建物の性能を語るうえで欠かせない要素である「構造」。構造にはいくつか種類があり、構造によって建築費用や住み心地も異なります。今回は、住宅からビルまで幅広く採用される「鉄骨造(S造)」について、その特徴や性質を他の構造と比較しつつ解説します。
鉄骨造とは?
梁や柱など建物の骨組み(=躯体)がどうつくられているかを指した「構造」において、躯体に鉄骨を用いた構造のことを「鉄骨造」と呼びます。Steel(=鋼鉄)の頭文字を取って「S造」と表されることもあります。
鉄骨造の定義と特徴
鉄骨とは、鋼鉄でできた柱状の部材のことで、鉄骨造は採用される建物の幅が広いのが特徴のひとつ。一戸建てやアパートをはじめ、マンション、ビル、倉庫、工場、体育館など大規模な建築にも用いられます。
鉄骨造(S造)は、使用する鉄骨の厚みによって6mm未満は「軽量鉄骨造」、6mm以上は「重量鉄骨造」に分類され、それぞれ特徴と用途が異なります。
軽量鉄骨造・重量鉄骨造の違いとは?
軽量鉄骨造は、個人が住む一戸建てや2~3階建ての建物によく採用される構造です。工場でつくられた梁や柱を現場でボルトによって固定する「鉄骨軸組工法」を用いるのが一般的で、耐震性を高めるために対角線上に斜めにブレース(筋交い)という鉄骨を入れます。
軽量鉄骨造は重量鉄骨造に比べると軽く、建築費が抑えられる、工期が短いなどの特徴があります。
鉄骨の厚みが6mm以上の重量鉄骨造は「鉄骨軸組工法」のほか、梁や柱を溶接し一体化する工法「鉄骨ラーメン構造」も用いられます。「ラーメン」はドイツ語で「枠・額縁」という意味です。
重量鉄骨造は4~5階程度のマンションやビルなど大型建築に多く採用されています。使用する鉄骨の厚みがある分、柱の強度が高いため、柱が少ない大空間をつくることができるのが特徴です。しかし軽量鉄骨に比べると、建設コストが高くなります。
また、建物自体が重いため、軟弱な地盤に建てる場合は地盤改良が必要になることもあります。
鉄骨造(S造)の耐用年数
構造にかかわらず、建物の耐用年数は立地やメンテナンスの状況によって大きく変わります。鉄骨造の場合、潮風が当たる海の近くや寒冷地などではない一般的な立地で、定期的に手を入れながら住めば50年程度は十分に使えるとされています。
参照:建物の寿命と耐用年数
耐用年数については、実際の建物としての寿命の他に「法定耐用年数」というものも存在します。これは減価償却を行うために、税制上設定されている耐用年数です。
鉄骨造の法定耐用年数は、建物の用途と鉄骨の厚さによって異なります。店舗・住宅用であれば以下のように定められています。鉄骨の厚さは軽量鉄骨・重量鉄骨の区別と異なる基準が用いられます。
●鉄骨造の法定耐用年数
鉄骨厚3mm以下・・・19年
鉄骨厚3mm超4mm以下・・・27年
鉄骨厚4mm超・・・・34年
新築でアパートを建てた場合、建ててから法定耐用年数の間は減価償却費を経費として計上ができます。つまりその間は実質、税金を減らせるのです。
理屈上では、法定耐用年数が終われば減価償却が終了した(=建物を消費した)ということになり、減価償却費分の減税効果がなくなります。
ちなみに、その他の構造による住宅の法定耐用年数は木造22年、RC造とSRC造が47年となっています。
鉄骨造(S造)のメリット
多くの建物に採用されていることからわかる通り、他の構造と比べても、鉄骨造にはさまざまなメリットがあります。それぞれのメリットを解説します。
木造(W造)よりも耐用年数が長い
耐用年数の項で触れた通り、鉄骨造の法定耐用年数は鉄骨厚3mm超なら木造よりも5年、4mmを超える場合は12年長く設定されています。
法定耐用年数が長いということは、それだけ減価償却できる期間も長めになるため、節税効果が長く続きます。建物自体の耐用年数も木造より長く、築年数が経っても資産価値を保ちやすいです。
耐震性能に優れ、災害に強い
鉄は木材に比べると安定しており、強度が高いという特徴があります。材質そのものに耐久性があるため、地震があっても倒壊しにくいのがメリットです。鉄にはしなやかさや「粘り」といった性質もあり、地震などで加わったエネルギーを吸収することで揺れに耐えることができます。
2015年に起きた茨城県の水害では、濁流のなかで1軒だけ流されずに残っている一戸建ての空撮映像がニュースで放映されました。流されなかった要因のひとつとして、その家が鉄骨造であったことが話題になりました。
空間デザインやリフォームの自由度が高い
鉄骨の頑丈さゆえに、木造よりも柱や耐力壁の数が少なくて済む鉄骨造。そのため空間デザインの自由度が高く、開放的な大空間や大きな窓などもつくることができます。
外観についても、上階が張り出したオーバーハング(跳ね出しとも呼びます)などが実現しやすいため、個性的なデザインが実現可能です。
また、リフォームやリノベーションをする際にも、躯体の耐久性が高いため、フルスケルトンにして間取り変更などが行いやすいというメリットがあります。木造の場合、状態によっては躯体からの作り直しや耐震性を確保するための工事が必要になり得る一方で、骨組みが鉄骨である鉄骨造は改修費用などが安く済む傾向があります。
品質が安定している
鉄骨造の工法は「鉄骨プレハブ工法」と呼ばれるもので、鉄骨を工場で製造して現場で組み立てるため、品質が安定しています。現場作業が少なく、天候の影響で工期が延びるなどのイレギュラーが抑えられることもメリットです。
また、大工の技術力による差が木造ほど家の出来栄えに表れることが少なく、施工も安定しているといえます。
工期の短縮が可能
前項でも触れましたが、工業化が進んでいるため現場作業が少なく、工期が短いのも鉄骨造のメリットです。また、建物の品質は担保したまま、工期短縮を実現する商品開発もさまざまなハウスメーカーで行われています。
コストパフォーマンスが高い
建築費だけで考えれば、最もコストパフォーマンスが高いのは木造です。しかし、法定耐用年数の項にもある通り、3mmを超える厚さの鉄骨を使えば、鉄骨造は木造よりも減価償却による節税期間が長くなります。
また、建物そのものの耐久性も木造より高いため、改修の頻度や費用が少なくて済みます。
木造よりも賃貸アパートを建てた時の家賃を高めに設定できること、火災保険も安いことなどから、ランニングコストに関しては鉄骨造の方が安くなります。長い目で見れば、コストパフォーマンスが高いといえるのではないでしょうか。
鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)よりも建築費を抑えられる
2022年の国土交通省の建築着工統計調査によると、貸家/共同住宅の全国の建築予定費は以下のようになっています。
木造・・・・・・・・・・・・17万円/㎡
鉄骨造・・・・・・・・・・・26万円/㎡
鉄筋コンクリート造・・・・・27万円/㎡
鉄骨鉄筋コンクリート造・・・28万円/㎡
地域差などがあるため一概には言えないものの、鉄骨造は木造と比べて建築費が高く、鉄筋コンクリートRC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)よりは抑えられることになります。
鉄骨造(S造)のデメリット
鉄骨造には、素材の特性からくる弱点やデメリットも存在します。これらをうまく補うことが、鉄骨造の建築においては不可欠です。
防サビ処理が必要
鉄という素材の特性上、劣化の大部分はサビから発生します。サビは鉄が水や空気に触れることで生成し、酸性では腐食が進みやすく、高アルカリ性では腐食の進行を遅らせることができます。RC造は、コンクリートのアルカリ性によって鉄筋の腐食を抑えていますが、鉄骨造の場合は塗料などによる防サビ処理が必要です。
また、熱しやすく冷めやすいという鉄の特性から結露が発生しやすく、それがサビの原因となることもあります。壁内部に結露が発生しないように施工することが肝心です。
断熱性・気密性については対策が必要
熱しやすく冷めやすい鉄の特性は、言い換えると熱伝導率が高いということです。鉄は木よりも100倍以上熱伝導率が高く、夏は外の暑さ、冬は寒さを家の中に伝えやすい素材ともいえます。
そのため鉄骨自体に断熱材を巻く、壁に断熱材をしっかり充填するなどの適切な対策が必要となります。
また、気密シートなどをタッカーで留められる木造と違い、気密性を上げるための施工にやや手間がかかるという弱点も。気密性が担保できなければ、断熱材の性能が発揮しづらい建物となってしまいます。
音が伝わりやすい
壁がコンクリートであるRC造と比較すると、鉄骨造は音が伝わりやすいのがデメリットのひとつです。音の伝わりやすさは重量鉄骨と軽量鉄骨では異なり、軽量鉄骨の方が遮音性はやや低くなります。
そのため、集合住宅では生活音が干渉しにくい間取りにしたり、施工時に壁や床に防音パネルを入れたりするなどの工夫をしている物件もあります。
地震の揺れを感じやすい
メリットの項で、鉄の持つ粘り強さにより、耐震性が高い構造であることをお伝えしました。しかしその反面、強度は高くても地震の揺れそのものを感じやすい点があります。微震でも揺れを伝えやすいため、敏感な人は怖いと感じてしまうかもしれません。
鉄骨造(S造)の建築費とランニングコスト
それでは、実際に鉄骨造でアパートを建てた時にかかるコストはどれくらいなのでしょうか。また、賃貸経営を続けていくうえでかかるコストにはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
鉄骨造の建築費とイニシャルコスト
総戸数12戸、延床面積100坪(303.58㎡)の鉄骨造3階建てのアパートを建築したとします。国交省「建築着工統計調査」の全国平均値で計算すると、建築費は7,893万円となります。(土地の取得費用は含まない)
アパート建築には、付帯工事費として以下のようなものがかかってきます。
・地盤改良費・・・地盤が弱い場合に必要となります。金額は工法によって幅があります
・外構費・・・駐車場やフェンス、生垣や植栽などにかかる費用です
・造成費・・・傾斜の多い土地や山林などの場合に必要となります
・ライフラインの整備費用・・・電気やガス、水道などの引き込み費用です
付帯工事費は、建物本体価格の10~20%前後とされています。
さらに諸費用として、以下のお金がかかります。
・不動産取得税
・登録免許税
・登記費用
・印紙税
・建築確認申請等の手数料
・司法書士への報酬
・火災保険料
・アパートローン手数料
・水道負担金
鉄骨造の維持・管理コスト
構造にかかわらず、アパート経営には以下のようなランニングコストがかかります。
・管理委託費
・固定資産税(都市計画税)
・修繕費用
・リフォーム費用
・仲介手数料
このうち、鉄骨造の固定資産税は木造より高めですが、これは評価額が下がりにくいためです。つまり、もし途中で売却するときには、木造より高く売れるということになります。
また、白アリ対策などのメンテナンスが必要な木造に比べると、鉄骨造は維持のためのコストを抑えることができます。
鉄骨造(S造)で建てるならセレ コーポレーションがおすすめ
ここまで、鉄骨造は工場で製造される部材が多く、気密性や断熱性能を高めるためには施工の工夫が必要であることについて解説してきました。
さらに、鉄骨造の賃貸住宅となれば、資産価値を保つハード面だけでなく、安定経営を続けていくためのアフターフォローもとても重要になってきます。
鉄骨造の賃貸住宅を建てるのであれば、セレ コーポレーションをおすすめします。アパート建築・経営の専門会社で、自社一貫体制でハード面とソフト面の両面から賃貸経営をサポートする仕組みが整っています。セレ コーポレーションに依頼するメリットの一部をご紹介します。
部材は自社工場で一貫生産
アパートの主要な構造部材は、国土交通大臣が指定した機関の認定をもとに自社工場で一貫生産しています。鉄骨造に欠かせない防サビ処理には、自動車のボディ塗装にも用いる「カチオン電着塗装」を採用。耐用年数は約75~100年ともいわれる、サビに強く高耐久・高耐候な部材となっています。
それらの部材をオリジナル構法の「ハイテンション キューブシステム」によって施工。壁、床、天井すべてに独自のブレースを配置することで、あらゆる方向に応力を発揮し、建物の耐震性を担保しています。
自社の一級建築施工管理技士が厳密に施工管理
建築現場において、施工管理は自社の一級建築施工管理技士が徹底して実施。幾重にも及ぶ現場検査に加えて、さらに第三者機関の検査Gメンによる厳密な品質検査まで行い、検査の詳細をすべて社内で保管しています。
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