アパート経営では、家賃収入を得る一方で、固定資産税や所得税、個人事業税などさまざまな税金が発生します。税負担を正しく把握せずに経営を始めてしまうと、思わぬ納税額に戸惑うこともあるでしょう。
この記事では、アパート経営にかかる主な税金の種類と仕組み、実際の税額シミュレーションのほか、節税のポイントを解説します。
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アパート経営で発生する主な税金の種類
アパート経営において発生する税金は、大きく分けて「土地・建物の所有に対して課される税金」と「収益に対して課される税金」の2種類に分類されます。前者は、不動産を所有している限り毎年課される固定資産税と都市計画税です。後者は、経営による収益の状況に応じて課される所得税、住民税、個人事業税、消費税などが該当します。
■アパート経営で発生する主な税金
| 土地・建物の所有に対して課税 | 収益に対して課税 |
|---|---|
| ・固定資産税 ・都市計画税 | ・所得税 ・住民税 ・個人事業税(※所得が一定額を超える場合に課税) ・消費税(※課税売上高が1,000万円を超える場合に課税) |
これらのうち、所得税・住民税・個人事業税は「不動産所得(家賃収入などの総収入から必要経費を差し引いた利益)」をもとに課税されます。不動産所得の収入には、家賃・管理費・駐車場収入・更新料・礼金などが含まれ、必要経費として計上できるものには、管理委託費・修繕費・火災保険料・固定資産税・減価償却費・ローン利息などがあります。
ここでは、各税金の概要や計算式を見ていきましょう。
固定資産税
固定資産税は、アパート経営において土地や建物を所有している場合に毎年課される地方税です。その年の1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が、納税義務者となります。固定資産税は、土地や建物の評価額(課税標準額)に一定の税率をかけて算出され、一般的な税率は1.4%です。
<固定資産税の計算式>
固定資産税=課税標準額×1.4%(税率)
ただし、自治体によっては税率が異なる場合もあります。課税標準額は、地価公示価格の約70%を目安に各自治体が算定し、原則として3年ごとに見直されます。
また、アパート経営においては、住宅用地の軽減措置を活用することで、大きな節税効果が期待できます。軽減措置は、土地の面積や用途に応じて、課税標準額が減額される仕組みです。
<住宅用地の軽減措置>
・小規模住宅用地(200平方メートル以下):課税標準額が6分の1に軽減
・一般住宅用地(200平方メートル超):課税標準額が3分の1に軽減
これらの軽減措置は、土地の広さだけでなく利用状況にも左右されるため、具体的な適用条件については、管轄の自治体に確認しておくと安心です。
固定資産税について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
土地の固定資産税評価額はどうやって決まる? 調べ方、計算方法など基礎知識を解説
都市計画税
都市計画税は、市街化区域にある土地や建物に対して課される地方税で、原則として固定資産税と併せて課税されます。
<都市計画税の計算式>
都市計画税=課税標準額×0.3%(税率)
標準税率は0.3%とされていますが、自治体ごとに異なる場合もあります。課税標準額の算定方法は固定資産税と同様で、地価公示価格などを基に自治体が決定します。
また、住宅用地に該当する場合は、固定資産税と同様に軽減措置が適用されます。
なお、都市計画税は地域の都市計画の状況によって課税の有無や税率が異なるため、管轄の自治体に確認が必要です。
所得税
所得税は、アパート経営による不動産所得を含む総所得金額に対して課される国税で、累進課税制度が採用されています。総所得金額から基礎控除・社会保険料控除などの所得控除を差し引いた課税所得が多くなるほど、高い税率が適用される仕組みです。
<所得税の計算式>
所得税=課税所得金額×所得税率-控除額
※算出された所得税額に、復興特別所得税2.1%を加算
所得税率は5%から最大45%までの7段階に分かれており、課税所得に応じて適用される税率と控除額が変わります。また、計算した所得税額に対しては、2037年まで復興特別所得税(2.1%)が加算され、最終的な納税額が決定します。
住民税
住民税は、都道府県民税と市区町村民税を合わせたもので、所得に応じて課税される「所得割」と、所得に関係なく一律に課税される「均等割」から構成される地方税です。
<住民税の計算式>
住民税(所得割)=課税所得金額×10%(都道府県民税4%+市区町村民税6%)
※このほかに、均等割として年額約5,000円を加算
所得割は課税所得に応じて計算される仕組みで、税率は全国ほぼ一律の10%です。また、均等割は所得の有無にかかわらず一律で課税され、地域によって若干の差はありますが、一般的には年間5,000円前後が目安です。
住民税は所得税と同様に、ほかの所得と合算して計算されるため、アパート経営による不動産所得は給与所得などと合わせて課税対象となります。
個人事業税
個人事業税は、一定規模以上のアパート経営を「事業的規模」とみなした場合に課される地方税です。一般的な目安としては、「5棟または10室以上」の規模が基準となり、これに加えて不動産所得が290万円を超える場合に課税対象となります。
<個人事業税の計算式>
個人事業税=(不動産所得-290万円)×5%(税率)
事業的規模に満たない場合や、不動産所得が290万円以下の場合は課税されません。対象かどうかは、事業の規模と所得額の両方で判断されるため、所轄の税務署や都道府県税事務所に確認しましょう。
消費税
アパート経営における居住用物件の家賃収入は消費税の課税対象外で、非課税取引とされています。ただし、駐車場・店舗・事務所などの賃料収入は課税対象です。これらの課税売上高が年間1,000万円を超えると、翌々年から課税事業者となり、消費税の申告・納付義務が発生します。
消費税の対象になるかどうかは、収入の内訳や事業規模によって異なるため、賃料の種類や売上額を正確に把握しておかなければなりません。
アパート経営でかかる税金のシミュレーション

ここでは、アパート経営における主な税金について、モデルケースをもとにしたシミュレーションを紹介します。
所得税・住民税のシミュレーション
年収480万円の会社員がアパート経営を行い、320万円の不動産所得を得た場合の所得税・住民税のシミュレーションは、以下のとおりです。
<前提条件>
・給与所得:480万円
・アパート経営による利益:320万円(経費80万円控除後)
・扶養なし
・社会保険料控除:70万円
・基礎控除:48万円
■所得税・住民税のシミュレーション
| 手順 | 計算例 |
|---|---|
| 1. 課税所得額を計算する | 総所得:480万円(給与所得)+320万円(不動産所得)=800万円 所得控除:70万円(社会保険料)+48万円(基礎控除)=118万円 課税所得金額:800万円(総所得)-118万円(所得控除)=682万円 |
| 2. 課税所得をもとに、所得税額を計算する | 所得税額:682万円(課税所得)×20%(所得税率)-42万7,500円(控除額)=93万6,500円 復興特別所得税(2.1%)を加算:93万6,500円×1.021=95万6,166円 所得税額:95万6,166円 |
| 3. 課税所得をもとに、住民税額を計算する | 住民税:682万円(課税所得)×10%(標準税率)=68万2,000円 均等割を加算:68万2,000円+5,000円=68万7,000円 住民税額:68万7,000円 |
| 4. 合計税額を計算する | 95万6,166円(所得税)+68万7,000円(住民税)=164万3,166円 |
給与所得のみ(480万円)であれば、税負担は66万9,726円ですが、アパート経営による不動産所得(320万円)が加わると、年間の税負担は97万3,440円増加する計算です。
固定資産税・都市計画税のシミュレーション
土地と建物を所有するアパート経営者が、小規模住宅用地の軽減措置を適用した場合の固定資産税・都市計画税を試算すると、以下のようになります。
<前提条件>
・土地評価額:5,800万円
・建物評価額:1,600万円
・小規模住宅用地の軽減措置を適用
■固定資産税・都市計画税のシミュレーション
| 手順 | 計算例 |
|---|---|
| 1. 課税標準額を算出する | 土地:5,800万円×6分の1(軽減後)=966万6,000円(1,000円未満切り捨て) 建物:1,600万円(軽減なし) 合計課税標準額:966万6,000円(土地)+1,600万円(建物)=2,566万6,000円 |
| 2. 課税標準額をもとに、固定資産税・都市計画税を計算する | 固定資産税:2,566万6,000円(課税標準額)×1.4%(標準税率)=35万9,324円 都市計画税:2,566万6,000円(課税標準額)×0.3%(標準税率)=7万6,998円 |
| 3. 合計税額を計算する | 35万9,324円(固定資産税)+7万6,998円(固定資産税)=43万6,322円 |
小規模住宅用地の軽減措置が適用されない場合、課税標準額は土地と建物を合わせて7,400万円となり、固定資産税・都市計画税の合計は約125万8,000円と算出されます。軽減後の税額と比較すると、年間で82万1,678円の節税効果があることがわかります。
年間の税額シミュレーション
地方中核都市で2階建て8戸のアパートを所有し、年間家賃収入720万円・経費210万円を想定した場合の年間税負担を試算すると、以下のようになります。
<前提条件>
・地方中核都市の2階建てアパート(8戸)を所有
・年間家賃収入:720万円
・経費:210万円
・土地評価額:5,500万円
・建物評価額:1,500万円
・小規模住宅用地の軽減措置を適用
■年間税額のシミュレーション
| 手順 | 計算例 |
|---|---|
| 1. 不動産所得を算出する | 720万円(年間家賃収入)-210万円(経費)=510万円 |
| 2. 所得税・住民税を算出する | 所得税額:510万円(課税所得)×20%(所得税率)-42万7,500円(控除額)=59万2,500円 復興特別所得税(2.1%)を加算:59万2,500円×1.021=60万4,942円 住民税:510万円(課税所得)×10%(標準税率)=51万円 均等割を加算:51万円+5,000円=51万5,000円 合計:60万4,757円(所得税)+51万5,000円(住民税)=111万9,942円 |
| 3. 固定資産税・都市計画税を算出する | 課税標準額(土地):5,500万円×6分の1(軽減後)=916万6,000円(1,000円未満切り捨て) 課税標準額(建物):1,500万円 合計課税標準額:916万6,000円(土地)+1,500万円(建物)=2,416万6,000円 固定資産税:2,416万6,000円(課税標準額)×1.4%(標準税率)=33万8,324円 都市計画税:2,416万6,000円(課税標準額)×0.3%(標準税率)=7万2,498円 合計:33万8,324円(固定資産税)+7万2,498円(都市計画税)=41万822円 |
| 4. 年間合計税負担額を計算する | 111万9,942円(所得税・住民税)+41万822円(固定資産税・都市計画税)=153万764円 |
この結果から、アパート経営による税金負担は、家賃収入の約20%前後が目安となることがわかります。
アパート経営の税金に関する納付スケジュールと手続き
次に、アパート経営で発生する税金について、納付のタイミングや手続きの流れを確認しましょう。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税の納付書は、毎年4~6月頃に市区町村から届きます。納付は一括または年4回の分割が選択でき、納付期限は自治体ごとに異なります。なお、都市計画税は通常、固定資産税とまとめて通知・納付されるのが一般的です。
納付方法は、金融機関やコンビニでの窓口払いのほか、口座振替、クレジットカード払い、スマートフォン決済など、多様な手段が用意されています。具体的な対応は自治体によって異なるため、送付される納付書や自治体の案内を確認しましょう。
所得税・住民税
所得税は例年、翌年2月16日~3月15日に確定申告を行い、納税または還付を受けます。確定申告は税務署への持参・郵送のほか、e-Taxでも可能です。青色申告をする場合は、必要書類の準備や申請期限(事業開始後2ヵ月以内など)や帳簿付けなどの要件を満たさなければなりません。
住民税は、確定申告によって確定した前年の所得に基づき、翌年6月頃から分割納付が始まります。所得税の確定申告結果が市区町村へ共有され、その内容にもとづいて課税額が決定されます。
個人事業税・消費税
個人事業税は、都道府県から送付される納付通知書にもとづき、年2回(一般的に8月と11月)に分けて納付します。個別に申告する必要はなく、通知に従って納付すれば問題ありません。
消費税は、課税事業者に該当する場合に納税義務が生じ、原則として年1回、翌年3月末までに申告・納付を行います。
課税事業者の対象となるのは、基準期間(原則として前々年)の課税売上高が1,000万円を超える場合です。また、前々年に課税売上高が1,000万円に満たない場合でも、特定期間(前年の1月~6月)の課税売上高または給与支払額が1,000万円を超える場合は、その年から課税事業者となります。
また、インボイス制度に対応するため適格請求書発行事業者となった場合も、課税事業者となり納税義務が生じるため、会計ソフトや専門家のサポートを活用すると安心です。
アパート経営における節税対策
ここでは、アパート経営で活用できる具体的な節税対策について解説します。適切な方法で税負担を軽減する手段を理解し、効果的に実践しましょう。
経費をもれなく計上する
アパート経営に関わる支出は、できる限り経費として計上しましょう。交通費や通信費、消耗品費、接待交際費なども、業務に関係があれば経費として認められる可能性もあります。
領収書の保存や帳簿の正確な記録を行い、税務調査に備えることも大切なポイントです。
減価償却費を活用する
アパートの建物は、法定耐用年数にもとづいて、毎年一定額を「減価償却費」として経費に計上できます。木造住宅は22年、鉄骨造やRC造などは構造ごとに耐用年数が異なり、計算方法もそれぞれ異なります。
減価償却は、実際の支出を伴わずに経費として計上できるため、節税効果が高いのが特徴です。帳簿上の利益を抑えることで、キャッシュフローを維持しながら税負担を軽減できます。
青色申告を活用する
青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるため、高い節税効果があります。青色申告には「簡易簿記(単式簿記)」と「複式簿記」の2種類の記帳方法があり、簡易簿記では控除額が10万円、複式簿記の場合は55万円または65万円の控除が適用されます。65万円控除を受けるには、e-Taxでの申告または電子帳簿保存を行わなければなりません。
さらに、家族に給与を支払っている場合は「専従者給与」として経費にできるなど、青色申告にはさまざまなメリットがあります。申請の際は、事業開始から2ヵ月以内、または申告する年度の3月15日までに、税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があるため、早めに準備しましょう。
参考:青色申告制度|国税庁
損益通算を活用する
アパート経営で赤字が出た場合、給与所得などほかの所得と損益通算を行い、課税所得を減らすことが可能です。特に減価償却費などで赤字になるケースでは、損益通算によって所得税・住民税の負担を軽減できます。
確定申告時には、必要な書類を添えて正確に申告しましょう。
法人化を検討する
所得が一定以上になってきた場合は、法人化も選択肢の1つです。法人化すると所得税の累進課税から法人税の一定税率に変わり、高所得者にとって節税効果が大きくなるケースもあります。
ただし、社会保険料の負担や法人設立・維持のコストも発生するため、税理士など専門家と相談の上で検討することが重要です。
正しい税知識と専門サポートで、安定したアパート経営を実現しよう

アパート経営における税金は、固定資産税や所得税をはじめとして多岐にわたり、その計算方法や節税策には一定の知識が求められます。特に、減価償却費の活用や青色申告、損益通算などの節税対策を正しく行えば、税負担を大きく軽減することが可能です。
一方で、税制には複雑な条件や例外も多く、最適な方法は不動産の規模や地域、個々の状況によって異なります。そのため、将来的な資産形成や経営の安定を目指すなら、税理士や不動産会社などの専門家のサポートを受けることが安心です。
セレ コーポレーションは「アパート専門メーカー」として、資金計画、土地活用や建て替え、経営支援など幅広くサポートを行っています。税金や経営に不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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自己資金、利益、空室対策…
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