金融庁が発表した「老後資金2000万円」問題をきっかけに、老後資金の重要性が再認識されてきています。そしてその老後資金を蓄えるための資産形成方法として注目されている選択肢が「不動産投資」です。キャッシュフローの確保によって毎月安定した収入を得ることができるとともに、ローン完済後は、アパートという不動産を“無借金の現物資産”という形で残すことができるからです。
しかし、ローンを組む際、ただ自身の手持ちの資金だけで購入物件の費用を全て賄おうとすると、資金が足りず優良物件を買い逃してしまう可能性もあります。また手持ち資金で購入できるアパートであっても、投資はこれから先の収益を見据えて行なうもの。全てを投資に回して手持ちがゼロになってしまい、現在の生活に支障が出てしまっては本末転倒と言わざるを得ません。
そこで有効なのが、銀行や信用金庫などの金融機関から「融資」を受けてローンを組む不動産投資。投資を開始した直後から資産規模を拡大した運用を行なえるようになったり、自己資金だけでは足りなかった、より好条件のアパートに手が届くようになったりとそのメリットは多岐にわたります。今回はそんな融資について詳しくみていきましょう。
融資によるレバレッジで収益性を向上
ローンを組んで金融機関から融資を受ける一番のメリットは、やはり自己資金以上の運用を行ない高い家賃収入を得られるようになることです。こうした小さな自己資金で大きな資産運用をすることを「レバレッジ」と呼びます。端的に説明すると、仮に1億円の不動産を購入したいときに、手持ち資金が3,000万円しかなかったとしても、レバレッジを効かせることで1億円の不動産を購入することができるということです(個人の資産状況や物件の収益性によって実際の融資額は異なります)。
アパート経営は、間取りや立地、築年数、オートロックや監視カメラといった設備・仕様の有無によって家賃の額が変動してきます。加えてアパートの戸数によっても大きく変動するため、1棟における家賃収入は千差万別。当然、家賃収入が高いアパートほど購入価格は上がり、融資を受ける額も上昇します。また、ローンの返済額と想定家賃収入額をしっかりと把握し収益性の高いアパートを選択することで、安定的な賃貸経営が可能になります。さらに、ローンを完済したあとは家賃収入がそのまま収益として自身に入ってくるため、収益性の高いアパートほど収入が大きくなるのです。
ローン完済後から「無借金の資産」として機能するアパート。新築時だけでなく、永く愛される工夫が外観や間取り、設備にも必要
対して融資のデメリットとしては、アパート経営における課題でもある「空室リスク」が挙げられます。融資には必ず返済が必要となってきますが、アパート経営では家賃収入を返済に充てることになります。しかし、アパートに空室が発生するとその分の家賃が得られなくなり、空室が増えてくることで収入額が返済額を下回ってしまう事態に発展します。つまり、融資を受けてのアパート経営では空室リスクを少しでも小さくすることが何よりも大切。そのため実績のある信頼できるアパート経営のプロに相談することが、安定的な収益を上げる一番の近道でもあるのです。
「アパートローン」と「プロパーローン」
金融機関の融資には、大きく分けて「アパートローン」と「プロパーローン」の2種類が存在します。
■アパートローン
アパートローンとは、名前のとおり不動産投資を目的とした個人に対するローンです。購入する不動産が投資用か居住用かの違いはありますが、マイホームを買う住宅ローンの類型と考えると分かりやすいかもしれません。一番の特徴は、ローンが“パッケージ化”されていること。パッケージ化されているため、審査方法や融資の可否など、審査基準が事前に分かるようになっています。ローンの金利はプロパーローンより高めに設定されており、融資額は少額となりますが、物件の収益性に基づいて審査されるため、開示されている審査基準をクリアしていれば、比較的迅速に融資を受けられる可能性があります。一方で、近年アパートローンの審査は徐々に厳しくなっており、借り手の属性情報(配偶者の有無や世帯年収、個人年収、経営状況、自己資金など)も重要な審査要素になってきている現状があります。プロパーローンよりは比重が軽いものの、物件と同じくらい個人の属性情報が見られるという点を意識しておきましょう。
■プロパーローン
プロパーローンは、金融機関がアパート経営に限らず事業全般に行なう融資です。アパートローンが個人向けだったのに対し、プロパーローンは企業の事業への融資という扱いになります。そのため低金利かつ融資額が大きく、その分戸数や設備が充実した優良物件を購入できる可能性が高まるため、より効率的なキャッシュフローの確保が期待できます。一方で融資額が大きい分審査もより厳しくなり、物件の収益性だけでなく、企業(借り手)の財務状況や経営実績、不動産評価額などが総合的に評価されるため、審査に要する期間が長くなります。
このように、個人と企業(法人)では受けられる融資の種類が変わってきます。融資を受ける際は、自身の経済状況と物件の収益性、期間や規模を鑑み、個人のままで不動産投資を続けるのか、法人化し、事業として不動産投資を行なうのかをよく検討しましょう。
規模拡大のために行なう融資
融資と聞くと普段縁の無い言葉で、身構えてしまう人もいるかもしれませんが、マイホームを買うための住宅ローンの延長線上にあるものと考えれば、意外と身近な存在であることが伝わるのではないでしょうか。不動産投資の規模を拡大し、高い収益性を確保するには、新規物件の購入や古くなったアパートの建て替えが不可欠です。
ですが、ただやみくもにアパートを乱立させればいいということではありません。将来的な経営の安定を考え、信頼できるプロのアドバイスを受けながら「事業計画書」を作成するなど、しっかりと収支をイメージして融資を受けることができれば、未来に向けてよりスムーズな資産形成を行なうことができるのではないでしょうか。
事業計画書は収支計画のほか、図面や賃料査定などをまとめた資料。賃貸事業として成功するか審査され融資額が決定する
“アパート専門メーカー”のセレ コーポレーションでは、事業エリアを首都圏(1都3県)に限定し、融資やローンをはじめとした煩わしい手続きを自社でワンストップ化することで、安定したアパート経営のサポートを行なっています。
不動産投資や土地活用にお悩みの際は、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
監修=榎本充(ファイナンシャルプランナー|アクサ生命保険株式会社)