アパートのリノベーションで空室対策はできる?費用対効果と家賃アップの考え方を解説

公開日:2026.10.02

築古アパートの空室がなかなか埋まらず、「家賃を下げるしかないのか」「建て替えは難しいが、リノベーションに本当に効果はあるのか」と悩むオーナーさまは少なくありません。

リノベーションとは、退去後に元の状態へ戻す「原状回復」とは異なり、間取り変更やデザイン性のある内装刷新によって、物件に新たな価値を加える改修のことを指します。

原状回復の延長ではなく、入居者に選ばれる設備やデザインを刷新することで、家賃維持や入居率改善につながるケースがあります。

この記事では、空室対策にリノベーションが有効とされる理由や費用対効果の考え方、実際の成功事例を解説します。

アパートリノベーションが空室対策に効く理由

空室が続く築古アパートでは、設備・間取り・物件の印象という3つの課題が重なっていることが少なくありません。リノベーションはこれらをまとめて見直せるため、家賃を大きく下げずに募集条件の改善を図る手段になり得ます。

築古アパートは設備と間取りで比較されやすい

入居希望者の多くは、ポータルサイトで複数の物件を横並びで比較しながら選びます。その際に最初に確認される項目の一つが、設備スペックや間取りです。

築20年以上の単身者向け物件では、浴室乾燥機・独立洗面台・追いだき機能が未設置のケースが多く、同エリアの築浅物件と並べるとひと目で見劣りします。

間取りも同様です。1980~90年代に建てられた物件に多いDK(ダイニングキッチンの略。キッチンと食事スペースが一体の間取り)型は、居室面積が確保しにくく閉鎖的な印象を与えがちです。単身者やカップル中心の現代の賃貸需要とはズレが生じており、選ばれにくい点は否めません。

設備や間取りの見劣りは、内見候補に入りにくい状況を招きます。家賃を下げても問い合わせが増えにくい場合は、条件検索の段階で候補から外れている可能性があります。

原状回復だけでは物件の印象が変わりにくい

原状回復は、退去後に損耗箇所を元の状態に戻すための修繕です。物件の競争力を高める施策とは性質が異なります。

壁紙を張り替えて床を補修しても、設備のグレードや間取りの構造は変わらないためです。同じ仕様のクロスを張り替えるだけでは、ポータルサイトに掲載する写真に映る「物件の古さ」は解消されません。同じ工事内容でも、コンセプトやデザイン性を伴わなければ「リノベーション」としての効果にはつながりません。

内見者は物件を見た目で判断する傾向があります。メンテナンスが行き届いていない印象を与えると、設備や家賃の条件がよくても敬遠されることがあります。原状回復後の部屋は「きれいになった古い部屋」にすぎず、競合との差別化にはなりにくいでしょう。

リノベーションで物件価値を高める

設備・内装・間取りを見直したリノベーション済み物件は、同エリアの競合物件と比べて選ばれやすくなる可能性があります。その結果、築年数が経過していても、物件価値に見合った家賃水準で入居者が決まる可能性があります。

実際には、和室を洋室へ変更したことで募集状況が改善した事例や、アクセントクロスの張り替えと外壁・床材改修を組み合わせて空室解消につながった事例も見られます。

リノベーションへの初期投資は必要ですが、家賃水準を維持・改善できれば投資回収の見通しも立てやすくなります。

家賃アップにつながるリノベーション

家賃アップを実現するリノベーションは、見た目をきれいにするだけが目的ではありません。入居者が「この部屋に住みたい」と感じる理由を、設備・間取り・デザインでつくることが本質です。

間取りを今の暮らしに合わせる

間取り変更は、ターゲット層を変えながら収益を改善できる施策です。築古アパートに多い2DKや2Kを1LDKに変更することで、家賃をアップしつつ成約率が改善するケースがあります。

1980~90年代に多かった2DK型は、キッチンと食事スペースが分かれている一方で、居室面積を確保しにくい構造になりやすい点が特徴です。壁の配置を見直して1LDKに変更すると、リビング空間が広がり、現代のライフスタイルに合った使い勝手に近づきます。

特に木造アパートは、鉄筋コンクリート造に比べて間取り変更の自由度が高い点もメリットです。ただし、筋交い(建物の骨組みを補強する斜め材)や耐力壁の位置によっては撤去できない壁もあるため、施工前に建築士や施工会社による構造確認が必要です。

水回りをまとめて刷新する

水回り(キッチン・浴室・トイレ・洗面台)の刷新は、入居者の生活満足度にもっとも直結する施策です。古い設備はそれだけで物件全体の印象を下げ、ポータルサイトの検索段階ではじかれる原因になります。

水回り設備の耐用年数は約10~20年とされており、それを超えた設備は故障リスクが高まる上、見た目の古さも際立つ点は否めません。「水回り3点セット」と呼ばれる浴室・キッチン・洗面台の一括施工プランでは約60~150万円で対応できるケースもあり、個別発注より費用を抑えられます。

特に3点ユニットバス(浴室・トイレ・洗面が一体化した設備)の物件は、ポータルサイトの条件検索で除外されやすい傾向があります。トイレを分離するバス・トイレ別への変更は、費用対効果が高い施策として広く知られています。

内装デザインを整える

内装デザインの整備は、内見時の第一印象を左右します。短時間で印象判断されやすいため、清潔感と統一感のある空間づくりが成約率の改善につながることがあります。

効果的なのは、コンセプトを1つ決めて床材・壁紙・建具の素材と色調をそろえることです。「ナチュラル」「カフェ風」「インダストリアル」などテーマを設定すると写真映えが向上し、ポータルサイトで内見候補に残りやすくなります。

ほかにも、アクセントクロス(壁面の一部だけ異なる色・柄の壁紙を用いる手法)は、比較的低コストで部屋の印象を変えられる施策です。

外観と共用部を見直す

外観と共用部は、内見前に入居希望者が最初に目にする場所です。内部をいくら刷新しても外観が古びていては、内見の申し込み自体が来にくくなります。

汚れの目立たない色への塗り替えや配色変更だけでも、建物全体の印象は大きく変わります。共用廊下・階段の補修、照明のLED化、宅配ボックスの設置なども、物件の管理状態のよさをアピールする手段です。

アパートリノベーションの費用

費用は工事の範囲と建物の状態によって大きく変わります。主要項目ごとの目安を把握し、どこに投資するかを絞り、費用対効果を高めましょう。

工事項目費用目安(木造を想定)
内装(壁紙・床)15~80万円(1室あたり)
水回り(3点セット)60~150万円(1室あたり)
間取り変更80~400万円(1室あたり)
外壁塗装150~300万円(一棟)
一棟リノベーション700~1,500万円以上

※建物の規模や構造、劣化状況、補修範囲によって費用が大きく上振れする可能性があります。

内装と水回り

内装の張り替え費用は、退去後の原状回復として行うか、デザイン性を加えたリノベーションとして行うかで幅があります。同仕様のクロス・床材に戻す原状回復であれば、材工込みで15~30万円程度が目安です。一方、アクセントクロスの使用や、素材・色調をコンセプトに沿って選定するリノベーションであれば、同じ面積でも20~40万円程度になることがあります

水回りは個別に交換するより、まとめて施工するほうが費用を抑えやすくなります。キッチン・浴室・洗面台の「3点セット」一括施工では約60~150万円で対応できるケースがあります。個別の目安はキッチンが50~100万円、浴室(ユニットバス交換)が50~150万円、洗面台が20~30万円、トイレが10~20万円です。

水回りの耐用年数は約10~20年とされており、それを超えた設備は故障リスクが高まり、見た目の劣化も目立つようになります。退去のタイミングで内装と水回りを同時に施工すると、工事費を抑えられる上、空室期間の短縮にもつながります。

間取り変更

間取り変更は、壁の撤去・新設・建具の移動などを伴うため、内装工事より費用が高めです。2DKを1LDKに変更する場合は80万円~が目安で、配管の移動が必要な場合は150万~400万円程度になることもあります。

費用を左右する主な要因は、撤去する壁の構造と水回り移動の有無です。耐力壁(建物の荷重を支える構造上重要な壁)は原則撤去できないため、希望の間取りに変更できないケースもあります。施工前に建築士による構造診断を行い、変更可能な範囲を確認することが重要です。

外壁・共用部

外壁塗装は2階建てアパートで約150~300万円が目安です。外壁の状態が悪い場合はひび割れ補修や下地処理が加わり、費用はさらに上がります。

共用部の整備は外壁塗装と同時に行うのが効率的です。共用廊下・階段の鉄部塗装や手すり補修、照明のLED化を並行して進めると、足場費用の二重発生を避けられます。

宅配ボックスの設置は、1台10~30万円程度が目安です(サイズにもよる)。これにより、入居者ニーズに対応でき、空室の発生を抑えられるでしょう。

一棟リノベーション

一棟まとめてリノベーションする場合、全室の内装・水回り・共用部を一括で刷新します。4戸程度のアパートで700~1,500万円以上が目安です。

例えばキッチン70万円・浴室やトイレ等80万円・内装30万円を4戸に施工すると、材工費だけで720万円になります。外壁塗装や共用部工事が加わると1,000万円を超えるケースも珍しくありません。

一棟リノベーションは新築や建て替えに比べてコストを抑えられる一方、投資額が大きいぶん、エリアの賃貸需要と家賃相場を事前に確認した上で実施判断をすることが重要です。

※費用は建物の規模や構造などにより異なります。

費用対効果を高める判断軸

リノベーションは工事としてではなく、投資として判断することが重要です。「何のために、いくらまで工事するか」を明確にしないまま進めると、費用を回収できないリスクが高まります。

狙う入居者を決めて工事する

リノベーション内容は、「誰に住んでもらうか」を先に決めてから考えるという順番が大事です。ターゲットを決めずに工事すると、費用をかけても「誰にも刺さらない物件」になりかねません。

例えば単身女性を狙うなら、バス・トイレ別・オートロック・独立洗面台の優先度が高くなります。子育てファミリー向けなら、対面キッチンと収納量が重要な判断軸です。

家賃設定は相場から決める

リノベーション後の家賃は、周辺の競合物件の相場から逆算して設定します。「工事費を回収したいから家賃を上げる」という発想では、相場から乖離して空室が長引く結果につながりかねません。

まず同エリア・同間取りのリノベーション済み物件の家賃水準を確認します。設定できる家賃の上限が決まれば、かけられる工事費の上限も自ずと決まります。「家賃相場から工事費の上限を決める」という逆算の考え方が、過剰投資を防ぐ基本です。

工事費の回収年数を試算する

回収年数は「工事費 ÷ 月額家賃アップ額」で試算でき、投資判断の目安になります。実際には、空室期間の短縮や退去率の改善も含めて、無理のない回収計画になっているかを確認することが重要です。

例えば工事費150万円で家賃が月1.5万円アップした場合、「150万円 ÷ 1.5万円 = 100カ月(約8年4カ月)」で回収できる計算です。家賃アップ額だけでなく、空室期間の短縮や退去率の低下による収益改善効果も合算して試算すると、より実態に近い判断ができます。

建て替えが向くケースもある

すべての築古アパートにリノベーションが有効とは限らず、建て替えを検討すべき状況もあります。

特に注意したいのは、1981年5月31日以前の旧耐震基準で建てられた物件です。耐震補強が必要になると工事費が大きく膨らむ可能性があり、建物の状態によってはリノベーションより建て替えのほうが合理的な場合もあります。

建て替えかリノベーションかは、工事費の試算と建物の診断結果を照らし合わせて判断しましょう。建築士の診断を受けた上で、収支が合う選択肢を選ぶことが重要です。

デザインリノベの成功事例

実際の事例を見ると、デザインリノベーションが空室改善と収益向上の両方につながることが分かります。ここでは実際の事例を紹介しつつ、成功要因を整理します。

内装刷新で反響を伸ばした事例

大学キャンパス近くにある物件で、空室率が40%に達していました。内装の古さが原因で学生層からの反響が取れておらず、家賃を下げても問い合わせが増えない状況です。

アクセントクロスへの張り替えを中心に、外壁工事と床材の張り替えを実施しました。部屋全体にデザインテーマを設けて統一感を出し、ポータルサイトで写真映えする空間に仕上げています。

結果として学生からの問い合わせが増加し、空室の改善につながりました。写真で伝わる印象がよくなったことで問い合わせが増え、内見から成約へ進みやすくなったことが主な要因と考えられます。

間取り変更で空室を埋めた事例

築35年の和室2Kアパートで、プライバシーが確保しにくい間取りがネックとなり空室が続いていました。仲介会社へのヒアリングでも「和室と間取りの使いにくさ」が敬遠される理由として挙がっていた物件です。

フローリングの洋室1LDKへの全面変更と水回り・内装の刷新を実施しました。カップルにも単身者にも対応できる間取りに変えたことで、訴求できるターゲット層が広がっています。

リノベーション後は、賃料条件を見直しても成約につながった事例です。「和室」という敬遠要因が薄れたことで問い合わせが増え、内見率の改善につながったと考えられます。

外観改善で印象を変えた事例

都内の築古アパートで、内装だけを改修してきたものの外観の古さが影響し、周辺物件との比較で選ばれにくい状態が続いていました。

外壁を白ベースに黒のアクセントを加えたモダンな配色に塗り替え、エントランスに宅配ボックスを新設しました。インターホンの交換や共用部の整備も同時に行い、物件全体の管理状態の印象を刷新しています。

外装まで含めて見直したことで、募集状況の改善と賃料水準の見直しにつながった事例です。

効果的なリノベーションで空室対策を

空室が続くアパートには、設備・間取り・印象という複合的な課題が絡んでいます。原状回復だけでは解決できない問題を、リノベーションはまとめて見直せます。

狙う入居者を決め、相場から家賃を逆算し、回収年数を試算した上で工事内容を絞ることが、費用対効果を高める基本です。一方、建物の老朽化が深刻な場合や収益改善の見通しが立ちにくい場合は、リノベーションにとどまらず建て替えも視野に入れて判断したほうがよいでしょう。

アパートの空室対策や建て替えを検討している方は、デザインアパートの企画・建築から賃貸管理・リフォームまでを一貫して手がける株式会社セレ コーポレーションにご相談ください。


< この記事の監修者 >

飯田 高士

税理士法人ファルベ 
代表社員・税理士

2018年、税理士法人ファルベを設立し代表社員に就任。
現在では年間100件以上の不動産オーナーさま(個人・法人)の税務顧問を務め、決算対策から法人化を含む承継対策、税務調査立会に携わる。
また不動産コンサルティングファームの株式会社ファルべ、株式会社ファルベ不動産とファルベグループを形成し、事業承継対策としての物件の取得・売却・組替えについても組織的な提案を行っている。

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