ZEH(ゼッチ)とは?メリット‧デメリット、補助金制度などを解説
2023.11.30

これからの住まいの主流となる省エネ住宅。その普及は国を挙げての課題であり、省エネ住宅の新築や省エネリフォームに対してさまざまな補助制度が設けられています。2024年4月からは賃貸住宅の省エネラベル表示がスタートし、購入・賃貸にかかわらず、住まい選びに省エネという観点は欠かせないものとなっていきそうです。

今回は、省エネ住宅の代表ともいえるZEH(ゼッチ)を中心に、メリット・デメリット、補助金の詳細などについてまとめました。

「ZEH」とは

ZEHとは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を略した名称で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」、つまり家庭で使うエネルギーと、太陽光発電などで創るエネルギーを合わせて、1年間でプラスマイナスゼロ以下にする家、を指します。

2008年頃からアメリカで「新しい省エネの形」として注目されはじめ、日本でも2014年「エネルギー基本計画」で、「2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHを目指す」と定められました。

国交省ではZEHの定義を「快適な室内環境を保ちながら、住宅の高断熱化と高効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅」としています。

現在のZEHの普及率

国交省の資料によると、2021年時点で注文戸建住宅のZEH普及率は26.7%で、建売戸建住宅は2.6%。2023年6月の住宅産業新聞によると、主要な住宅企業13社のうち11社のZEH比率が75%を超えたことから、大手ハウスメーカーの注文住宅から普及が進んでいることが分かります。

建築物省エネルギー性能表示制度の開始が普及を加速させる

2024年4月からは賃貸住宅でも省エネ性能の表示がスタートします。努力義務ではあるものの、主要な賃貸ポータルサイトは物件の省エネ表示を発表しました。

『SUUMO』では、「ZEH」「省エネ」というワードがある物件の方が、ワードのない物件よりも一物件あたりの問い合わせ数が多く、賃貸居住者の74.0%が断熱性・気密性に何かしらの不満を感じているというデータも出ています。性能表示で賃貸入居者の関心がさらに高まることが、省エネ住宅の普及につながるとみられます。

参考:2024年4月より新築住宅の省エネ性能表示を開始|(株)リクルート

ZEHの基準となる性能は主に3つ

省エネ住宅は、「断熱性能」「省エネ性能」「創エネ性能」の3つの要素によって成り立っています。それぞれどのようなものなのか、見ていきましょう。

ZEH住宅に必要な3つの要素と判断基準

ZEHには公的な基準があり、「断熱性能」「省エネ性能」「創エネ」それぞれの性能についてクリアするべき数値が定められています。

断熱性能

断熱性能とは、窓や屋根・外壁などの「外皮」で熱を遮断する性能のことです。断熱性能が高いと、外の熱が伝わりにくいため夏は涼しく、冬は家の中の熱が外に逃げないため暖かい家となります。

断熱性能は熱の伝わりやすさを示すUA値という単位で表され、ZEHの基準はUA値0.4〜0.6以下。幅があるのは地域によって違うためで、東京は0.6です。

省エネ性能

LED照明や高効率家電といった省エネ設備の導入によって、一次エネルギー消費量※を基準一次エネルギー消費量より20%削減することがZEHの基準となっています。

※住宅で使われる設備機器のエネルギーを熱量に換算した値。冷暖房のほか、換気や給湯、照明なども含まれます。

創エネ性能

名前のとおり、エネルギーをつくる性能のことを指します。太陽光発電などによってつくるエネルギー量と、消費するエネルギー量の合計が年間で差し引きゼロ以下になるのがZEHです。「エネルギー消費量削減100%以上」とも表されます。

出典:エネルギー庁 ZEHの定義(改訂版)

ちなみに、ZEH基準はあくまでエネルギー消費量の差し引きであり、売電などで光熱費を0円にすることを指しているわけではありません。

ZEHの種類

出典:環境省

ZEHは、エネルギー消費量の削減割合などによって次のように種類が分けられています。

ZEH(ゼッチ)、Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)

ZEHは前述の通り、UA値0.4〜0.6以下、一次エネルギー消費量20%削減、創エネによるエネルギー消費量差し引きゼロ(=100%以上の削減)を満たした住宅を指します。

ZEHより少し基準が緩やかなのがNearly ZEHで、創エネ設備によるエネルギー消費量削減率が75%以上100%未満となります。

ZEH Ready(ゼッチ レディ)

太陽光パネルや蓄電池といった「創エネ」の設備が今はなくても、年間の一次エネルギー消費量を50%削減し、将来的に設備を取り入れればよいとされている住宅です。

ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)

都市部など、太陽光発電などによる創エネが十分にできない地域を対象とした基準です。断熱と省エネで20%以上の一次エネルギー消費量削減が条件となります。

ZEH +(ゼッチプラス)、Nearly ZEH +(ニアリーゼッチプラス)

ZEHのさらに上位基準がZEH +です。一次エネルギー消費量の削減基準が25%に加えて、「外皮性能のさらなる強化」「ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)による制御」「電気自動車の活用と充電設備を設置」のうち2つを満たす必要がります。

Nearly ZEH +も同様で、削減率が断熱+省エネで25%以上、創エネを含めて75%以上100%未満と、上記の条件が付加されます。

「ZEH」と「ZEH-M」は何が違う?

ZEHの集合住宅バージョンがZEH-M(Net Zero Energy House Mansion)です。ZEH-Mはすべての住戸についてUA値の適合と、共用部を含む住棟全体での一次エネルギー消費量削減20%以上、再生可能エネルギーの導入とそれによる一次エネルギー消費量削減100%以上が条件となります。

ZEH-MにもNearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedといった種類があります。

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出典:環境省

ZEHのメリットとデメリット

夏に涼しく冬に暖かいZEHの家。その他にもメリットは多くありますが、デメリットも存在します。
それぞれ見てみましょう。

ZEHのメリット

光熱費を削減できる

さまざまな省エネ設備に加え、断熱性が高いことでエアコンの稼働が少なくて済むため、光熱費は確実に削減することができます。創エネによる売電でプラス収支になる場合もあるかもしれません。最近の光熱費の高騰を実感した人も多いと思いますが、光熱費の削減は、住む人にとっての最大のメリットといえるでしょう。

補助金で建築費用を抑えられる

省エネ住宅の普及のために、国や自治体でさまざまな補助金が出ています。2023年の「こどもエコすまい支援事業」では要件を満たした新築住宅の建築に、1戸あたり100万円が補助されました(2023年度は予算上限に達したため終了)。後の項で詳しく触れますが、少なくない金額を建築費用に充てることができます。

住宅性能が高いので快適に暮らせる

住んでから実感するのが住宅性能の高さ。夏の暑さ・冬の寒さはもちろん、家の中での温度差も抑えられるため、ヒートショックなどの心配がなくなります。

地震などの非常時用に電力を蓄えられる

地震や自然災害の頻発から、世間の関心が高まっているのが防災面でのメリット。ZEH住宅であればエネルギーを自給自足できるため、災害時にライフラインが止まってしまったときの備えとなります。蓄電池を設置すれば、さらにエネルギー効率よく災害に備えることができます。

ZEHのデメリット

建築費が高い

ZEHには高性能な断熱材や建材、省エネ設備、太陽光発電などが必要となります。そのため当然、一般的な住宅より建築費が高くなってしまいます。

建築会社によって幅はありますが、坪単価にして20~40万円程度の差があるといわれています。40坪の家を建てた場合、800~1,600万円も高くなってしまうのはデメリットといえるでしょう。

天候による発電量の変化

当然ながら、太陽光発電は天候の影響を受けます。晴れの日を100%として、曇りの日の発電量は40~60%程度、雨の日は10~20%となります。天候不順で雨の日が続くと創エネ性能が落ち込んでしまいます。季節によっても日照量は異なるため、ZEH基準は1年間のトータルで判断します

ZEH住宅の建築に活用したい補助金制度とは

省エネ住宅の普及は、国を挙げての課題であるため、さまざまな補助金制度が設けられています。2023年12月時点ではどのような補助金制度があるのでしょうか。

最新の補助金制度情報

2023年度の個人向けのZEHに対する補助金は、「ZEH支援事業」「次世代ZEH+(注文・建売・TPO)実証事業」「次世代HEMS実証事業」といったものがありましたが、いずれも2023年11月10日で受付が終了しました。子育て世帯などを対象にした「こどもエコすまい支援事業」も、申請額が予算上限に達したため、受付終了となっています。

しかし、2023年度と同様に「住宅省エネ2024キャンペーン」の各事業が盛り込まれた補正予算案が2023年11月10日に閣議決定されました。内容についてはZEH住宅の新築に80万円/戸が補助される「子育てエコホーム支援事業」をはじめとして、2023年の支援事業が後継される予定です。新たに「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」も加わる予定。交付申請は、2024年3月以降にスタートします。

また、自治体でも補助金が設けられている場合があります。補助金の財源が自治体独自であれば国の補助金と併用が可能ですので、見逃さないようにしましょう。

補助金制度を利用する場合の注意点

補助金の申請は、施主ではなく建築会社が手続きします。補助金申請は、事前登録している会社でないとできませんので、建築会社を決める際には必ず確認しましょう。

また、補助金は予算の上限が決められている場合が多いため、申し込み状況によっては早期締め切りの可能性もあります。例えば、2023年度の「こどもエコすまい支援事業」は2023年9月28日で受付終了となりました。

気になる補助金の支給時期ですが、完成した後に支給されるケースがほとんどです。施主ではなく、工事をする事業者にいったん振り込まれ、支払金の一部と相殺されるパターンもあります。そのため、補助金を含んだギリギリの予算を組まないようにしましょう。

ZEH賃貸住宅の建築で押さえておきたいポイント

省エネ性能に対しては、すでに入居者のニーズも高まりつつあるため、賃貸住宅においても差別化のポイントとなります。最後に、ZEH賃貸住宅の建築を検討している方に、知っておきたいポイントや会社選びのコツをまとめました。

ZEH住宅を建てる際の会社の選び方

一戸建てについては、多くの会社がZEHの実績を増やしつつありますが、ZEHで賃貸住宅が建てられる建築会社、となると、選択肢はかなり狭くなります。さらに補助金を受けるためには登録業者である必要もあります。

ZEH賃貸を建てるならば、次のような点に注意して建築会社を選ぶことをおすすめします。

会社の選び方|賃貸のZEHに強いこと

単にZEHの建築に対応しているだけではなく、賃貸住宅の特性や設計を理解しつつ、省エネ性能を向上させる会社であることが大切です。ZEHの集合住宅に積極的に取り組む建築会社は「ZEHデベロッパー」として公表されています。

ZEHデベロッパー一覧検索

また、ZEH賃貸住宅は建築費が高くなるため、キャッシュフローをよりしっかりと考える必要があります。賃貸経営についてのノウハウを豊富に持っている会社であれば、より安心ですね。

会社の選び方|施工技術

断熱性能は、工事の技術力によっても変わります。せっかく高性能な省エネ設備も、しっかりと施工がされていないと効果を発揮できません。施工力に定評がある会社を選ぶようにしましょう。

会社の選び方|保証・アフターサービス

ZEHには、性能維持のためのメンテナンスや点検が不可欠となります。アフターメンテナンスや定期点検の内容をしっかり確認し、末永く安心して任せられるかどうかを判断しましょう。

ZEH賃貸住宅を建てるならセレ コーポレーションがおすすめ

もし1都3県でZEH賃貸住宅の建築を検討されているなら、ぜひ候補に入れていただきたいのが(株)セレ コーポレーションです。

“アパート経営の専門店”を掲げるアパートメーカーとして、賃貸アパート建築において豊富な実績を重ねています。自社工場で主要構造部材を造り、施工から賃貸管理まですべて自社一貫体制で取り組むことで、常に確かな品質とアフターサービスを提供。魅力的な外観デザインと差別化された空間設計、“あったらいいな”に応えるこだわりの設備で、若者を中心に入居者の心をつかんでいます。

セレ コーポレーションでは、2022年から3年間で供給戸数の30%、2025年から3年間で50%をNearly ZEH-M仕様のアパートにする目標を掲げ、ZEHデベロッパーに登録。Nearly ZEH-M仕様の商品化も行っています。先述した「施工技術」「保証・アフターサービス」の条件も満たしていますので、補助金のことなども含め、お気軽にご相談ください。

参考:済産業省 省エネポータルサイト

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