土地の活用を検討しているものの、「自分で何かを経営したり管理したりするのは不安」と感じる方もいるのではないでしょうか。土地信託は、土地を信託先に預けて運用してもらい、その収益を受け取れる仕組みです。専門知識がなくても始められる一方で、契約期間が長く、費用や制約もあるため、デメリットも踏まえて検討する必要があります。
この記事では、土地信託の基本的な仕組みやメリット・デメリットのほか、契約の流れなどを解説します。また、土地信託以外の活用方法も紹介しているため、「自分の土地にはどの方法が適しているのかわからない」といった悩みを解決するヒントとして、ぜひ参考にしてください。
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土地信託とは、土地を預けて運用を任せ収益を受け取る方法のこと

土地信託とは、土地の所有権を一時的に信託会社や信託銀行などに移し、その土地の運用を専門家に任せることで、利益を受け取る仕組みです。建設計画から賃貸経営、管理までを信託先が一体的に担うため、土地所有者は経営の負担を軽くしながら収益を受け取れます。
ここでは、土地信託の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
土地信託に関わる人と役割
土地信託では、運用の責任を誰が担い、収益を誰が受け取るかを明確に定める必要があるため、関係者の役割を理解しておくと、信託契約を検討する際の判断がしやすくなります。土地信託に関わる人とそれぞれの役割は、以下のとおりです。
■土地信託に関わる人と役割
| 関わる人 | 役割 |
|---|---|
| 委託者(土地所有者) | 自身の土地を信託先へ預け、信託契約を締結する。運用された土地から得られる利益を受け取る |
| 受託者(信託会社・信託銀行) | 信託契約にもとづいて、土地の運用・管理・建物の建設・賃貸などを行う。信託業法にもとづき、免許や認可を受けた企業のみが受託者になれる |
| 受益者 | 信託財産から生じた利益を受け取る権利を持つ。通常は委託者本人が兼ねることが多いが、第三者を指定することも可能 |
土地信託の種類
土地信託は、大きく分けて「賃貸型信託」と「処分型信託」の2種類があります。
賃貸型信託とは、信託会社や信託銀行がアパートやマンションを建設して賃貸運営を担い、収益を生み出す方法です。土地信託の中でも一般的な方法で、土地所有者は長期的な収益を期待できます。信託期間は10~30年程度となることが多く、長期契約を前提とする仕組みです。
また、契約期間が満了すると、土地だけでなく建物もまとめて土地所有者へ返還されるため、事業として賃貸経営が行われている場合は、経営権も土地所有者に移ります。返還後に経営を続けるか、物件として売却するか選択できます。
処分型信託とは、土地の売却を前提とする方法です。土地所有者は土地の処分権限を信託会社や信託銀行に委ね、信託先は土地を返還しない前提で開発を行い、価値を高めた上で売却します。
売却で得られた利益(売却益)は土地所有者である受益者に分配されますが、土地自体は戻りません。そのため、処分型信託は土地信託の一種ではあるものの、実質的には売却に近い性質を持つ方法といえるでしょう。
土地信託と家族信託の違い
土地信託と似た制度に「家族信託」がありますが、目的や運用方法には大きな違いがあります。
信託会社や信託銀行などの専門機関に土地の管理や運用を任せ、収益の確保を目的とする土地信託に対し、家族信託は家族や信頼できる個人に財産の管理を委ねる仕組みです。認知症などで土地所有者の判断能力が低下すると、預金の引き出しや不動産の売却といった手続きが難しくなります。家族信託で財産管理権限をあらかじめ家族へ託しておけば、資産凍結を防ぎやすくなり、相続時のトラブル回避にもつながります。
土地信託と家族信託の主な違いは、以下のとおりです。
■土地信託と家族信託の違い
| 土地信託 | 家族信託 | |
|---|---|---|
| 目的 | 収益の獲得 | 資産管理や承継対策 |
| 受託者 | 信託会社や信託銀行などの専門機関 | 親族などの個人 |
| 報酬 | 受託者へ報酬が発生する | 無報酬で行われることが多いが、報酬を設定することもできる |
「土地を活かして報酬を得たい」「財産を円滑に引き継ぎたい」など、目的に応じて方法を選ぶことが、納得のいく信託運用につながります。
土地信託のメリット
土地信託には、専門知識がなくても土地を収益化しやすいなど、利用者にとっていくつかのメリットがあります。具体的に見ていきましょう。
専門知識不要で土地活用ができる
土地信託の大きなメリットは、土地活用に関する専門知識が不要なことです。信託先が事業計画の立案から建物の建設、賃貸管理、メンテナンスまでを一括して行うため、土地所有者は手間をかけることなく、収益だけを受け取れます。
「何から始めていいかわからない」「不動産経営の経験がない」といった方にとって、土地信託は安心してスタートできる選択肢といえます。
信託受益権の売買ができる
土地信託では、土地を信託すると所有権が一時的に信託先へ移り、委託者(元の土地所有者)は土地の運用で得られる利益を受け取る「信託受益権」を取得します。信託受益権は売却できる財産のため、土地自体を売れない信託期間中でも、信託受益権を譲ることで資金化しやすい点が大きな特徴です。
ただし、信託受益権の売却には名義変更や税務上の確認が必要となるため、事前に専門家へ相談して進める必要があります。
契約期間が満了しても資産価値が維持される
多くの土地信託契約では、契約期間終了後に土地と建物が所有者に返還されます。そのため、長期間にわたって土地の資産価値を保ちながら、収益も得られる点が魅力です。
建物を引き継いで賃貸経営を継続することもでき、将来の運用計画にも柔軟に対応できます。
土地信託のデメリット
土地信託にはメリットがある一方で、注意しておきたい点もあります。リスクを十分に理解せずに進めると、思わぬ負担が生じるケースもあるため、利用を検討する前にデメリットを確認しておきましょう。
収益が必ず出るわけではない
土地信託では、信託先に委託しても、収益が保証されているわけではありません。空室率が高かったり、立地条件が悪かったりするなどの理由で、期待した収益が得られないこともあります。また、収益悪化により借入金の返済が滞った場合、最終的に土地所有者が債務を負担する可能性もあるため、慎重な検討が求められます。
費用負担が大きくなる
信託報酬や管理費用、建設費、借入金返済など、多くの費用が発生する点も、土地信託のデメリットです。収益からこれらの費用が差し引かれるため、実際に手元に残る利益が少なくなる可能性もあります。
自身で土地活用を行う場合と比べて、コストが高くなる点には注意が必要です。
土地信託ができない土地もある
土地信託は、すべての土地が対象になるわけではありません。信託先は事業として収益が見込めるかどうかを重視するため、狭小地や形状が複雑な土地、周辺の需要が低く賃貸経営が成り立ちにくい土地は、契約を受け付けない場合もあります。
土地利用の自由度が制限される
土地信託を締結すると、契約期間中は土地の所有権が形式的に信託先へ移るため、土地所有者であっても自由に処分や用途変更を行うことはできません。信託先が主体となって運営を進めるため、途中で「売却したい」「別の活用方法に変えたい」と考えても、原則として契約内容を変更できない点は大きな制約になるでしょう。
また、信託期間は10~30年程度と長期に及ぶことが多く、一度始めると簡単に解約できません。契約を途中で終了させる場合は、違約金が発生する可能性もあるため、将来の生活設計や資金計画を見据えた上で慎重に判断する必要があります。
契約終了後に運用しにくくなる
土地信託では運用を信託先に完全に任せるため、委託者自身には運営ノウハウが蓄積されません。契約終了後に自身でアパート経営などを行おうとしても、ゼロから準備が必要です。土地活用の知識が身につかない点は、将来の自立運用に影響を与える可能性があるでしょう。
賃貸経営の管理委託については、下記の記事をご覧ください。
参考リンク:賃貸住宅の管理を委託するメリット・デメリット、注意点を解説
土地信託を始める流れ
土地信託は、契約期間が長く手続きも多いため、全体の流れを把握した上で慎重に進める必要があります。ここでは、土地信託を始める基本的な流れをご紹介します。
STEP1. 信託会社または信託銀行への相談
まずは、複数の信託会社または信託銀行に土地信託について相談します。希望や条件などを伝えた上で、提案された運用プランを確認し、土地の活用方針や将来のビジョンに合ったパートナーを選びましょう。
STEP2. 土地信託契約と所有権移転
信託先が決まったら、契約内容を十分に確認した上で、信託契約を締結します。契約後、土地の所有権は信託会社へ移転され、委託者は信託受益権を取得します。
STEP3. 建物の建設と運用開始
信託契約後は建物の設計・施工を進めます。建物が完成すると運用が開始され、収益が発生した際は、配当金として受益者に還元される仕組みです。
STEP4. 契約期間中の管理と相続発生時の対応
契約期間中は信託会社が継続して土地の運用・管理を行います。契約期間中に相続が発生した場合でも、信託受益権を相続人が引き継ぐことで、運用の継続が可能です。
土地信託で発生する主な費用と報酬体系

信託先に土地の運用を任せる以上、一定の報酬が発生し、そのほかにも建物の建築費用や管理費など、さまざまなコストが伴います。土地信託における主な費用と、信託報酬の相場を見ていきましょう。
費用負担
土地信託では、建物建設費用や借入金の返済、管理費用などが必要となります。借入金は信託先の名義で借り入れますが、返済は信託財産(賃料など)の収益からあてられ、不足すれば委託者が補填することもあります。
信託報酬の相場
信託報酬は一般的に、運用収益の5~20%です。契約時に報酬体系が定められ、管理・運営費用として収益から差し引かれます。報酬の割合や支払い方法は信託先によって異なるため、必ず契約前に確認しておきましょう。
土地信託以外の土地活用の選択肢
土地活用には、土地信託以外にもさまざまな方法があります。目的や条件に応じて、以下の方法も検討してみましょう。
アパート・マンション経営

アパート・マンション経営は、建物を建築して賃貸収入を得る土地活用の方法です。高い収益性が期待でき、相続税対策としても有効です。
アパート専門メーカーのように、設計・建築・管理を一括でサポートしてくれる会社を選べば、初心者でも始めやすい方法といえます。
アパート経営については、下記の記事をご覧ください。
アパート経営は何年で黒字化する?期間の目安や成功のコツを解説
事業用定期借地による貸し出し
事業用定期借地とは、土地を企業に貸し出して、店舗や事務所、工場などとして活用してもらう方法です。建物の建設や運営リスクを負わず、地代収入が得られるため、安定した収益を見込めます。ただし、契約期間中は借主の事業のために土地を使うことが前提となるため、途中で「別の用途に変えたい」と思っても自由に変更できない点には注意が必要です。
駐車場・資材置き場などの低コスト活用
駐車場・資材置き場などは、整備や舗装だけで始められるため、初期費用を抑えたい方に適しています。撤退もしやすく、将来的に別の活用方法に切り替える柔軟性もありますが、立地により収益が大きく左右されるといった点はデメリットです。
土地に合った最適な活用方法を選ぼう
土地信託には、専門知識がなくても収益化を進めやすいといった利点がある一方で、費用負担や制約など、慎重に検討したい点もあります。土地の状態や目的によっては、アパート経営や事業用定期借地、駐車場運営など、ほかの土地活用のほうが適している場合もあります。後悔しない選択をするためにも、複数の方法を比較しながら、将来の計画に合った活用を選びましょう。
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アパート経営の疑問を解消
自己資金、利益、空室対策…
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