実家の空き家は放置すると税金6倍?最新の法改正と負担を抑える対策ガイド

公開日:2026.06.25

誰も住まなくなった実家に関して、固定資産税や維持管理の負担に悩んでいる方は少なくありません。

そのまま放置していると、「管理不全空家」に指定される可能性があります。さらに、改善が見られず勧告を受けた場合、翌年度から住宅用地の特例が解除され、固定資産税の負担が大きく増える可能性があります。

本記事では、税金が上がる仕組みをはじめ、負担を抑えるための活用法や、状況に合わせた3つの売却方法を解説します。思わぬ増税を防ぎ、状況に適した空き家の活用・売却方法を見つけましょう。

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資料イメージ

空き家にかかる税金の基本

空き家を所有しているだけで、毎年「固定資産税」と「都市計画税」が発生します。これらは建物に誰も住んでいなくても課税され続けるため、放置すればするほどコストが積み重なります。

固定資産税の仕組み

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に対して課税される税金です。

税額の計算式は「固定資産税評価額(課税標準額)× 1.4%」が基本です。固定資産税評価額とは、市区町村が3年ごとに見直す不動産の価値のことで、実際の市場価格よりも低く設定されています。

ただし、建物が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用されます。これは、居住用の建物がある土地の税負担を軽くする制度です。

区分対象軽減割合
小規模住宅用地200m2以下の部分評価額の1/6
一般住宅用地200m2超の部分評価額の1/3

この特例があるため、更地よりも建物が建っている土地のほうが固定資産税は安くなります。空き家を壊さず、残しておく方が多い理由の一つがこの特例の存在です。

都市計画税の仕組み

都市計画税は、市街化区域(都市として整備を進めるエリア)内にある土地・建物に対して課税される税金です。税率は最大0.3%で、自治体ごとに異なります。

固定資産税と同様に住宅用地の特例が適用され、小規模住宅用地は評価額の1/3、一般住宅用地は2/3まで課税標準が引き下げられます。

都市計画区域外の土地には課税されませんが、多くの住宅地は対象区域に含まれるため、実家が都市部にある場合はほぼ確実に両方の税金が課されます。

特定空家・管理不全空家で税金が上がる仕組み

空き家を放置すると、行政から「特定空家」や「管理不全空家」に指定されるリスクがあります。指定されると住宅用地の特例が解除され、固定資産税が最大6倍になる可能性があるため、注意が必要です。

特定空家に指定される基準

「特定空家」とは、2015年施行の空き家対策特別措置法で定められた、特に管理が不十分な空き家のことです。

以下のいずれかに該当すると、市区町村から特定空家に指定されます。

判定区分具体例
倒壊等の危険基礎の腐食、外壁・屋根の崩落リスク
衛生上の有害ゴミの放置、害虫・害獣の発生
景観の著しい阻害落書き、雑草・樹木の異常繁茂
周辺生活環境への悪影響不法侵入・不法投棄の温床化

指定後は市区町村から「助言・指導→勧告→命令→行政代執行」の順でペナルティが強まります。

管理不全空家に指定される基準

「管理不全空家」は、2023年の法改正で新設された区分です。特定空家ほど深刻ではないものの、このまま放置すれば特定空家になり得ると判断された空き家が対象です。

具体的には、外壁の塗装剥がれ・割れ、屋根材の一部脱落、庭木の越境などが見られる状態が該当します。

特定空家と同様に、勧告を受けた段階で特例が解除され、その翌年度から固定資産税が増税されます。

住宅用地特例が解除される流れ

税金が最大6倍になるのは、「住宅用地の特例」が失われるためです。小規模住宅用地(200m2以下)を例に、特例あり・なしで比較します。

状態課税評価固定資産税
特例あり(通常の空き家)評価額×1/6低い
特例なし(勧告後)評価額最大6倍

例えば評価額1,200万円の土地の場合、特例ありなら課税標準は200万円ですが、解除されると1,200万円に跳ね上がります。税率1.4%で計算すると、年間の固定資産税が約2万8,000円から約16万8,000円に増える計算です。

2024年以降の空き家法改正の影響

2023年に改正された空き家対策特別措置法が同年12月に施行され、行政の権限が強化されました。これにより、これまでより早い段階で増税リスクが生じるようになっています。

法改正の背景と目的

改正の背景にあるのは、全国で深刻化する空き家問題です。総務省の調査によると、2023年時点の空き家数は約900万戸にのぼり、過去最多を更新しています。

旧法では「特定空家」に指定されるまで行政が強く介入できず、倒壊寸前の建物でも対応が遅れるケースが多くありました。改正では、危険になる前の段階で手を打てるよう、「管理不全空家」という新区分を設けて行政の関与を前倒しにしています。

指導・勧告の強化ポイント

改正によって変わった主なポイントは以下のとおりです。

項目改正前改正後
介入できる段階特定空家に指定後管理不全空家の段階から
特例解除のタイミング特定空家への勧告後管理不全空家への勧告後も対象
所有者への通知指定後に通知事前に指導・助言が義務化

特に注目すべきは、管理不全空家への勧告でも住宅用地の特例が解除される点です。以前であれば「まだ特定空家ではない」と安心できた状態でも、今後は増税対象になり得ます。

増税までの具体的な流れ

管理不全空家に指定されてから、実際に増税されるまでの流れは以下のとおりです。

1.自治体による現地調査・認定:市区町村の職員が空き家の状態を調査し、管理不全空家と判断します。

2.所有者への指導(助言):まず改善を促す指導が入ります。この段階では税金への影響はありません。

3.勧告:指導に応じない場合、正式な「勧告」が行われます。この勧告を受けた翌年度から住宅用地の特
例が解除され、固定資産税が上がります。

4.特定空家への格上げ・命令・代執行:さらに放置が続くと特定空家に指定され、命令・行政代執行(強制撤去)へと進みます。費用は所有者に請求されます。

    指導から勧告までの期間は自治体によって異なりますが、数カ月以内に進むケースもあります。対応が遅れると手遅れになる可能性があるため、日頃から建物の状態を把握しておくことが大切です。

    税負担を抑えるための活用法

    空き家の税負担を抑えるには、「使う」か「手放す」かの方向性を早めに決めることが重要です。主な選択肢は居住・賃貸・売却の3つで、それぞれメリットと注意点があります。

    リフォームして居住する

    シンプルな方法は、実家をリフォームして自分や家族が住むことです。居住実態があれば住宅用地の特例が継続適用されるため、固定資産税の増税リスクを避けられます。

    注意したいのは、リフォーム費用が予想以上にかかるケースが多い点です。築年数が古い物件では、断熱・耐震補強・設備の全面入れ替えが必要になることもあります。

    ただし、国や自治体によるリフォーム補助金制度を活用すれば、費用を抑えられます。例えば「長期優良住宅化リフォーム推進事業」では、耐震・省エネ改修に対して最大160万円(子育て世帯等の要件を満たせば最大210万円)の補助が受けられます。居住を検討している方は、事前に自治体の窓口で補助制度を確認しましょう。

    賃貸物件として貸し出す

    空き家を賃貸に出すと、家賃収入を得ながら管理コストを賄える点が魅力です。人が住んでいれば建物の劣化も遅くなり、管理不全空家に指定されるリスクも下がります。

    ただし、長期間空き家だった物件は、入居前のリフォームに数十万~数百万円かかることも少なくありません。

    また、賃貸経営を始めると、家賃収入は原則として不動産所得として課税対象になります。そのため、家賃収入から必要経費を差し引いた金額について確定申告が必要になる場合があります。経費として計上できる費用(修繕費・管理委託費・減価償却費など)を正しく把握し、税務処理を丁寧に行いましょう。

    売却する

    維持や活用が難しいと判断した場合、早めに売却して税負担そのものを手放す選択肢も有効です。

    空き家を保有し続けるほど、固定資産税・都市計画税の累積負担は増え続けます。さらに管理費用や修繕費も加わるため、トータルコストは年々大きくなります。

    空き家を売却して税負担をなくす方法

    維持が難しい空き家は、売却によって税負担と管理コストをまとめて解消できます。売却方法は大きく3つあり、物件の状態や希望するスピードによって最適な選択肢が異なります。

    不動産会社の仲介で売却する

    一般的な方法が、不動産会社に依頼して買い手を探す「仲介売却」です。市場価格に近い金額で売れる可能性が高く、3つの方法のなかでもっとも高値が期待できます。

    ただし、売却までに平均3~6カ月程度かかる上、成約時には仲介手数料が発生します。原則として売却価格の3%+6万円(税別)が上限ですが、2024年7月の法改正により、売却価格が800万円以下の「低廉な空き家」の場合は、最大30万円(税別)まで請求される可能性があります。

    空き家の場合、内覧前に最低限のクリーニングや簡単な補修が必要になることもあります。売り出し前に不動産会社と相談しながら、費用対効果を見極めましょう。

    買取業者に直接売却する

    不動産買取業者が物件を直接購入する方法です。仲介を介さないため、早ければ数週間~1カ月程度で現金化できます。

    買取は売却価格が低くなりやすい半面、老朽化が進んだ物件や、遠方にあって管理が難しい空き家でも買い取ってもらえる点が強みです。

    維持コストの累積や増税リスクを考えると、多少価格が下がっても早期に手放すほうが経済的に合理的な判断となる場合もあります。

    空き家バンクで売却する

    「空き家バンク」とは、自治体が運営する空き家の売買・賃貸マッチングサービスです。移住希望者やリノベーションを検討している買い手と直接つながれるため、仲介手数料を抑えられる場合があります。

    地方や郊外など、通常の市場では買い手がつきにくいエリアの物件でも成約につながるケースがある点が特徴です。一方で、登録から成約まで数カ月~1年以上かかることも多く、早期売却には向きません。

    急いでいない方や、地域に愛着があって活用してくれる買い手に譲りたい方に適した方法です。

    相続空き家の売却で使える特例

    相続した空き家を売却する際、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上いる場合は控除上限が2,000万円になります。

    相続空き家の譲渡所得3,000万円特別控除の概要

    「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、相続した空き家を売却したときの利益(譲渡所得)から、最大3,000万円を差し引ける制度です。

    例えば売却益が2,500万円であれば、特例適用後の課税対象はゼロになります。売却益が3,000万円を超える場合でも、超過分にのみ課税されるため、税負担を大きく軽減できます。

    適用期限は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。期限を過ぎると特例が使えなくなるため、相続後は早めに売却を検討しましょう。

    特別控除の要件

    特例を受けるには、以下のすべての要件を満たす必要があります。

    「以下のすべての要件」以外にも細かな要件がありますので、その点含みを持たせる表現が好ましいと思われます。

    要件内容
    被相続人の居住実態相続開始直前まで被相続人が一人で住んでいたこと
    建物の建築時期1981年5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること
    売却価格1億円以下であること
    売却時の状態耐震リフォームを行うか、建物を解体して更地で売却すること
    売却相手親族など特別な関係者への売却でないこと

    なお、2024年1月1日以降の売却分から要件が一部緩和されています。従来は売却時までに耐震改修または解体が必要でしたが、改正後は買主が譲渡翌年2月15日までに耐震改修または解体を行えば適用可能になりました。

    特別控除の注意点

    特例を受けるには、確定申告が必須です。自動的に適用されるものではないため、必ず翌年の確定申告で申請してください。

    申告の際は以下の書類が必要になります。

    ・被相続人居住用家屋等確認書(市区町村が発行)
    ・耐震基準適合証明書または建物滅失証明書
    ・売買契約書のコピーなど

    また、この特例は「マイホームの3,000万円特別控除」と併用可能ですが、同一年内に両方を適用する場合は合計で最大3,000万円が控除の限度となります。控除枠を最大限に活用したい場合は、売却する年をずらすなどの工夫が必要です。

    要件の確認や申告書類の準備は複雑なため、税理士や不動産会社に相談しながら進めることをおすすめします。

    空き家を放置すると税金が増えるため注意!

    空き家の放置は、固定資産税の増税リスクだけでなく、管理コストの累積や資産価値の低下も招きます。2023年12月の法改正により、以前より早い段階で税負担が増える可能性が生じているため、「いつかは対処しよう」という先送りは禁物です。

    まずは物件の状態と自分の状況を整理した上で、居住・賃貸・売却のいずれが最適かを早めに判断しましょう。

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    < この記事の監修者 >
    大塚 正幸

    大塚正幸税理士事務所 代表/税理士
    東京税理士会京橋支部所属

    東京国税局に約30年間勤務し、相続税・贈与税・譲渡所得税などの資産税事務を専門に従事。 千葉西税務署、江東西税務署、品川税務署、東京上野税務署をはじめ合計17ヵ所の税務署で統括国税調査官として相続税調査の最前線に立ち、申告書精査から調査事案選定まで幅広い実務を経験。 令和2年7月に退職後、同年9月に税理士事務所を開業。現在は相続税専門税理士として申告業務を中心に活動するかたわら、大手税理士法人のセカンドオピニオン業務も手がける。 令和4年4月より千葉県税理士会税務研究所研究員として、税理士向けの財産評価・相続税申告相談も担当。

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