日本の住宅の外壁材に最もよく使われている「サイディング」。色や質感などの種類が豊富で、さまざまなデザインを選ぶことができます。今回はサイディングの特徴やメンテナンスについて解説します。
建物の建築を検討している方だけでなく、すでにサイディング外壁の住宅を所有している方も、知っておけば今後の修繕計画などが立てやすくなるでしょう。
サイディングとは
サイディングとは、セメントや繊維などを固めた外壁の仕上げ材で、サイディングボードとも呼ばれます。現在の日本の住宅では最も多く採用されており、戸建て・共同住宅ともにそのシェアは9割以上にのぼります。
参考:2024年3月版『住宅用建材使用状況調査』の概要|(一社)日本サッシ協会
サイディング普及の歴史
サイディングが生まれたのは19世紀のアメリカ。日本では昭和30〜40年代から作られ始め、昭和50年代に一気に普及しました。それまで住宅の外壁はモルタルの塗り壁が一般的でしたが、高度成長期の住宅需要の高まりとともに、施工しやすく工期を大幅に短縮できるサイディングが外壁の主流となったのです。
サイディングの種類と特徴
サイディングは、原料によって次のように分類されます。
窯業系サイディング

住宅の9割の外壁に使われているサイディングですが、戸建て住宅においてはその8割が窯業(ようぎょう)系サイディングです。セメント質原料とパルプや木繊維といった繊維質原料を混ぜて成型し、高温・高圧の窯で硬化させて作ることからこの名前で呼ばれています。
防火性能と耐久性能が高く、豊富なデザインが揃っていますが、サイディングの中では比較的重いのがデメリットです。
金属系サイディング

金属系サイディングとは、アルミニウムやステンレスなどの金属を成型した外壁材を指します。モダンなデザインの住宅によく採用されている「ガルバリウム鋼板」も金属系サイディングの一種です。
耐久性が高いため、長期にわたり劣化しづらく、窯業系サイディングに比べて軽量です。凍害に強く、寒冷地でも広く用いられています。
木質系サイディング

木質系サイディングは、木材に防火・防虫・防腐加工などを施した外壁材です。木材ならではの自然な風合いと温もりを特徴とし、かつ環境に優しい素材といえます。
ただし、塗装などの定期的なメンテナンスが必要で、塗装がはがれた状態で放置すると外壁そのものが劣化しやすくなります。
樹脂系サイディング

樹脂系サイディングはPVC(ポリ塩化ビニル)などの樹脂を加工して板状にしたもの。ほぼメンテナンスが不要なほど扱いやすく、比較的安価で軽量といったメリットが多い外壁材です。
日本では対応できる施工業者が少なく普及率も低いですが、北米の住宅では主流となっています。
サイディング外壁のメリットとデメリット
サイディングには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれ見てみましょう。
メリット

バリエーションが豊富でデザイン性が高い
サイディングの最大のメリットともいえるのが、バリエーションの豊富さです。特に窯業系サイディングは選べるデザインが多く、タイルやレンガ、木目を凹凸によって表現したものなどが揃います。デザインやカラーを組み合わせる幅も広く、好みに合わせたオリジナルの外観をつくり上げることができます。
高いコストパフォーマンス
サイディングは素材が比較的安価で大量生産が可能です。そのためタイルなどと比べると、コストパフォーマンスが高い外壁材といえます。施工期間も短く済むため、工事費(人件費)も他の外壁材より抑えられます。
防火性や耐久性に優れている
防火性と耐久性が高いのもサイディングのメリットです。防火構造を備えており隣接する建物への延焼を防いでくれるため、住宅密集地に建築するときにもおすすめの外壁材です。
また、工業製品としてJIS規格を満たす耐久性を持っています。最も多く使われている窯業系サイディングで耐用年数が30〜40年。適切なメンテナンスを行うことで長く美観を保つことができます。
工期が短く施工が簡単
職人がその場で施工するモルタルなどと違い、ボード状になっているサイディングは施工がしやすく、工期を短く抑えられるのが特徴です。職人の技術で仕上がりに差が出ることも少なく、工場で製造されるため品質も安定しています。
デメリット

経年劣化による防水性能の低下
サイディングそのものの耐久性は高いので、通常はボードをつなぐためのシーリング(コーキング)材が先に劣化します。これによって、つなぎ目から雨などの水分が浸み込み、壁内部のカビや腐食の原因になることがあります。
定期的なメンテナンスが必要
窯業系サイディングの耐用年数は30〜40年と前述しましたが、それらをつなぐシーリング材の耐用年数は7〜10年です。そのため、シーリング材のメンテナンスはその周期を目安に行う必要があります。
継ぎ目が目立ちやすい
サイディング1枚は大きいもので長さが3m程度。サイディングのサイズに合わせて可能な限り継ぎ目が少なくなるように設計するものの、施工によっては継ぎ目が目立つことも。高級感のある質感のサイディングを選んでも、継ぎ目によって安っぽく見えてしまうといったケースも生じます。
素材によりコストの幅がある
同じサイディングでも、種類によってかかる費用に幅があります。一般的には窯業系<金属系<木質系<樹脂系の順に高くなりますが、高耐久塗装など特別な加工が施されたものはそのぶん費用が上がります。将来のランニングコストも考えたうえで選ぶようにしましょう。
サイディング外壁の耐用年数と劣化のサイン

サイディング外壁の寿命は、用いる塗料の種類や建物が建っている環境によっても変わります。ここではメンテナンスの方法や、メンテナンスが必要なサインについて解説します。
サイディング外壁の耐用年数
サイディング外壁の耐用年数は、シーリング補修や塗装などの適切なメンテナンスを施していれば30〜40年です。ただし、建物の周辺環境や気候によって差が大きく、思っていたより早く劣化してしまう場合もあれば、その逆もあり得ます。劣化のサインを見逃さず、速やかにメンテナンスすることが重要です。
サイディング外壁が劣化しているサイン
サイディングボードの「ひび割れ」や「剥がれ」などといった分かりやすいサインのほかに、「チョーキング」と呼ばれる現象があります。これは、外壁が乾いた状態のときに、手でなでるとチョークのような白い粉が付くことです。
チョーキングはサイディングの塗料に含まれている顔料が表面に出てしまっている状態で、外壁の防水機能が低下していることを示しています。チョーキングをそのまま放置すると外壁が雨水を吸収し、コケやカビなどが発生しやすくなります。もし発見したら早い段階で塗装などの処置が必要です。
メンテナンスの方法と費用の目安

劣化のサインを見つけたら、早めにメンテナンスを施すことでサイディングの寿命を延ばすことができます。主なメンテナンス方法には次のようなものがあります。
塗り替え
劣化のサインが見られるサイディングに塗装を施し、風雨や紫外線から保護します。工事内容は高圧洗浄をした後にひび割れや削れた部分などを補修し、複数回に分けて塗装を行います。
費用の目安は使用する塗料の種類によっても変わりますが、飛散防止の養生や足場を組む費用が共通してかかります。延床面積30坪程度の一般的な住宅であれば、費用相場は60〜100万円程度です。
重ね張り
カバー工法とも呼ばれる補修方法で、サイディングの劣化がひどい場合に用いられます。既存のサイディングを撤去せず新しいサイディングボードを上から重ねます。重ねることで断熱性・外からの遮音性も向上します。
延床面積30坪程度の一般的な住宅の場合、費用相場は100〜200万円程度。重ね張りには、重量が軽い金属系サイディングがよく用いられます。
張り替え
サイディングそのものだけでなく、下地や構造材まで劣化している状態では張り替えの検討が必要になってきます。費用相場は30坪で150〜300万円程度が目安です。
既存のサイディングの撤去費用もかかるため、他のメンテナンスよりも費用が高くなりますが、外壁の問題を根本から解決することができます。また、カバー工法と違い重量の制約を受けないため、外壁材を自由に選べるのもメリットです。
メンテナンスを減らす方法
サイディングには定期的なメンテナンスが欠かせませんが、費用もそれなりにかかることが分かりました。できる限りメンテナンスの頻度を減らし、ランニングコストを抑えていきたいもの。そのためには、最初から劣化に強いサイディングを選ぶのが有効です。
例えば、セルフクリーニング機能付きの壁材。サイディングは雨や紫外線、汚れによって少しずつ劣化していきます。劣化を防ぐためにこまめに洗浄するのは手間がかかりますが、セルフクリーニング機能が付いた壁材を選ぶことで同様の効果を得られます。
クリーニングの仕組みは商品によって異なり、光触媒や親水機能を利用したものなどがあります。
定期点検の重要性
常に紫外線や風雨にさらされている外壁。施工会社による定期点検は必ず受けるようにしましょう。
同じ建物でも方角によって劣化の度合いは異なるため、自身でもシーリングに劣化している部分はないか、チョーキングは起きていないかをさまざまな場所でチェックするのもよい方法です。
外壁は外から見ても分かりやすいため、「劣化している部分があってこのままでは危険。うちなら安く修理ができる」などと業者が飛び込みで訪れることもよくありますが、トラブルも多くおすすめしません。メンテナンスの際は、信頼できる業者数社から見積もりをとって行うようにしましょう。
自治体によっては外壁補修に助成金が支給する場合もあります。
事例紹介|赤煉瓦調の外壁サイディングを使ったセレ コーポレーションの「My Style vintage」

サイディングは個人の住宅だけでなく、賃貸住宅でも幅広く取り入れられています。入居者に愛され、街のシンボルとなるような外観デザインを目指したセレ コーポレーションのアパート「My Style vintage」には、オリジナルの赤煉瓦調の外壁「マイスタイルブリック※」が採用されます。
※2025年3月以降に着工する「My Style vintage」の外壁で使用予定。
東京駅丸の内駅舎に代表されるような、赤煉瓦を使った名建築。それらに通じる、美しい佇まいと重厚な存在感を持つ外観デザインは流行に左右されず、時を重ねても美しさと品格を保ち続けます。
さらに「マイスタイルブリック」には、資産である建物を守る外壁として、以下に挙げる主な特長を持っています。
独自の塗料による優れた耐久性

外壁は、昼夜の寒暖差などによって微妙な収縮を繰り返しています。そのため塗膜の硬い塗料を用いると、その伸縮により塗膜割れが発生し、そこから外壁が劣化してしまうケースがあります。
「マイスタイルブリック」に使用されている塗料は、強力な紫外線などから外壁をガードするとともに、独自の技術により塗膜に柔軟性を持たせています。これによって、わずかな外壁の動きをしっかり吸収し、住まいを守る働きを果たします。
セルフクリーニング効果

通常、雨が降ると外壁の汚れは壁をつたって下に広がり、水が流れ落ちても汚れは壁に付着したままです。しかし、親水機能を持つ塗料を施した「マイスタイルブリック」では、雨が降ると付着した汚れと外壁表面のすき間に水が入り込み、汚れを洗い流してくれます。
「セルフクリーニング効果」によって空気中の排気ガスや油分などの汚れが壁に残りにくくなり、新築時のような美しい外壁が長く保たれます。
航空機や巨大建築物にも使われている塗料

サイディングの劣化は、紫外線や風雨の影響を直接受ける表面の塗料から始まります。「マイスタイルブリック」には超耐候性塗料用フッ素樹脂「ルミフロン」をベースに、紫外線吸収剤や光酸化反応防止剤などを配合した塗料を使用。色あせなどの進行を抑える優れた耐候性を有しています。
「ルミフロン」を材料としたフッ素樹脂塗料は、航空機のほか、東京ビッグサイトや国立劇場のような建築物、東京ゲートブリッジなどの大型構造物にも採用されています。過酷な環境にも耐えうる品質の高さが認められているのです。
まとめ
サイディングの種類や特徴についてご紹介しました。常に日差しや風雨にさらされる外壁には定期的なメンテナンスが必要ですが、高機能のサイディングを選ぶことでメンテナンスのためのランニングコストを減らすこともできます。
賃貸経営においては、初期費用だけでなく今後の修繕計画、将来の資産価値などをすべて考え合わせたうえでの検討が必要となります。東京圏でのアパート建築をお考えであれば、アパート専門メーカーとして自社一貫体制にこだわってきたセレ コーポレーションがおすすめです。
「My Style vintage」に象徴される、エリアのシンボルとなるような外観デザインと、若者に支持されるユニークな空間設計によって入居率98.5%を誇ります(2024年2月末時点)。建てた後の賃貸管理・建物管理においても長期的にサポートする体制が整っています。ぜひ一度ご相談してみてはいかがでしょう。