空き家を壊して更地にすると固定資産税が上がると聞き、不安に感じている土地所有者は少なくありません。
一方で、古い建物を残せば安心とも言い切れず、管理負担や安全面の問題もあります。
この記事では、更地の固定資産税が高くなる理由や空き家との違い、壊すかどうかの判断基準などを整理します。税金だけでなく、売却・活用まで見据えて、自分の土地に合った判断をしましょう。
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更地の固定資産税が高くなる理由
更地にすると固定資産税が上がる最大の原因は、住宅用地に適用される税の軽減措置(住宅用地特例)が外れることです。建物を解体するだけで、土地の税負担は大きく変わります。
住宅用地特例が外れるため
住宅用地特例とは、住宅が建っている土地に対して固定資産税・都市計画税の課税標準額(税額を計算するベースとなる金額)を減額する制度です。
土地の面積が200㎡以下の部分(小規模住宅用地)には固定資産税の課税標準が1/6、都市計画税が1/3に軽減されます。200㎡を超える部分(一般住宅用地)は固定資産税が1/3、都市計画税が2/3に軽減されます。
| 区分 | 対象面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡超の部分 | 評価額 × 1/3 | 評価額 × 2/3 |
| 更地(特例なし) | 全面積 | 評価額と同額※ | 評価額と同額※ |
※負担調整措置により、実際の課税標準額は評価額の70%上限に調整される場合が多いです。
建物を解体して更地になると、この特例が適用されなくなります。その結果、土地にかかる固定資産税は最大6倍になります。
ただし、正確にいうと「固定資産税全体が6倍になる」わけではありません。建物を取り壊せば建物分の固定資産税はなくなるため、空き家を残している状態と比較したトータルの税負担は3~4倍程度になるケースが多いです。
例えば固定資産税評価額が3,000万円・面積170㎡の土地であれば、解体前の固定資産税は約7万円であるのに対し、更地にした後は約29万4,000円となり、4倍以上に跳ね上がります。
1月1日時点の状態で税額が決まるため
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・建物の状況をもとに課税されます。
特に注意したいのは、年末に解体した場合でも、翌年の1月1日時点で建物が存在しなければ特例は適用されないという点です。逆に、年始(1月2日以降)に解体すれば、1月1日時点では住宅が存在すると見なされ、その年の税金は特例の対象になります。
解体を急ぐあまり年内(1月1日より前)に撤去してしまうと、翌年からすぐに高い税額が適用されます。解体のタイミングは税負担に直結するため、計画段階で自治体に確認しておくことが重要です。
更地と空き家では固定資産税がどう違うか
更地と空き家では、同じ「建物のない(または使われていない)土地」に見えても、固定資産税の計算上まったく異なる扱いになります。
住宅が残っている土地は税負担が軽くなりやすい
空き家であっても、建物が残っている限り、原則として住宅用地特例が適用されます。誰も住んでいなくても、構造上「住宅」として登記・課税されている建物が立っていれば、土地の固定資産税は軽減されたままです。
つまり、空き家を解体せずに保有するだけで、土地の税負担を抑えられるわけです。これが、老朽化した空き家が全国で放置され続ける大きな要因の一つとなっています。
ただし、空き家をそのまま残せば必ず得かというと、そうとも言い切れません。建物の維持管理費や、万が一倒壊した際の賠償リスクも発生します。税負担だけで判断するのは危険です。
特定空家になると空き家でも税金は上がる
2023年12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部を改正する法律が施行され、従来の「特定空家」(倒壊や衛生上の危険がある空き家等)に加え、その前段階にあたる「管理不全空家」という新たな区分が設けられました。管理不全空家として自治体から勧告を受けると、住宅用地特例が解除され、固定資産税が大幅に増額されます。
管理不全空家とは、「放置すれば特定空家になるおそれがある状態」の空き家です。窓や外壁の一部が損傷していたり、草木が繁茂して周囲に影響を与えていたりするケースが該当します。
指定から住宅用地特例解除までの流れとしては、まず市区町村が助言・指導を行います。それでも改善されない場合に勧告が発せられ、固定資産税の賦課期日(1月1日)までに措置が確認できなければ、住宅用地特例が解除される仕組みです。
最初の指導段階で対応すれば税負担の増加は回避できます。勧告まで放置してしまうと、解体していないにもかかわらず更地と同様の税負担が発生するため、早期対応が重要です。
以下に、状態別の固定資産税の扱いをまとめます。
| 空き家の状態 | 固定資産税の扱い |
|---|---|
| 適切の管理 | 住宅用地特例の適用により税負担が軽減される |
| 管理不全空家(勧告後) | 住宅用地特例の対象外となり、最大6倍程度の税負担となる場合がある |
| 特定空家(勧告後) | 住宅用地特例の対象外となり、最大6倍程度の税負担となる場合がある |
| 更地 | 住宅用地特例の対象外となり、最大6倍程度の税負担となる場合がある |
空き家を壊すか迷ったときの判断基準
解体するかどうかは、税負担だけで判断するべきではありません。建物の状態・維持コスト・今後の使い道の3つを軸に整理することが重要です。
建物の老朽化が進み危険がないか
まず確認すべきは、建物が安全に存在できる状態かどうかです。老朽化が進んだ空き家は、見た目では判断しにくい箇所で劣化が進んでいることがあります。
特に注意が必要なのは、1981年5月31日以前の旧耐震基準で建築確認を受けた住宅です。現行の耐震基準(震度6強~7の地震で倒壊しない設計)を満たしていない可能性があり、大規模地震で倒壊するリスクがあります。
また、誰も住まない空き家は換気がされないため、湿気がたまりやすく劣化が早まります。雨漏りやシロアリ被害が進行しても発見が遅れ、気づいたときには構造体にまで被害が及んでいるケースも少なくありません。
万が一、外壁や屋根材が落下して通行人や隣家に被害が出た場合、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。倒壊リスクが高いと判断できる場合は、早期に解体を検討すべき状況といえます。
維持管理の手間と費用が重くないか
空き家を保有し続ける場合、土地は住宅用地特例の対象になり得ます。一方で、建物を残している限り、その建物に対しても原則として固定資産税が課税されます。
そのため、保有コストを考える際は、土地の税額だけでなく、建物の固定資産税、修繕費、保険料、見回りや清掃の費用まで含めて判断することが重要です。
主なコストには、定期的な見回りや草刈り・清掃の費用、火災保険・地震保険の保険料、外壁や屋根の補修費などがあります。遠方に住んでいる場合は、現地への交通費も無視できません。
これらを「たいした金額ではない」と思いがちですが、年単位で積み上げると相当な額になります。さらに管理を怠ると、前述のとおり管理不全空家に指定されるリスクも高まります。
維持にかかるコストと手間が重いと感じ、かつ建物を生かす見通しが立っていないなら、解体を選ぶほうが長期的に合理的な判断になる場合があります。
売却や活用の予定があるか
今後の使い道によって、解体すべきかどうかの答えは変わります。解体せずに残すほうがよいケースは、以下のとおりです。
・建物の状態がよく、リフォームで再活用できる見込みがある
・古家付き土地として買い手が見込める立地にある
・相続した空き家を売却する予定があり、3,000万円の特別控除(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)を活用したい
(※更地にして売却しても特例は適用可能ですが、2024年の改正により、解体せずに売却して買主に解体してもらうことでも特例が使えるようになりました)
続いて、解体して更地にするほうがよいケースを見てみましょう。
・老朽化が激しく、リフォームで対応できない状態である
・土地活用や建て替えの計画が具体的にある
・早期売却を優先したい(更地の方が買い手がつきやすい傾向あり)
なお、解体費用の目安は木造住宅で1坪あたり3~5万円が相場です。自治体によっては老朽危険家屋の解体に対して補助金を設けているケースもあるため、解体前に市区町村の窓口で確認することをおすすめします。
更地にした後の選択肢
建物を解体して更地にした後も、土地をどう扱うかという判断は続きます。保有・売却・活用の3つの方向性を、正しく理解した上で選ぶことが重要です。
更地のまま保有する
将来的に土地を使う予定がある場合や、売却・活用の計画をじっくり立てたい場合は、いったん更地のまま保有するという選択もあります。
ただし、更地のまま保有し続けると、住宅用地特例が適用されないため、固定資産税の負担が重くなります。また、管理義務がなくなるわけではなく、雑草の繁茂や不法投棄への対処は引き続き必要です。
「とりあえず更地のまま持ち続ける」という状態は、税負担と管理コストだけがかかり続けるリスクがある点に注意しましょう。
更地で売却する
更地は、古家付き土地と比べて買い手がつきやすい傾向があります。購入者が自分で解体する手間や費用を負担せずに済むため、新築を検討している個人や建売業者にとって買いやすい状態だからです。
一方で、解体費用を上乗せした価格で売れるかどうかはケースバイケースです。周辺相場と乖離した価格設定をすると、かえって売却が長引くことがあります。
また、更地にしてから売却するまでの期間が長くなると、その間の固定資産税が増加する点にも注意が必要です。売却を前提に更地にするなら、できるだけ早く売り出す計画を立てることが重要です。
更地を活用する
売却せずに土地を手元に残すなら、収益を生む形で活用することで固定資産税の負担をカバーできます。主な活用方法は、以下のとおりです。
・駐車場、コインパーキング:初期費用が比較的少なく始めやすい方法
・トランクルーム・コンテナ倉庫:需要があるエリアなら安定した収入が見込める
・賃貸住宅(アパート建築):初期費用は大きいものの、住宅用地特例が再び適用されるため固定資産税の軽減効果がある
どの活用方法が適しているかは、土地の立地・面積・周辺需要によって異なります。活用を検討する際は、専門家に相談しながら複数の選択肢を比較することをおすすめします。
更地の活用方法を比較する
更地を生かす方法は一つではありません。初期費用・収益性・向いている立地はそれぞれ異なるため、土地の条件と目的に合わせて選ぶことが重要です。
駐車場として活用する
初期費用を抑えながら早く始められる点が、駐車場活用の大きな強みです。月極駐車場であれば整地と区画線の引き直し程度で始められ、初期費用を抑えられます。コインパーキングの場合も、駐車場運営会社に一括で貸し出す方式を選べば、設備費を負担してもらえるケースがあります。
一方、収益性はアパート経営などと比べると低くなりやすい傾向があります。また、駐車場は住宅用地に該当しないため、固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)は適用されません。
駅周辺や商業施設の近くなど、車の需要が見込める立地では収益が出やすい一方、住宅街から離れた郊外では稼働率が低くなるリスクもあります。
賃貸住宅として活用する
収益性と節税効果の両面を重視するなら、アパートなどの賃貸住宅を建築する方法が有力な選択肢です。入居者がいる限り毎月安定した家賃収入が見込める上、土地に住宅が建つことで住宅用地特例が再び適用され、固定資産税の負担が軽減されます。
初期費用は数千万円規模となるため、金融機関からの融資を前提とした計画が必要です。また、投資回収には一般的に10~15年程度かかるため、長期保有を前提にした判断が求められます。
ただし、賃貸需要が見込めるエリアであることが前提となります。駅からの距離や周辺の人口動態などを、事前に確認することが重要です。
トランクルームやコインランドリーで活用する
「アパートほど初期費用はかけられないが、駐車場より収益性を高めたい」という場合に検討したいのが、トランクルームやコインランドリーです。
トランクルームは、コンテナを設置して荷物の保管スペースを貸し出す経営方法です。不整形地や日当たりの悪い土地でも活用できる点が特徴で、アパート経営には向かない土地でも始めやすいのがメリットです。ただし、住宅用地特例の対象外であるため固定資産税の軽減効果は得られません。
コインランドリーは、単身者が多い住宅地や商業地に向いています。洗濯は生活必需行為であることからリピーターがつきやすく、収益が安定しやすい傾向があります。
更地を生かすならアパート建築も検討
更地のまま放置すれば税負担だけが続きます。アパート建築は収益化と節税を同時に実現できる選択肢の一つです。
住宅用地として使えば税負担を見直しやすい
更地にアパートを建築すると、土地が住宅用地として扱われ、住宅用地特例が適用されます。200㎡以下の部分であれば固定資産税の課税標準が評価額の1/6に軽減されるため、更地のままのときと比べて土地の税負担を抑えられます。
さらに、アパートは複数戸を持つ建物です。住宅用地特例は「1戸につき200㎡まで」の範囲(10戸のアパートの場合、2,000㎡まで)に適用されるため、戸数が多いほど軽減の対象となる面積が広がります。広い土地を持つオーナーにとっては、一戸建てよりも有利に特例を活用できるという点が、アパート建築ならではのメリットです。
家賃収入で固定資産税をカバーしやすい
アパート経営では、毎月の家賃収入が固定費を吸収する構造をつくることができます。更地のまま保有すると固定資産税は支出のみになりますが、アパートを建てて入居者がいる状態になれば、家賃収入から固定資産税・建物維持費・ローン返済を賄える収支構造を目指せます。
ただし、入居者が集まらなければ収支が成り立ちません。収益性は立地と賃貸需要によって大きく変わるため、建築前に周辺の空室率や賃料相場を確認することが不可欠です。
計画を立てやすい
建物がすでに解体されている更地は、建築計画をゼロから設計できる状態です。既存建物の制約を受けず、土地の形状や接道条件に合わせた間取り・戸数・構造を自由に検討できます。
既存建物が残っている土地では、解体のタイミングや仮住まいの調整が必要になることがありますが、更地であればすぐに建築会社との具体的な協議に入れます。計画から着工までのリードタイムを短くしやすい点は、更地ならではの強みです。
なお、アパート建築を検討する際は、1社だけの提案で判断せず、複数のハウスメーカーや建築会社からプランを取り寄せて比較することをおすすめします。建築費・間取り・収益シミュレーションは会社によって大きく異なるため、比較することで自分の土地に合った最適な計画を見つけられるでしょう。
更地にするときは固定資産税に注意
更地にすると住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税は最大6倍相当になります。空き家を壊す前に、税負担・維持コスト・今後の活用方針を整理した上で判断することが重要です。
解体後の土地を放置し続ければ税負担だけが積み上がります。売却・駐車場・トランクルームなど選択肢はさまざまですが、固定資産税を収益でカバーしながら資産を育てていくという観点では、賃貸住宅の建築が有力な選択肢の一つです。
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< この記事の監修者 >

齋藤 祐希
アカウンティングフォース税理士法人
相続部責任者/コンサルティング部マネージャー
税理士・上級相続診断士
大原簿記学校にて日商簿記検定の受験指導に従事した後、EY税理士法人に入社。上場会社・オーナー企業の税務顧問業務や株価算定業務に携わる。その後、相続税業務を中心に、5千万円~10億円規模の相続税申告や生前対策に従事。転職後は、連結納税を含む上場企業の税務申告対応や組織再編スキームの提案・申告実務に携わり、法人税務の専門性を深める。
現在はアカウンティングフォース税理士法人にて相続部の責任者を務め、相続税・贈与税・譲渡所得税の申告業務を中心に、上場企業・中小企業の税務顧問、組織再編の提案・申告対応、財務デューデリジェンス、株価算定、社内研修の実施など幅広く活動している。相続業務においては弁護士・司法書士・不動産鑑定士と協業したワンストップ対応を実現。税務通信への寄稿や保険会社主催セミナーでの登壇実績もある。


