貸家建付地とは?評価額の計算方法と相続税の節税効果・注意点を完全解説

公開日:2026.05.28

「更地の相続税が高額になりそうで不安…」「アパートを建てると節税になるって本当?」とお悩みではありませんか?

所有地に賃貸アパートなどを建てる「貸家建付地」は、土地の相続税評価額を大きく下げられる有効な節税対策です。

しかし、仕組みを知らずに建ててしまうと、空室により思わぬ損失を被るリスクもあります。

本記事では、貸家建付地で相続税が安くなる仕組みや具体的な計算方法、失敗しないための注意点を分かりやすく解説します。

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貸家建付地の基礎知識

貸家建付地(かしやたてつけち)は、相続税の節税対策として多くの土地オーナーに活用されている概念です。まずは基本的な定義と、混同しやすい類似用語との違いを整理しておきましょう。

貸家建付地とは

貸家建付地とは、自分が所有する土地の上に賃貸用の建物を建て、その建物を第三者に貸し出している場合の土地のことです。

アパートや賃貸マンション、賃貸一戸建てなどがその代表例にあたります。土地と建物の両方を自分が所有しつつ、建物を入居者に貸し付けているケースが典型です。

相続税の評価において、第三者に賃貸されている建物の敷地は、所有者の利用が制限される土地として評価されます。そのため、制約のない自用地(じようち)に比べて、評価額が低く算出される仕組みになっています。

自用地・貸宅地との違い

貸家建付地と混同されやすい用語に「自用地」と「貸宅地(かしたくち)」があります。3種類の違いをまとめました。

種類土地の使われ方評価額の水準
自用地自分が所有し、自分で使う土地(自宅の敷地など)もっとも高い
貸家建付地自分の土地に自分の建物を建て、他人に貸しているやや低い (自用地の約8割)
貸宅地自分の土地を他人に貸し、借りた人が建物を建てる(底地)もっとも低い (自用地の約3~5割)

貸宅地は、土地を借りた人に「借地権(しゃくちけん)」という強い権利が生じるため、3種類の中でもっとも評価額が低くなります。貸家建付地は、自用地と貸宅地の中間に位置する評価です。

貸家建付地となる3つの要件

土地が貸家建付地として認められるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

① 土地の上に建物が建っていること

駐車場やコインパーキングなど、建物がない土地は対象外です。ただし、賃貸建物の敷地内にある入居者専用駐車場は、賃貸物件と一体のものとして貸家建付地に含めて評価できます。

② 相場に見合った家賃を受け取っていること

無償または著しく低い賃料での貸し出しは「使用貸借(しようたいしゃく)」とみなされ、貸家建付地として認められません。親族への貸し出しであっても、世間相場並みの家賃設定が求められます。

③ 継続して賃貸していること

相続税対策のためだけに直前で入居者を入れた場合、継続性がないとして否認されるリスクがあります。貸家建付地として評価できるのは、原則として「課税時期(相続開始時)に借家権の目的となっている家屋の敷地」に限られます。

独立家屋が課税時期に現実に貸し付けられておらず、空き家となっている場合は、自用地として評価するため貸家建付地として取り扱われません。

一方で、アパート等のように構造上区分された各独立部分を持つ貸家については、異なる取り扱いがあります。課税時期に一部の部屋が空室であっても、継続的に賃貸されてきた経緯があり退去後速やかに募集が行われるなど「一時的な空室」と認められる場合には、その空室の部屋も貸家建付地として取り扱います。

貸家建付地の評価額の計算式

貸家建付地の評価額は、以下の計算式で求めます。

貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

この式は、「制約のない土地(自用地)の価格から、入居者の権利に相当する分を差し引く」という考え方に基づいています。入居者がいる分だけ所有者の自由が制限されるため、その制限を評価額に反映させる仕組みです。

※令和9年1月1日以後に相続や贈与があった場合には、その課税時期(相続であれば所有者が亡くなった日、贈与であれば贈与日)の5年前以内に対価を伴って取得した貸付用不動産の評価は、上記の算式ではなく、課税時期における通常の取引価額に相当する金額(原則として取得した金額)により評価することになるため注意が必要です。

現状では、これ以上の詳細は国税庁から公表されていないため、今後の情報にご留意ください。

自用地評価額の計算方法

計算式のベースとなる「自用地評価額」は、その土地が更地(制限なし)だった場合の相続税評価額のことです。計算方法は土地の所在地によって2つに分かれます。

路線価方式

路線価(ろせんか)とは、国税庁が毎年公表する、道路に面した土地1m2あたりの評価額です。主に市街地の土地に適用されます。

自用地評価額=路線価×各種補正率×土地面積(㎡)

「各種補正率」は、土地の形状や奥行きによって評価額を調整するための係数です。例えば、間口が狭い土地や不整形な土地は補正率が低くなり、評価額も下がります。路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。

倍率方式

路線価が設定されていない地域の土地には、倍率方式を使います。

自用地評価額=固定資産税評価額×倍率

倍率は国税庁が地域ごとに定めており、路線価図と同様に公式サイトで調べられます。

借地権割合・借家権割合・賃貸割合の扱い

計算式に登場する3つの割合について、それぞれの意味と調べ方を解説します。

借地権割合(しゃくちけんわりあい)

土地の自用地評価額に占める「借地権」の割合です。借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことで、地価の高い地域ほど割合が高くなる傾向があります。

割合はアルファベット(A〜G)で路線価図に記載されており、Aが90%、Gが30%に対応します。都市部では60〜70%(CもしくはD)が一般的です。

借家権割合(しゃくやけんわりあい)

建物を借りて使用する入居者の権利(借家権)が、建物評価額に占める割合です。全国一律30%と定められています。

賃貸割合(ちんたいわりあい)

アパートやマンション全体のうち、賃貸されている部屋の割合です。戸数ではなく「床面積」で計算します。

賃貸割合=賃貸中の各独立部分の床面積の合計÷建物全体の各独立部分の床面積の合計

満室であれば賃貸割合は100%になり、節税効果が最大化します。空室が増えると賃貸割合が下がり、評価額の減額幅も小さくなります。

以下の事例で、実際に計算してみましょう。

・自用地評価額:1億円
・借地権割合:60%(D)
・借家権割合:30%(全国一律)
・賃貸割合:100%(満室)

この場合、「1億円×(1−0.6×0.3×1.0)=8,200万円」となり、更地評価の1億円に対し、1,800万円(18%)の減額が実現できます。

相続税の節税効果と具体例

貸家建付地として評価額が下がると、相続税の課税対象となる財産額が減り、実際に支払う税額を圧縮することが可能です。さらに要件を満たせば、特例と組み合わせてより大きな節税効果を得ることもできます。

評価額が下がる仕組み

貸家建付地の評価額が自用地より低くなる理由は、「所有者が土地を自由に使えない」という制約にあります。

入居者が住んでいるアパートの土地は、すぐに売却したり取り壊したりすることができません。土地の処分に制限がかかっている分、財産としての価値も低いとみなされるのです。

相続税は「相続財産の評価額」に対してかかるため、評価額が下がると納税額が直接減ります。更地のまま所有しているよりも、賃貸物件を建てて貸し出しているほうが、相続税の観点では有利です。

小規模宅地等の特例との併用

貸家建付地は、「小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)」と組み合わせることで、さらに大きな節税効果が期待できます。

小規模宅地等の特例では、貸付事業用宅地等として200m2まで評価額を50%減額できます。なお、適用するには以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

要件内容
事業継続要件相続税の申告期限まで貸付事業を継続すること
保有継続要件相続税の申告期限まで土地を所有し続けること
3年超要件相続開始前3年以内に新たに始めた貸付事業でないこと

3つ目の「3年超要件」は、節税目的での直前の駆け込み対策を封じる目的で2018年度税制改正で追加されました。相続の直前に新たに賃貸事業を始めても特例は使えないため、早めに賃貸経営を始めておくことが重要です。

節税シミュレーションの比較

同じ条件の土地でも、満室か空室かによって節税効果は大きく変わります。

満室時の節税シミュレーション

以下の前提条件で、どの程度の節税を見込めるかを確認しましょう。

・自用地評価額:1億円
・借地権割合:60%
・借家権割合:30%
・土地面積:200m2

ステップ計算評価額
自用地評価額1億円
貸家建付地評価(満室・賃貸割合100%)1億円×(1−0.6×0.3×1.0)8,200万円
小規模宅地等の特例(200m2・50%減)8,200万円×50%4,100万円

更地の1億円が、最終的に4,100万円まで圧縮できます。減額幅は5,900万円と、節税効果は大きくなります。

空室がある場合のシミュレーション

同じ条件で、賃貸割合が50%(半数が空室)になった場合を比較します。

比較項目満室(賃貸割合100%)半空室(賃貸割合50%)
貸家建付地評価額8,200万円9,100万円
小規模宅地等の特例後4,100万円7,050万円
自用地との差額▲5,900万円▲2,950万円

小規模宅地等の特例の適用可否は貸付事業の継続性などで判断されるため、空室があっても直ちに適用対象外になるわけではありません。ただし空室が多い場合、貸付事業として認められない可能性があります。空室が増えると賃貸割合が低下し、貸家建付地としての減額幅が縮まります。節税効果を最大化するには、相続発生時点での入居率を高く保っておくことが大切です。

経営リスクと注意点

貸家建付地は有効な相続税対策ですが、賃貸経営の状況によっては節税効果が想定より低くなったり、そもそも貸家建付地として認められなかったりするケースもあります。事前にリスクをしっかり把握しておきましょう。

空室率は節税効果を下げてしまう

貸家建付地の評価額は「賃貸割合」に連動します。空室が増えると賃貸割合が下がり、評価の減額幅も小さくなります。

賃貸ニーズの低いエリアに建てたアパートで空室が続いた場合、節税効果が薄れるだけでなく、毎月のローン返済や固定資産税の負担が重くのしかかるかもしれません。その結果、キャッシュフローが悪化するリスクがあります。

相続税対策として賃貸物件を建てる際は、「その土地に本当に入居需要があるか」を冷静に見極めることが重要です。節税効果だけに目を向けず、長期的な賃貸経営としての採算性をセットで検討しましょう。

【関連記事】〝建物の価値〟を高めて空室リスク対策を。安定的なアパート経営の極意

駐車場のみは対象外になる

「土地を駐車場として貸せば貸家建付地になる」と誤解されることがありますが、これは正しくありません。

月極駐車場などとして利用している土地は自用地としての価額で評価されます。貸家建付地として認められるのは、あくまで「借家権の目的となっている建物の敷地」に限られるためです。

ただし、アパート等の入居者専用駐車場は例外です。駐車場がアパート等の敷地内にあり、契約者・利用者がすべてアパート等の入居者である場合は、敷地と一体のものとして貸家建付地に含めて評価できます。一方、空きスペースを外部に月極で貸し出している場合は、駐車場の敷地全体は自用地評価になるため注意が必要です。

貸家建付地のよくある質問

貸家建付地については「うちのケースは該当するのか」と判断に迷う場面も少なくありません。実務でよく出てくる疑問を3つピックアップして解説します。

親の土地に子が建てた場合は?

Q. 親が所有する土地に子がアパートを建て、入居者に貸しています。親の相続時、この土地は貸家建付地になりますか?

A. 貸家建付地にはなりません。

このようなケースでは、土地の所有者である親が建物を建てた子どもから賃料を受け取っていなければ、賃貸借ではなく使用貸借(しようたいしゃく)とみなされます。そのため、親の相続税を計算する際、土地部分は貸家建付地とは認められません。

使用貸借とは、無償または固定資産税程度の低額しか支払わない貸し借りのことです。借りた側に法的な保護が生じないため、土地の利用制限がかかっているとはみなされず、評価額が下がりません。

建築中に相続が発生した場合は?

Q. アパートを建築中に親が亡くなりました。土地は貸家建付地として評価できますか?

A. 建築中の場合は、自用地として評価されます。

貸家建付地として認められるのは、相続開始時点(被相続人が亡くなった日)に建物が実際に建っており、かつ入居者に貸し出されている状態が前提です。

建築中の建物はまだ貸し出せる状態にないため、入居者の権利(借家権)が発生しておらず、評価額の減額は認められません。なお、建築中の建物そのものは「建築代金の総額に工事進捗率を掛けた額の7割相当」で評価するルールがあります。

賃貸併用住宅の評価はどうなる?

Q. 1階を賃貸、2階を自宅として使う賃貸併用住宅を建てています。土地の評価はどうなりますか?

A. 賃貸併用住宅の場合、賃貸住宅の床面積に相当する部分のみ貸家建付地として評価されます。自宅部分については自用地として評価されます。

例えば、延べ床面積200m2のうち賃貸部分が100m2(50%)であれば、土地の50%分が貸家建付地として評価され、残り50%は自用地評価となります。

貸家建付地を理解して土地を有効活用しよう

貸家建付地は、正しく活用すれば相続税評価額を大幅に圧縮できる、有効な節税対策の一つです。

ただし、空室率の管理・要件の充足・駐車場の取り扱いなど、細かいルールを押さえておかないと想定した節税効果が得られないケースもあります。土地活用を相続対策として検討する際は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

貸家建付地による相続税対策と賃貸経営を同時に実現したい方には、セレ コーポレーションへのご相談をおすすめします。「アパート経営の専門店」として、3世代・4世代先まで受け継がれる資産づくりを、土地活用・相続対策の両面からワンストップで支援しています。

いまさら聞けない!
アパート経営の疑問を解消

自己資金、利益、空室対策…
アパート経営によくある不安と解決策をまとめました。
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< この記事の監修者 >
齋藤 祐希

アカウンティングフォース税理士法人
相続部責任者/コンサルティング部マネージャー
税理士・上級相続診断士

大原簿記学校にて日商簿記検定の受験指導に従事した後、EY税理士法人に入社。上場会社・オーナー企業の税務顧問業務や株価算定業務に携わる。その後、相続税業務を中心に、5千万円~10億円規模の相続税申告や生前対策に従事。転職後は、連結納税を含む上場企業の税務申告対応や組織再編スキームの提案・申告実務に携わり、法人税務の専門性を深める。
現在はアカウンティングフォース税理士法人にて相続部の責任者を務め、相続税・贈与税・譲渡所得税の申告業務を中心に、上場企業・中小企業の税務顧問、組織再編の提案・申告対応、財務デューデリジェンス、株価算定、社内研修の実施など幅広く活動している。相続業務においては弁護士・司法書士・不動産鑑定士と協業したワンストップ対応を実現。税務通信への寄稿や保険会社主催セミナーでの登壇実績もある。

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