住民同士が挨拶をし合うエリアでは犯罪が起こりにくいといわれるように、近所付き合いがあるほうが防犯面では安全です。地域のコミュニティに参加するなどして顔見知りをつくるようにしましょう。

まとめ:旗竿地を理解し活用しよう

旗竿地にはさまざまな制約もありますが、安く購入できるというメリットや、旗竿地ならではの魅力もあることが分かっていただけたのではないでしょうか。

法令・条例について熟知し、旗竿地など不整形地の設計・建築に強い会社をパートナーに選べば、デメリットをメリットに変えることも不可能ではありません。

もし旗竿地で賃貸住宅の建築を検討されているなら、アパート専門メーカーであるセレ コーポレーションがおすすめです。人力で建築部材の搬入・組み立てができるオリジナルの構法を開発しており、間口が狭く、建築現場にクレーン車が入れない旗竿地でもアパート建築が可能です。

また、耐震等級3にも対応している独自構造の一要素である「鉛直ブレース」に0.5Pサイズ(45.5cm)のWブレース※を採用。これによって、より自由度の高い設計プランがかなうため、変形敷地への対応力が高いのもポイントです。
※骨組みに、対角線上に入れる補強材。通常品よりコンパクトサイズでありながら同等の耐久性を有する。

旗竿地ができるようなエリアは、土地へのニーズが高い場所ともいえます。土地を適切に活用することは、街づくりへの貢献につながるといっても大げさではありません。ぜひ旗竿地のユニークな特性を理解し、ふさわしい活用方法を見つけてください。

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