貸家建付地とは?相続税評価の仕組みとアパート経営による節税活用を解説

公開日:2026.07.28 / 更新日:2026.07.29

「貸家建付地って、相続税の計算でどう扱われるのだろうか」「自分の土地をアパートにしたら本当に節税になるのだろうか」このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

相続税対策として注目される貸家建付地ですが、評価の仕組みや計算方法を正しく理解しないと、想定どおりの節税効果は得られません。

本記事では、貸家建付地の基本から評価額の計算方法、小規模宅地等の特例との併用、注意点まで分かりやすく解説します。

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資料イメージ

貸家建付地とは

貸家建付地(かしやたてつけち)とは、自分が所有する土地の上に建物を建て、その建物を第三者に賃貸している状態の土地です。相続税の評価上、自己使用の土地(自用地)より評価額が低くなるため、節税対策として広く活用されています。

貸家建付地の定義と成立要件

貸家建付地として税務上認められるには、以下の2つの要件をどちらも満たす必要があります。

① 土地の上に建物が存在する

アパートや借家など、第三者に賃貸している建物が存在することが前提となります。なお、同一敷地内にある駐車場についても、入居者専用として利用されている場合は、貸家建付地に該当する可能性が高いと考えられます。

 一方で、同じ敷地内であっても、外部の利用者に貸している駐車場や時間貸し駐車場、あるいは工作などで明確に区分されている部分については、更地として評価される可能性が高くなります。

② 建物が有償で第三者に継続的に賃貸されている

賃貸借契約が存在し、相場に見合った賃料を受け取っている実態が必要です。

親族への無償貸し(使用貸借)や著しく低い賃料での貸し出しは、借家権が生じないため貸家建付地として認められません。この場合、土地は自用地として評価されます。

また、社宅など借地借家法の適用がない建物の敷地も、原則として対象外です。

自用地・貸宅地との比較

貸家建付地を正しく理解する上で、「自用地」と「貸宅地」との違いを押さえておきましょう。

種類内容相続税評価の特徴
自用地自分が自由に使える土地(自宅の敷地など)もっとも高い(評価の基準)
貸宅地第三者に貸し、借主が建物を建てている土地借地権割合分が控除。3区分でもっとも低い
貸家建付地自分の土地に建物を建て、第三者に賃貸している借地権割合×借家権割合×賃貸割合分が控除

3種類の中で、貸家建付地の評価額は自用地より低く、貸宅地より高くなります。

評価額が下がる理由は、入居者に「借家権」(建物を借りて使用する権利)が生じ、オーナーが土地・建物を自由に処分しにくくなるためです。売却時に立退料が必要になるケースもあり、その利用制約が評価額の引き下げに反映される仕組みになっています。

貸家建付地の評価額の計算方法

貸家建付地の相続税評価額は、「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で算出します。都市部の満室アパートであれば、自用地に比べておおむね2割程度の評価減になります。

計算式と4つの構成要素

計算式に登場する4つの要素を整理しましょう。

構成要素内容調べ方
自用地評価額更地として評価した場合の土地の価額路線価方式または倍率方式で算出
借地権割合土地評価額に占める借地権の割合国税庁「路線価図・評価倍率表」で確認
借家権割合建物を借りている入居者の権利が占める割合全国一律30%(固定)
賃貸割合各部屋の床面積合計に占める賃貸中の床面積の割合相続開始時点の入居状況で算出

この計算式のロジックは、「オーナーが自由に使えない部分(借地権のうち借家権相当分)を差し引く」という考え方に基づいています。

仮に借地権割合60%・借家権割合30%・満室(賃貸割合100%)の場合、評価減は18%(60%×30%×100%)です。借地権割合が高い都市部ほど、評価減の効果が大きくなります。

自用地評価額の求め方(路線価方式・倍率方式)

自用地評価額の算出方法は、土地の所在地域によって2種類あります。

路線価方式

路線価方式は、市街地など路線価が設定されているエリアで用いる方法です。

自用地評価額 = 路線価(円/㎡)× 各種補正率 × 地積(㎡)

路線価は国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で毎年7月1日頃に公表されます。なお実際の計算では、奥行価格補正率や側方路線影響加算率など複数の補正率も反映されます。

倍率方式

路線価が設定されていない農村部・郊外などで適用されます。

自用地評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

倍率は路線価図と同じページの「評価倍率表」で確認可能です。

借地権割合・借家権割合・賃貸割合の調べ方

借地権割合は、国税庁の路線価図に付されたA~Gの記号で確認します。

記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

例えば路線価図に「520C」とあれば、単位は千円となっているため路線価52万円/㎡、借地権割合70%を意味します。東京都内の住宅地はCの70%とDの60%が多い傾向にあります。借家権割合は全国一律30%に定められており、地域による差はありません。

賃貸割合は「賃貸中の各独立部分の床面積合計 ÷ 建物全体の各独立部分の床面積合計」で算出します。

例えば10室・各室面積同一のアパートで8室に入居者がいれば、賃貸割合は80%です。

なお、相続開始時に空室があっても、以下の5つの要件より総合的に判断され、偶然空室であったことを立証できれば、「一時的な空室」であるとして賃貸中とみなせます。

・継続的に賃貸されてきた実績がある
・退去後速やかに募集を開始している
・空室の期間に、賃貸以外の用途で使っていない
・空室期間が課税時期(相続発生時)の前後1カ月程度など、一時的である
・相続後の賃貸が一時的でない

空室の扱いは評価額に直結するため、要件の確認が重要です。

【計算例】貸家建付地でどれだけ評価額が下がるか

実際の数値で計算すると、評価減の効果がより具体的に把握できます。ここでは満室時と空室ありの2パターンで比較し、賃貸割合が評価額にどう影響するかを確認しましょう。

満室の場合の計算例

以下の条件で、評価減の効果をシミュレーションします。

条件数値
自用地評価額5000万円
借地権割合60%(D地区)
借家権割合30%(全国一律)
賃貸割合100%(満室)

具体的な計算式は、以下のとおりです。

5,000万円 ×(1 - 60% × 30% × 100%)= 5,000万円 ×(1 - 0.18)= 4,100万円

自用地評価額5,000万円に対して、貸家建付地の評価額は4,100万円です。差額900万円、評価減率は18%となります。

相続税の税率が30%の方であれば、この900万円の評価減により、概算で270万円程度の相続税圧縮効果が生じる計算になります(ほかの控除等は考慮しない概算)。

空室がある場合の計算例

同じ条件で、賃貸割合が80%(10室中2室空室)に下がった場合を比較します。

条件満室空室あり
自用地評価額5,000万円5,000万円
借地権割合60%60%
借家権割合30%30%
賃貸割合100%80%
貸家建付地評価額4,100万円4,280万円
評価減額900万円720万円
評価減率18%14.4%

なお、空室ありの計算式は以下のとおりです。

5,000万円 ×(1 - 60% × 30% × 80%)= 5,000万円 ×(1 - 0.144)= 4,280万円

満室時と比べて評価額が180万円上昇し、評価減の効果が縮小しています。空室2室分が「自用地評価」に戻るためです。

相続税の観点では、相続開始時点の入居率が評価額を直接左右します。入居率の維持・管理が、節税効果を最大化する上で欠かせない要素です。

小規模宅地等の特例との併用

貸家建付地が「貸付事業用宅地等」に該当する場合、小規模宅地等の特例を適用して200㎡まで評価額をさらに50%減額できます。貸家建付地評価と組み合わせると、節税効果が大幅に高まります。

貸付事業用宅地等の50%減額の仕組み

小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)とは、被相続人が賃貸アパート・マンションなどの貸付事業に使っていた土地について、200㎡を上限に評価額を50%減額できる制度です。

特例を適用したときの効果を確認しましょう。

段階評価額減額内容
①自用地評価額5,000万円
②貸家建付地評価後(満室・借地権割合60%)4,100万円▲900万円(18%減)
③小規模宅地等の特例適用後(200㎡以内)2,050万円さらに▲2,050万円(50%減)

貸家建付地評価と特例の両方を活用することで、5,000万円の土地が2,050万円まで圧縮されます。評価減率は合計で59%です。

ただし、土地の地積が200㎡を超える場合は、200㎡を超える部分への50%減額は適用されません。超過部分は貸家建付地評価額のまま残ります。

特例適用の要件と注意点

特例を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

① 申告期限まで貸付事業を継続する(事業継続要件)相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内)まで、貸付事業を引き続き営んでいる
② 申告期限まで土地を保有する(保有継続要件)申告期限前に土地を売却すると、特例の適用が受けられない
③ 相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等でないこと(3年以内貸付宅地等の除外)平成30年度税制改正により、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則として貸付事業用宅地等の特例対象外となる

③に関しては例外があり、相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っており、その特定貸付事業の用に供された宅地等については、3年以内貸付宅地等に該当しません。

なお、特定貸付事業とは、社会通念上、事業と称する規模の貸付であることを指します。具体的には、一軒家の賃貸であれば5棟、分譲マンションであれば10室以上の賃貸(例えばマンション1棟の場合は、一軒家ではないので、そのマンションの戸数が10室以上あるか、という判断)を行っていると事業的規模であるとして、特定貸付事業に該当します。そして、そのような方が、相続前に追加でアパートを取得すると、その新たに取得したアパートも貸付事業用宅地等の特例の対象となります。(他の①②も該当する必要はあります)

貸家建付地で失敗しないための注意点

貸家建付地の節税効果は、条件次第で大きく変わります。よくある3つの落とし穴を事前に把握しておきましょう。

空室が多いと評価減の効果が下がる

貸家建付地の評価額は「賃貸割合」に直結するため、相続開始時点の入居率が低いほど評価減の効果が縮小します。

例えば10室のアパートで5室が空室の場合、満室時に比べて評価減の効果は小さくなります。ただし、空室が一時的な空室に当たると認められるときは賃貸中として賃貸割合に含められるため、ただちに空室部分のすべてが評価減の対象外になるとは限りません。

特に注意すべき点は、相続が発生するタイミングは事前に読めないということです。長期間にわたって空室が続いている物件では、貸家建付地評価の恩恵を十分に受けられない可能性があります。

管理会社の選定や賃料・設備の競争力を維持するなど、日常的な入居率管理が評価減を最大化する上で欠かせません。

親族へのタダ貸しは認められない

親族に対して無償、または著しく低い賃料で建物を貸している場合は、貸家建付地として認められません。

この状態を「使用貸借(しようたいしゃく)」といい、借家権が法的に発生しないため、土地は自用地として評価されます。せっかくアパートを建てても、賃料の設定次第で節税効果がゼロになります。

税務上の「相当の賃料」に一律の明確な基準はありませんが、無償または毎年発生する固定資産税に相当する金額以下の授受にとどまる場合は、使用貸借と判断される可能性があります。

親族に貸す際も、周辺相場や契約実態を踏まえた賃料設定と、適切な賃貸借契約書の整備が重要です。なお、実際の判定は個別事情に左右されるため、税理士への確認をおすすめします。

駐車場単独では貸家建付地にならない

建物を伴わない貸し駐車場(青空駐車場)は、貸家建付地の評価対象になりません。アスファルト舗装や砂利敷きなどの構築物があっても、建物のない土地は原則として自用地として評価されます。※アスファルト舗装や砂利敷きがあれば、自用地として評価は行いますが、貸付事業用宅地等に該当するケースもありますので、ご注意ください。

ただし、賃貸アパートや賃貸マンションの敷地内に設けられた入居者専用駐車場で、賃貸物件と一体として使用されていると認められる場合、駐車場部分を含む土地全体を貸家建付地として評価できます。

建築計画の段階から、評価への影響を税理士と確認しておきましょう。

賃貸経営で相続税対策を始めるポイント

更地や自宅として保有している土地も、アパートなどの賃貸物件に活用することで、貸家建付地評価が適用され相続税の節税につながります。家賃収入も得られるため、資産の有効活用という観点でも合理的な選択肢です。

アパート経営が節税に有効な理由

賃貸経営を始めると、相続税の評価額を2つの側面から下げられます。

1つ目は土地の評価減です。更地(自用地)として評価されていた土地が、賃貸物件を建てることで貸家建付地評価に変わり、「借地権割合×借家権割合×賃貸割合」の分だけ評価額が下がります。

2つ目は建物の評価減です。賃貸に供している建物(貸家)は、固定資産税評価額から借家権割合(30%)と賃貸割合を掛け合わせた分を差し引いた金額で評価されます。

この2つの評価減が同時に働くのが、アパート経営が相続税対策として有効とされる理由です。加えて、小規模宅地等の特例が適用できれば、200㎡まで土地の評価額をさらに50%圧縮できます。

土地活用を検討するなら早めの相談を

賃貸経営による相続税対策で見落としやすいのが、タイミングのリスクです。

小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)は、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等が原則対象外です。

また、建築計画から入居者募集・安定稼働まで一定の時間がかかることも踏まえると、余裕を持った計画が不可欠です。相続税の試算、土地活用プランの比較、収支シミュレーションなど、判断すべき要素が多いため、税理士や不動産の専門家への相談は早いほど選択肢が広がります。

貸家建付地を活用して相続税対策を

貸家建付地は、賃貸経営と節税を同時に実現できる有効な手段です。貸家建付地評価による評価減と小規模宅地等の特例を組み合わせれば、自用地評価額を半分以下に圧縮できるケースもあります。

ただし、入居率の維持・要件の充足・計画のタイミングなど、押さえるべきポイントは多岐にわたります。「土地はあるが活用方法に迷っている」「相続対策を始めたいが何から手をつければよいか分からない」という方は、まず現状の土地評価の確認から始めてみましょう。

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< この記事の監修者 >
齋藤 祐希

アカウンティングフォース税理士法人
相続部責任者/コンサルティング部マネージャー
税理士・上級相続診断士

大原簿記学校にて日商簿記検定の受験指導に従事した後、EY税理士法人に入社。上場会社・オーナー企業の税務顧問業務や株価算定業務に携わる。その後、相続税業務を中心に、5千万円~10億円規模の相続税申告や生前対策に従事。転職後は、連結納税を含む上場企業の税務申告対応や組織再編スキームの提案・申告実務に携わり、法人税務の専門性を深める。
現在はアカウンティングフォース税理士法人にて相続部の責任者を務め、相続税・贈与税・譲渡所得税の申告業務を中心に、上場企業・中小企業の税務顧問、組織再編の提案・申告対応、財務デューデリジェンス、株価算定、社内研修の実施など幅広く活動している。相続業務においては弁護士・司法書士・不動産鑑定士と協業したワンストップ対応を実現。税務通信への寄稿や保険会社主催セミナーでの登壇実績もある。

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