【初心者向け】家賃収入の確定申告ガイド!経費一覧と青色申告のメリットを解説

公開日:2026.05.28

「確定申告はいくらから必要?」「経費はどこまで認められる?」など、家賃収入を得た年の確定申告へ向け、疑問や不安を感じていませんか? 会社員でも、不動産所得(利益)が年間20万円を超えると申告義務が発生します。

しかし、確定申告は単なる義務ではありません。漏れなく経費を計上し、青色申告を活用することで、税金を抑えて手残りを最大化できる機会でもあります。

本記事では、申告義務の判定基準から経費の判断基準、青色申告のメリットまでを詳しく解説します。正しい税務知識を身につけ、リスクを回避しながら賢い賃貸経営を実現しましょう。

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家賃収入で確定申告が必要な方

確定申告の義務が発生するかどうかは、家賃収入の「金額」ではなく「所得(収入から経費を引いた利益)」で判断します。まずは、この基準をしっかり押さえておきましょう。

会社員は所得20万円超

会社員の場合、給与以外の「不動産所得」が年間20万円を超えると、確定申告の義務が生じます。

不動産所得とは、家賃収入から必要経費を差し引いた後の「利益」のことです。例えば年間の家賃収入が120万円でも、管理費・修繕費・減価償却費などの経費が105万円あれば、所得は15万円となり、所得税については申告不要です。

収入の大きさだけで判断すると誤りが生じやすいため、経費の正確な把握が重要になります。

赤字は損益通算で還付

不動産所得が赤字になった場合は、確定申告をすることで「損益通算」を活用できます。損益通算とは、不動産所得の赤字を給与所得や事業所得などと合算し、課税対象となる所得全体を圧縮できる制度です。

赤字の年に申告すれば、課税所得を減らし、所得税の一部が還付される可能性があります。赤字でも、申告することに意味があると覚えておきましょう。

住民税申告は20万円以下も必要

所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。所得税と住民税は別々の制度で管理されており、住民税には「20万円以下は申告不要」というルールがありません。

確定申告を行った場合は、その情報が自動的に市区町村へ共有されるため、住民税の手続きを二重で行う必要はありません。一方、確定申告をしない場合は、お住まいの市区町村の窓口で住民税の申告手続きを忘れずに行いましょう。

不動産所得の計算で経費になるもの

経費を正しく計上するほど、課税対象となる不動産所得を圧縮でき、納税額を抑えられます。計上できる経費の種類と判断基準を、項目ごとに整理しておきましょう。

税金や管理費などの固定費

賃貸経営に直接関わる税金や委託費などは、原則として全額が経費として認められます。

固定資産税と損害保険料

賃貸物件にかかる固定資産税・都市計画税は、納税通知書を受け取った日(固定資産税の金額が確定した日)にその全額を経費に計上します。他にも年4回の納期の開始日や実際の納付した日でも経費として計上できます。

損害保険料(火災保険・地震保険など)も経費になります。ただし、複数年分を一括で支払った場合は、その年に対応する分だけを経費として計上します。残りは翌年以降に繰り越す「前払費用」として処理する点を押さえておきましょう。

管理委託費や仲介手数料

管理会社へ支払う管理委託費は、全額が経費として認められます。一般的な相場は、家賃収入の3〜5%程度です。

入居者募集のために不動産会社へ支払う仲介手数料も、経費に計上できます。退去後のリフォーム・クリーニング費用も同様です。

【関連記事】賃貸住宅の管理委託-そのメリット・デメリットと注意点を解説

建物の維持と減価償却費

建物の維持にかかるコストは、「修繕費」と「減価償却費」に分かれます。この2つの仕組みを正しく理解することが、経費計上のポイントです。

修繕費と資本的支出

修繕にかかった費用は、内容によって経費の扱いが変わります。「現状維持・原状回復」を目的とした工事は「修繕費」として全額をその年の経費にできます。

一方、建物の価値や耐久性を高める工事は「資本的支出」として資産計上し、数年に分けて経費にする減価償却の対象となります。判断に迷いやすい代表的な支出は、以下のとおりです。

工事の内容分類経費の扱い
壁紙の張り替え・塗装修繕費全額その年に計上
雨漏りの補修(耐久性を高めないもの)修繕費全額その年に計上
エレベーターの新設資本的支出減価償却で分割計上
耐震補強工事資本的支出減価償却で分割計上

なお、一つの工事が20万円未満である場合や、3年以内の周期で行われるような修理や改良であれば修繕費として処理できる特例があります。金額が大きな工事ほど、分類を慎重に判断しましょう。

減価償却費の計算方法

建物は時間の経過とともに価値が減っていくため、取得費用を一度に経費にするのではなく、耐用年数にわたって毎年少しずつ計上します。これが「減価償却費」です。

計算方法は「取得価額×定額法の償却率」で、構造によって法定耐用年数が異なります。

構造法定耐用年数定額法の償却率
木造22年0.046
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下)19年0.053
軽量鉄骨造(厚さ3mm~4mm以下)27年0.038
重量鉄骨造(4mm超)34年0.030
RC(鉄筋コンクリート)造47年0.022

※鉄骨造は実務上「軽量鉄骨」「重量鉄骨」と呼ばれることがありますが、税務上は骨格材の厚みによって区分されます。

中古物件を取得した場合は、実際の使用可能期間を合理的に見積もる方法、または簡便法で残存耐用年数を算出します。減価償却費の計上により、高い節税効果を得られるケースは少なくありません。

そのほかの経費計上ルール

直接的な維持費以外にも、条件次第で経費に算入できる支出があります。

借入金の利子部分

アパートローンなどの借入金がある場合、毎月の返済額のうち「利息部分」だけを経費に計上できます。

なお、元本の返済分は経費になりません。金融機関から届く返済予定表で、利息と元本の内訳を年間合計で確認しましょう。
※借入金の利子のうち、土地の取得に対応する部分については、不動産所得が赤字となる場合には損益通算の対象とならず、他の所得と相殺できないケースがあります。

交通費と通信費の家事按分

物件の確認や管理会社との打ち合わせにかかった交通費は経費になります。スマートフォンの通信費や自家用車のガソリン代など、プライベートと共用している費用は「家事按分(かじあんぶん)」で賃貸経営に使った割合だけを経費にします。

按分の割合は、実態に基づいた合理的な根拠が必要です。税務調査でも説明できるよう、利用記録や走行距離の記録を残しておくと安心です。

不動産所得の計算で経費にならないもの

経費として計上できないものを誤って申告すると、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。初心者が間違えやすい2つのポイントを押さえておきましょう。

ローン返済の元本部分

アパートローンの返済額のうち、「元本部分」は経費になりません。元本の返済は、借りたお金を返しているだけで、支出が発生していても、税務上は「負債の減少」として扱われるため、所得の計算には影響しません。

ここで注意が必要なのが、キャッシュフローと所得のズレです。毎月の返済額が大きくても、経費になるのは利息部分だけです。そのため「手元にお金が残っていないのに、所得税が発生する」という状況が起こり得ます。賃貸経営では、帳簿上の利益と実際の手残りは別物と理解しておくことが大切です。

私的な生活費の支出

賃貸経営とは無関係な個人的な支出は、経費として認められません。例えば、友人との食事代や家族旅行の費用などを「打ち合わせ費」「視察費」として計上することは、税務調査で否認されます。

仮に経費として申告しても、税務調査で否認されれば、追加の税金(追徴課税)と加算税や延滞税が発生します。経費計上できるのは「賃貸経営のために支出した費用」に限られるという原則を守ることが重要です。

青色申告の大きなメリット

確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。青色申告を選ぶと節税効果が大きく、賃貸経営の手残りを増やせます。

最大65万円の特別控除

青色申告の魅力は、不動産所得から最大65万円を差し引ける「青色申告特別控除」です。課税所得が65万円分圧縮されるため、所得税と住民税の両方で節税効果が得られます。

65万円控除を受けるには、複式簿記(ふくしきぼき)による記帳と、e-Tax(電子申告)での申告が条件です。複式簿記とは、一つの取引を借方・貸方の2方向で記録する帳簿のつけ方で、会計ソフトを使えば自動で対応できます。

e-Taxを使わず書面で申告した場合は、控除額が55万円に下がります。また、簡易的な帳簿(簡易簿記)のみの場合は10万円控除にとどまるため、節税効果が小さくなる点に注意が必要です。

※令和9年分の確定申告から書面での申告は、55万円控除ではなく、たとえ複式簿記でも簡易簿記でも10万円控除となります。(55万円控除は廃止)

ただ、この10万円控除の制度も、2年前の家賃収入が1,000万円超の方は、そもそも控除を受けることができません。

なお、不動産所得で55万円・65万円の控除を受けるには、賃貸経営が「事業的規模(おおむね5棟10室以上)」であることが条件です。これに満たない場合は、複式簿記を行っても控除額は最大10万円となります。

赤字を3年間繰り越せる

青色申告では、不動産所得が赤字になった年の損失を、翌年以降3年間にわたって繰り越せます。これを「純損失の繰越控除」といいます。白色申告では、損益通算はできても翌年への繰り越しはできないため、この点は青色申告の大きな優位性です。

例えば、ある年に100万円の赤字が出た場合、翌年以降に黒字が出た際にその赤字と相殺できます。大規模修繕や空室が重なった年でも、将来の税負担を減らせる可能性があります。

家族への給与を経費にする

配偶者や親族が賃貸経営の業務を手伝っている場合、「青色事業専従者給与」として支払った給与を全額経費にできます。白色申告では、配偶者86万円・15歳以上のその他の親族50万円という固定の控除額しか認められません。しかし、青色申告では実態に応じた給与額を設定できます。

ただし、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出する必要があります。また、専従者は基本的にその賃貸業務に「専ら従事」していることが条件のため、ほかに本業がある場合は認められないケースがあります。

なお、青色申告や白色申告のいずれにおいても、賃貸経営が「事業的規模」であることが条件となります。

確定申告の流れと必要書類

確定申告は毎年2月16日〜3月15日が申告期間です。流れと必要書類を事前に把握しておくと、期限直前に慌てずに済みます。

必要書類と領収書の整理

確定申告に向けて、年間を通じて以下の書類を集めておきましょう。

書類の種類内容・用途
源泉徴収票給与所得の確認(会社員の場合)
賃貸借契約書賃料・契約条件の証明
家賃収入の入金記録(レントロール等)通帳や振込明細など
各種領収書・請求書経費の証拠書類
固定資産税の納付書税額の確認
ローンの返済予定表利息部分の経費計上に使用
建物の取得価額が分かる書類減価償却費の計算に使用

領収書は「日付・金額・用途・支払先」が記載されたものを保管します。レシートも有効ですが、用途が不明瞭なものは別途メモを添えておくと安心です。保存期間は原則7年間です。

決算書と申告書の作成

必要書類がそろったら、青色申告決算書と確定申告書を作成します。

青色申告決算書には、年間の収入・経費・減価償却などの明細をすべて記入しましょう。会計ソフトを使うと、日々の取引を入力するだけで自動的に決算書が作成されるため、手間を省けます。

決算書が完成したら、その数字をもとに確定申告書を作成します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の指示に従って入力するだけで申告書が完成します。

e-Taxでの提出と期限

青色申告特別控除の65万円を受けるには、e-Tax(国税電子申告・納税システム)での電子申告が必須です。

e-Taxの利用にはマイナンバーカードとICカードリーダー、またはスマートフォンが必要です。一度セットアップすれば、翌年以降はスムーズに手続きできます。

申告・納税の期限はどちらも3月15日です。期限を過ぎてから申告をすると期限後申告と言われ、無申告加算税や延滞税が発生するため、余裕を持って2月中には書類を整えておくことをおすすめします。

期限後申告のペナルティとリスク

確定申告の期限(3月15日)を過ぎてから申告書を提出すると、本来の税額に加えて追加の税金が発生します。経済的な負担だけでなく、融資にも影響するリスクを理解しておきましょう。

無申告加算税と延滞税

確定申告の期限までに申告しなかった場合、「無申告加算税」が課されます。税率は申告のタイミングと納税額によって異なります。

申告のタイミング納税額50万円以下50万円超〜300万円以下300万円超
税務調査前、かつ、税務署からの事前通知前に自主的に申告5%5%5%
税務調査前、かつ、税務調査の事前通知後に申告10%15%25%
税務調査後に申告15%20%30%

※令和5年分(令和6年1月1日以降に期限到来するもの)以降に適用される税率

さらに、延滞税の税率は令和8年時点で、法定納期限から2カ月以内が年2.8%、2カ月を超えると年9.1%です(延滞税の割合は年ごとに見直されます)。申告が遅れるほど、延滞税の負担も積み上がっていく点に注意しましょう。

信用低下と融資審査への影響

無申告が税務調査で発覚すると、金融機関との信頼関係に傷がつきます。税務上のペナルティを受けた事実が知られれば、コンプライアンスの観点から金融機関からの信用低下を招くおそれがあります。

追加物件の購入や大規模修繕の際に融資を断られると、賃貸経営の拡大や維持が難しくなります。税務コンプライアンスを守ることは、経営上の信用を守ることでもあると意識しておきましょう。

家賃収入を得た翌年は正しく確定申告しよう

家賃収入の確定申告で大切なのは、「所得で判定する」「経費を漏れなく計上する」「青色申告を活用する」の3点です。正しい知識を持って申告に臨むことが、賃貸経営をする上で欠かせません。

ただし、経費の判断や帳簿の作成を一人で進めるのは、慣れないうちは時間もかかります。申告の手間を減らしながら賃貸経営に集中したいという方は、プロへの相談も選択肢の一つです。

セレ コーポレーションは、アパートの企画・設計・施工から、入居者募集・家賃回収・建物管理までをワンストップで提供しています。土地の有効活用や経営計画の相談など、賃貸経営でお悩みのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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< この記事の監修者 >
齋藤 祐希

アカウンティングフォース税理士法人
相続部責任者/コンサルティング部マネージャー
税理士・上級相続診断士

大原簿記学校にて日商簿記検定の受験指導に従事した後、EY税理士法人に入社。上場会社・オーナー企業の税務顧問業務や株価算定業務に携わる。その後、相続税業務を中心に、5千万円~10億円規模の相続税申告や生前対策に従事。転職後は、連結納税を含む上場企業の税務申告対応や組織再編スキームの提案・申告実務に携わり、法人税務の専門性を深める。
現在はアカウンティングフォース税理士法人にて相続部の責任者を務め、相続税・贈与税・譲渡所得税の申告業務を中心に、上場企業・中小企業の税務顧問、組織再編の提案・申告対応、財務デューデリジェンス、株価算定、社内研修の実施など幅広く活動している。相続業務においては弁護士・司法書士・不動産鑑定士と協業したワンストップ対応を実現。税務通信への寄稿や保険会社主催セミナーでの登壇実績もある。

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