人を包み込む優しさと、時を楽しむ心地よさをもたらしてくれる「住まい」。住まいは人が一日のうちで一番長い時間を過ごす、大切な場所です。伸び伸びと自分らしく過ごせる空間で充実した日々を積み重ねていくことは、より豊かな明日を形作ることにもつながるでしょう。
これから紹介するセレの空間設計の考え方は、2011年5月に発足したセレの社内部活「建築デザイン研究部」から始まりました。当初は部署間のコミュニケーションを円滑にし、活発に情報共有・交換ができる体制を組もうという目的で発足された同部活ですが、マーケットのニーズの変化に気づき、独特な空間設計を考える発端となりました。
単身者向けアパートのニーズを支えている、若者の部屋や暮らしに対する嗜好に変化が生まれています。そのため、収益だけを第一に考えた画一的な設計では、入居者が集まらなくなってきていました。2011年3月の全国宅地建物取引業協会連合会の調査*¹によると、人それぞれ多様な暮らし方を楽しめる「1LDKに住みたい」という入居者のニーズが最も多いのにもかかわらず、実際のマーケットにあるアパートの大半は今でもワンルーム・1Kが一般的です。
一方で部屋を提供するオーナーとしては、戸数を減らしてまで1LDKを設計し、収益を減らしたくはない。そういった市場のニーズとオーナー様の考えをマッチングさせるため、研究部のなかでコンペを開催し、空間設計のアイデアを募りました。
コンペでは「従来の箱型・長方形の部屋ではなく、他物件との差別化を図るためにわざといびつな形にしよう」や、「空間を“壁”で区切るのではなく、“生活のシーン”ごとに空間を区切ろう」といったアイデアが挙がりました。それらを集約した結果、「たべる」「ねむる」「くつろぐ」という“生活のシーン”を、部屋自体の形を大きく変えることで実現する考え方が生まれたのです。
凸凹で空間を区切る発想
「凸凹設計」という、これまでの常識を超えた発想をもう少し詳しく見てみましょう。部屋を一般的な長方形にせず、住戸間の壁をあえて凸凹させた造りにすることで、従来の直方体の空間では実現できなかった個性あふれる住まいを作り出すことができます。最大の特徴は見た目だけでなく、特殊な形状から生まれる変化に富んだ空間性です。
凸凹な空間にすることで、壁や間仕切りを設けずとも部屋の中の空間を緩やかに区切ることができます。加えて、それぞれの空間は独立性を保ちながらも、広々とした一体間を演出することが可能になりました。
この空間設計で特に重視したのは「機能性」を失わないこと。ワンルームの空間で1LDKと同じような暮らしを実現するには、キッチン・洗面所・トイレには従来のワンルーム以上の付加価値が必要で、さらにリビング・ベッドスペースも必要でした。この難しい条件をどうすれば実現できるか。それらを確認するため、木材や段ボールを利用し、会議室で実物大の模型を作成するなど、実際に部屋のイメージを体感することで細部にまでこだわり抜きました。
この凸凹設計をベースに、2011年11月には独特な空間設計を商品化した第一弾「Feel Type」が産声をあげました。
さらに、「横の動線だけでなく、縦の動線を取り入れてはどうか?」というアイデアを基に、空間を平面ではなく立体で捉えることにもチャレンジが始まります。
平面から立体で考える
物件の広さは一般的に「縦×横」の平面の間取り図で表現されます。しかし、そこに「×高さ」の考え方を取り入れるとどうなるだろう? 「縦×横×高さ」の立体の発想で空間を捉えると、住まいの可能性は尽きることがありません。床下や天井うらのデッドスペースを活用し、天井高をできるだけ高くしてゆとりをつくる。床下を活用し、別の空間を生み出す。このように縦の空間を活用することで、さまざまな創意工夫が可能となります。
結果として2013年には、空間を平面ではなく立体で捉えた「Fusion Type」が誕生します。従来のワンルームから差別化し、機能性を大幅に向上、住みやすさを追求した空間設計は、年を経るごとに磨かれています。
セレはこれらに満足することなく、社内コンペを定期的に開催し、産学連携でライフスタイルを重視した新たな空間設計を生みだしています。ゲスト(セレでは入居者のことをゲストと呼びます)の満足を一番に考えることで、オーナーの大切な資産であるアパートに付加価値を提供できると信じ、日々改善と研究を繰り返しています。
人は、これまでに見たことがないものや自分の想像をはるかに超えることに出会ったとき、心に感動を覚えるもの。セレが造る住まいの空間もそうありたいと考えています。これからも、こだわりを持つ若者の、その“上をいくこだわり”で、感動の住まいを届けていきます。
*¹:全国宅地建物取引業協会連合会「一人暮らしに関する意識調査」