
「相続した不動産を売却したいものの、何から手をつければいいのか」「もめずに分ける方法はあるのだろうか」など、相続した不動産について悩みを抱えている方は少なくありません。
放置すると固定資産税などの維持費が膨らむだけでなく、法改正による登記義務化の罰則リスクも伴います。しかし、正しい売却手順と節税に役立つ特例の知識があれば、手元に残る現金を最大化することが可能です。
この記事では、公平な「換価分割」や税金の仕組み、期限付きの特例まで専門家視点で分かりやすく解説します。読み終える頃には、損をせずスムーズに相続不動産を売却する道筋が見えるはずです。
いまさら聞けない!
アパート経営の疑問を解消
自己資金、利益、空室対策…
アパート経営によくある不安と解決策をまとめました。
今なら無料で、メールにてお届けします。
相続した不動産を売却する手順

相続した不動産を売却するには、決まったステップを正しい順番で進める必要があります。全体の流れをあらかじめ把握しておくことで、手続きをスムーズに進められます。
遺言書の確認と遺産分割協議を行う
相続手続きの第一歩は、遺言書の有無を確認することです。
遺言書があれば、原則としてその内容に従って手続きを進めます(相続人全員の反対がない場合)。遺言書がない場合は、「遺産分割協議」を行います。遺産分割協議とは、誰がどの財産を引き継ぐかを相続人全員で話し合い、合意する手続きのことです。
遺産分割前の共有状態で不動産を売却するには、原則として相続人全員の同意が必要です。
なお、遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」など複数の種類があります。自筆証書遺言の場合は、原則として家庭裁判所での「検認(けんにん)」という確認手続きが必要ですが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している場合は検認不要となる点も押さえておきましょう。
相続登記(名義変更)を行う
遺産分割協議が完了したら、不動産の名義を相続人に変更する「相続登記」を行います。
相続登記とは、法務局に申請して不動産の所有者を故人から相続人に書き換える手続きです。売却が目的であっても、必ず先に相続登記を済ませる必要があります。登記が完了していないと、原則として売却手続きが行えません。
2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に申請しなければ、10万円以下の過料が科される場合があります。
不動産会社に査定を依頼する
相続登記が完了したら、不動産会社に売却価格の査定を依頼します。査定とは、物件の立地・広さ・築年数などをもとに、売却できる価格を算出することです。
査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。机上査定はデータをもとにした概算で手軽に依頼できます。一方、訪問査定は担当者が実際に物件を見た上で算出するため、より精度が高くなります。
1社だけでなく、複数社に依頼して査定額を比較するのがおすすめです。
売却活動と引き渡しを行う
不動産会社と媒介契約(売却の仲介を依頼する契約)を結んだら、売却活動がスタートします。
買主が見つかり次第、売買契約を締結します。その後、残代金の受け取りと同時に物件を引き渡します。引き渡しの際には、抵当権(金融機関が担保として設定する権利)が付いている場合、その抹消登記も必要です。
売却完了後は、翌年の確定申告で譲渡所得(売却益)の申告が必要かを確認しましょう。節税できる特例も複数あるため、売却前から税理士へ相談しておくと安心です。
公平に分けるなら「換価分割」
複数の相続人で不動産を公平に分けたい場合、「換価分割」という方法が有効です。不動産を売却して現金化し、相続人全員で分配するシンプルな手法です。
換価分割のメリットとは
換価分割のメリットは、現金で公平に分けられる点です。
不動産はそのままでは「等分」が難しい財産です。例えば兄弟3人で1つの物件を相続した場合、現物のままでは誰かが住む・誰かが管理するなど、負担や利益に偏りが生じやすくなります。換価分割であれば売却益を人数や取り決めに応じて分配できるため、相続人同士のトラブルになりにくいでしょう。
また、売却後に現金として手元に残るため、相続税の納税資金に充てやすいという利点もあります。相続税は原則として現金一括払いのため、納税資金を確保しやすい換価分割は特に資産のほとんどが不動産の場合に有効な手段です。
さらに、共有名義のまま不動産を保有し続けると、将来の売却や活用に相続人全員の同意が必要になります。換価分割で早期に清算することで、将来的な権利関係のトラブルも未然に防げます。
換価分割の進め方と手順
換価分割を進めるには、まず遺産分割協議書に「不動産を売却して代金を分割する」旨を明記しなければなりません。
協議書への記載が完了したら、相続人の代表者1名が名義人として相続登記を行います。その後、代表者が不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を進めます。買主が決まり次第、売買契約の締結・引き渡しへと進む流れが一般的です。
売却が完了したら、仲介手数料や印紙税、登記費用などの諸費用を差し引いた残額を、協議書の取り決めに従って各相続人へ分配します。分配の割合は法定相続分に従うのが一般的ですが、相続人全員の合意があれば異なる割合で分配することも可能です。
代表者を立てる際の注意点
代表者が売却代金を受け取り、ほかの相続人へ分配する際にはいくつかの注意点があります。
まず重要なのが、「贈与税」のリスクです。遺産分割協議書に分配の取り決めを明記しておかないと、代表者からほかの相続人への分配が「贈与」とみなされる場合があります。
贈与とみなされると、受け取った側に贈与税が課税されてしまいます。これを防ぐために、「誰にいくら分配するか」を協議書に必ず記載しておきましょう。
次に、譲渡所得税の申告についてです。換価分割では、相続人の代表者名義で売却を行うケースが一般的ですが、譲渡所得税は各相続人がそれぞれの取得割合に応じて申告・納税する必要があります。代表者だけが申告すれば済むわけではないため、相続人全員が確定申告の必要性を認識しておきましょう。
売却にかかる税金と費用の種類

相続した不動産を売却する際には、複数の税金と費用が発生します。事前に全体像を把握しておくことで、手取り額を正確にシミュレーションできます。
印紙税と登録免許税
売却時の契約や登記手続きには、「印紙税」と「登録免許税」がかかります。どちらも比較的少額ですが、見落としがちな費用のため注意しましょう。
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。売却金額によって税額が異なり、1,000万円超~5,000万円以下の契約であれば1万円、5,000万円超~1億円以下であれば3万円が必要です(2027年3月31日までに作成される契約書に、軽減税率が適用された場合の金額です)。
登録免許税は、売却時には主に抵当権の抹消登記で発生します。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき原則1,000円です。なお、売買による所有権移転登記自体は必要ですが、その登録免許税は通常、買主側の負担として扱われるのが一般的です。
譲渡所得税と住民税
売却によって利益(譲渡所得)が出た場合、「譲渡所得税」と「住民税」が課税されます。売却時の税負担の中でも、金額が大きくなりやすい項目です。
譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算します。取得費とは購入時の費用(購入代金・仲介手数料・登記費用など)、譲渡費用とは売却時にかかった仲介手数料や測量費などのことです。
なお、取得費が不明な場合は「売却価格の5%」を概算取得費として使用できます。ただし実際の取得費が5%を上回る場合がほとんどのため、購入時の書類はできる限り保管しておきましょう。
税率は所有期間によって大きく異なります。売却した年の1月1日時点で5年以下の「短期譲渡」は所得税・復興特別所得税・住民税の合計39.63%、5年超の「長期譲渡」は合計で20.315%です。なお、相続した不動産は、被相続人(亡くなった方)が取得した日から所有期間を引き継ぎます。
仲介手数料などの諸費用
不動産会社に売却を依頼する場合、成功報酬として仲介手数料が発生します。
仲介手数料の上限は宅地建物取引業法で定められており、売却価格が400万円超の場合は「売却価格×3%+6万円+消費税」が上限です。例えば3,000万円で売却した場合、仲介手数料の上限は105万6,000円(税込)になります。
そのほかにも、土地の境界を確定するための「測量費用」(数十万円~)や、建物を解体する場合の「解体費用」(木造一戸建てで100万~300万円程度)が発生するケースもあります。売却前に概算費用を洗い出し、手取り額をシミュレーションした上で売却計画を立てることが大切です。
利用すべき3つの節税特例
相続不動産の売却において適用できる節税特例を見落とすと、本来払わなくてよい税金を負担してしまいます。代表的な3つの特例を確認しましょう。
取得費加算の特例
相続税を支払った場合に使える特例で、納付した相続税の一部を不動産の「取得費」に上乗せできる制度です。
取得費が増えると譲渡所得が減り、結果として譲渡所得税の負担を抑えられます。適用には「相続開始日の翌日から3年10カ月以内に売却する」という期限があります。相続が発生したら、早めに売却スケジュールを検討しましょう。
空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却する際、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。なお、令和6年1月1日以後の譲渡で、相続人が3人以上いる場合は控除上限が1人につき2,000万円になります。
・1981年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)であること
・相続開始直前まで被相続人が1人で居住していたこと
・売却前に耐震リフォームを行うか、建物を解体して更地にすること
・相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
2024年の法改正により、売却の翌年2月15日までに買主側で解体・耐震改修を行う場合も特例が適用可能になりました。売却先によって選択肢が広がっているため、最新の要件を税理士に確認することをおすすめします。
居住用財産の3,000万円控除
相続した不動産に相続人自身が居住していた場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。
「空き家の特別控除」と混同されやすいですが、こちらは売却する本人が実際にその家に住んでいたことが条件になります。現在住んでいる家だけでなく、以前住んでいた家でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば特例の対象となります。
なお、「取得費加算の特例」と「3,000万円控除」は原則として併用できないため、どちらの適用が有利かを事前にシミュレーションしましょう。
売却する際の注意点

相続不動産の売却では、期限や法改正に関わる注意点を見落とすと、大きな損失につながります。事前に確認しておきましょう。
特例期限は3年10カ月以内
「取得費加算の特例」には、相続開始日の翌日から3年10カ月以内という期限があります。
この期限を過ぎると特例が使えなくなり、譲渡所得税の負担が増えます。遺産分割協議や相続登記に時間がかかるケースも多いため、相続が発生したら早い段階で売却スケジュールを立てることが重要です。
また「空き家の3,000万円特別控除」にも、相続開始から3年を経過する年の12月31日という期限があります。複数の特例それぞれに異なる期限が設けられているため、税理士に相談しながら計画的に進めましょう。
放置リスクと登記義務化に注意
相続した不動産をそのまま放置すると、複数のリスクが積み重なります。
まず、固定資産税や管理費などの維持コストが毎年発生し続けます。さらに建物が老朽化して「特定空家」や「管理不全空家」に指定されて自治体から勧告を受けると、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が最大6倍になる可能性があります。
加えて、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科されます。「いつか売ろう」と先延ばしにすることで、節税特例の期限を逃すリスクも高まります。そのため、相続が発生したら早めに専門家へ相談しましょう。
空き家の固定資産税はいくら?6倍になる条件と放置リスク・活用法を解説
相続した不動産の売却は専門家に相談を
相続不動産の売却は、登記義務化・節税特例の期限・換価分割の手続きなど、複数のポイントを把握する必要があります。手続きを正しく進めることで、手元に残る現金を最大化できます。まずは信頼できる専門家に相談し、早めに動き出すことが大切です。
相続した不動産の売却や土地活用でお悩みなら、セレ コーポレーションにご相談ください。首都圏を中心に土地の有効活用から建築・賃貸管理まで、アパート経営に関わるすべてをワンストップでサポートしています。
土地活用のコンサルティングはもちろん、不動産の売買・賃貸借の仲介や、建物のリフォーム・メンテナンスまで幅広く対応しています。「相続した土地をどう生かすべきか」「売却か活用かで迷っている」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
いまさら聞けない!
アパート経営の疑問を解消
自己資金、利益、空室対策…
アパート経営によくある不安と解決策をまとめました。
今なら無料で、メールにてお届けします。
< この記事の監修者 >

植崎 紳矢
アクセス税理士・不動産鑑定士事務所 代表 / 税理士、公認会計士、不動産鑑定士
東京税理士会 中野支部所属
大学卒業後、ゴールドマンサックス証券会社東京支店に入社。 金融派生商品(デリバティブズ)の開発に従事。その後、親族の不動産会社での収益不動産の売買、日系銀行で富裕層向けの不動産関連の融資業務や、シンガポールでの会計、コンサルティング事務所立ち上げを経て、2019年に日本にて税理士登録。「不動産x相続x税金」をテーマに不動産関連の税務、コンサルティングに従事している。自らも賃貸不動産を保有しており、税務の枠を超えて不動産オーナーに寄り添った提案をすることが強み。また、シンガポール、米国での公認会計士資格も保有し、最近は国際相続業務にも注力している。


